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リトアニアのスープの旅 [第2回]ビールの苦味を楽しむ「ビールスープ」

食のデザイナーHORO Kitchenさんが旅先のリトアニアで出会った味を3回にわたって、紹介してくださいます。第2回は「ビールスープ」。ハーブが香り、ほのかにビールの苦味が残る温かいスープです。体がぽかぽかになりますよ。

最終更新日:2024.2.26

目 次

新しい味の出会い

こんにちは。旅するキッチンのHORO Kitchenです。さて、第2回はちょっと驚きの味、リトアニアで出会った「ビールスープ」をご紹介します。

「ビールスープ」

HORO Kitchen

旅に出て、新しい味に出会ったときの感動やわくわく感ほど想像力をかき立てるものはありません。その感動を持ち帰り日本の四季に合わせてレシピを考えると、日々の生活がより楽しく豊かに感じます。

「ビールスープ」に出会ったのはリトアニア滞在2日目、友人に連れて行ってもらったリトアニアの伝統料理を出す雰囲気の良いビストロです。メニューには7、8種類のスープが揃っていて、豊富なメニューに驚きます。
美食の国フランスでもスープというとアントレ(前菜)のなかに一品ある程度だったりしますが、こちらリトアニアは冬の寒さが厳しい国だけあってか、スープを食事の中心にする事が多く、種類も豊富なのかもしれません。

そしてこのお店のメニューの中で一番目を引いたのが「ビールスープ」。
日本でもお肉を煮込んだりする時、柔らかくするのに使いますよね。またフリットの衣に重曹代わりに使ったりします。

しかしここはリトアニア。必須のハーブにおいしいジャガ芋を使い、後味にはラガービール特有の苦みがほのかに残る、体がぽかぽかと温まるスープが登場しました。

ちなみにリトアニアはビールがとても安く、近隣のヘルシンキからまとめ買いに来るとも聞きます。
イースター前にベルギーを訪れた時、ロンドンからユーロスターに乗り、安いビールを買いに来ている人をたくさん見たのですが、同じような事がリトアニアでもあるのですね。

それでは実際にスープを作って旅気分を味わってみましょう。

旅気分で調理スタート!

第2回「ビールスープ」

「ビールスープ」の材料

↑今回の材料はこちら。
HORO Kitchen

■材料 (4人分)
ジャガ芋 大3個
玉ねぎ 大1/2個
ツールダール
(イエロースピリットビーンズ) 80g
ベーコン 90g
ラガービール 100cc
チキンブイヨン 2と1/4カップ
オリーブ油 少々
ローリエ 1枚
乾燥ハーブ
(ディル、タイム、オレガノ、ローズマリーなど) 適量
塩 適量
黒コショウ 適量
フレッシュハーブ
(ディル、イタリアンパセリ) 適量
生クリーム 適量

■作り方
1 豆は軽く洗い、水2カップ(分量外)で1時間戻します。玉ねぎはタテに薄切り、ベーコンは短冊切り、ジャカ芋は皮をむき7mm幅くらいにスライスして水にさらします。ジャガ芋は水にさらしすぎると栄養も逃げてしまうので10分以内で水気を切りましょう。

カットした具材

HORO Kitchen

2 戻した豆を柔らかくなるまで(だいたい20分くらい)煮ます。途中灰汁が出るのでこまめに取りましょう。旨味のある煮汁は捨てずに取っておきます。

具材を煮込む

HORO Kitchen

3 厚手の鍋にオリーブ油、ローリエ、1 の玉ねぎを入れ弱火でフタをして、じっくり蒸しながら炒めます。

4 玉ねぎがしんなりして透明になったらジャガ芋を加えさらに炒め、七割程度火が通ったらブイヨンをひたひたになるまで入れ、ビールと乾燥ハーブを加え煮込みます。
ジャガ芋が柔らかくなったら火を止めて粗熱を取り、ミキサーにかけます。

* ジャガ芋の大きさによってスープの粘度が変わるため、ひたひたの量のブイヨンで煮込んで、残りのブイヨンは後で濃度を調整するために残しておきます。

5 空いた鍋を洗い、オリーブ油を少々ひきベーコンをじっくり炒めます。良い焼き色が付いたら 2 の豆を煮汁ごと全部加え、鍋肌についたベーコンの旨味を取ります。

ベーコンを炒める

HORO Kitchen

6 5 の鍋に 4 を加え温め、残りのブイヨン(分量内)で濃度を調整し、塩こしょうで味を調えます。

生クリームを入れる

HORO Kitchen

7 器に注ぎ、生クリームをかけ粗みじん切りしたフレッシュハーブ(ディル、イタリアンパセリ)を散らし完成です。

* 乾燥のディルは生のディルと風味が違います。両方使う事で、現地の味にとても近くなるのでできれば両方使ってみてください。

「ビールスープ」

HORO Kitchen

豆の煮汁はスープの良い出汁になります。皆さんご存知イタリアの代表的なスープ、ミネストローネにも豆が入っていますが、イタリアのマンマたちは煮汁を捨てずに出汁として使うと聞きました。
でも豆の種類によっては灰汁が強いものもありますよね。そんなときは私の場合、沸騰したら一旦煮汁を捨て、新たに水を加え煮て、2番目の煮汁を出汁として使います。豆の煮汁を使うとぐっと旨味が深まります。

今回の豆「ツールダール」は黄色エンドウ豆の皮をむき二つに割ったものなので、柔らかくなるまで時間がかかりませんし、皮がむかれている分灰汁も少ないので使いやすい豆だと思います。リトアニアのスーパーでは日本のお米のように大きな袋に入り売られていました。インドなどの周辺地域で食べられるイメージがありましたが、リトアニアの食卓でも良く食べられている様です。

素材の旨味を生かしたチキンブイヨンを作ってみましょう

今回は豆やベーコンから出る出汁にプラスしてチキンブイヨンを使っています。時間に余裕がある時に多めに仕込んで冷凍保存しておくのがおすすめです。

* 簡単にすませたい方はもちろん市販のブイヨンを使っても構いませんが、豆とベーコンから旨味が出ているので分量を調整して下さい。市販のブイヨンのレシピ通りだとかなり塩っ辛く、せっかくの豆の風味も消えてしまいます。

■材料 (4人分)
手羽先 10本
玉ねぎ 大1個
人参 大1本
セロリの茎 2本
ローリエ 2枚
白粒こしょう 10粒
昆布 10g
水 14カップ

■作り方
1 昆布は5カップの水で一晩戻しておきます。

2 玉ねぎを半分に切り、人参は皮をむいてぶつ切り、セロリは半分に切ります。手羽先は関節で切り分け湯引きをしよく洗いましょう。

3 鍋に水出した 1 の昆布出汁と 2 の野菜、手羽先を入れ、ローリエ、白粒こしょうを加え、9カップの水を注ぎ中火にかけます。

4 煮立ったら火を弱め、灰汁をとりながら1時間ほど静かに煮出します。ぐつぐつ沸騰させないように気をつけて下さい。

5 火を止め漉(こ)します。このブイヨンをスープに使用します。


残った出汁がらはカレーの具にしたり、手羽先はオリーブオイルでカリっとソテーしておかずにするのが良いですよ。
その時は旨味が抜けている分、クミンや黒こしょうなどのスパイスを利かせると美味しくいただけます。

今回のスープは第1回目のスープより出汁を取ったり、ミキサーにかけたりなど工程が多いので少し手間がかかりますが、それぞれの素材の旨味が相乗効果になり、素朴ながらも味わい深く、ラガービールの苦みが上手に引き立ったスープが出来上がります。
このスープ、次の日になるとビールの苦みが消えてしまうので、ぜひ出来立てを召し上がって下さい。

さて、次回は「リトアニアスープの旅」、最終回。
登場するのはリトアニア料理には欠かせない真っ赤な色が鮮やかなビーツを使ったスープです。お楽しみに!

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HORO Kitchen

  • この記事ライター

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    HORO Kitchen(ほうろうきっちん)

    食のデザイナー。スープを軸に衣食住をデザイン。10年程前にロシア、東欧をめぐり、その旅先で出会ったスープがきっかけで世界を旅して出会ったスープを独自のフィルターを通し提供するイベントなどの企画を始める。
    またケータリングを中心としたパーティーのトータルコーディネート、レシピ提供をはじめ、ライフスタイルブランドのスタイリング、イベントの空間デザイン、食まわりのテキスタイルの企画など生活のすべてをものづくりの場として活動。
    主な活動:企画展「SOUP TRIP」@ROCKET、「EAT ALL」@ROCKET、月一回の物語のあるスープ屋@OPTRICO、PARCOシブカル祭ケータリング、from EAST to EAST主催リトアニア大使館イベントのケータリング、三菱地所レジデンスラウンジ「スープの時間」ワークショップなど。

    WEBサイト:www.horo-kitchen.com

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公開日:2016.3.29

最終更新日:2024.2.26

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