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「紅葉狩り」の由来や意味の前に! 2022年の見頃はいつ?

提供:日本気象協会

提供:日本気象協会
例年、紅葉(こうよう)の見頃は全国的に見ると秋、9月~11月頃※です。
紅葉は明け方の最低気温が6~7℃位になると始まり、その約20日~25日後に見頃を迎えます。
加えて、鮮やかな紅葉になる条件は、日当りの良さ・昼夜の寒暖差の大きさ・適度な湿度の3つです。そのため、こうした気象条件が揃いやすい標高の高いところのほうが、平地よりも早く紅葉が見頃になります。
日本気象協会によると、今年は10月下旬に強い寒気が流れ込んだ影響から、平野部でも徐々に色づき始めています。11月の気温は平年並みの予想です。紅葉の見頃は、秋(9~11月)の気温が低いと早まり、高いと遅れることから、今年の観光名所の紅葉見ごろ時期は平年並みの見込みとのことです。
※「紅葉の見頃」は、気象庁が制定している紅葉の基準に基づき、「標本木全体を眺めたときに、大部分の葉の色が紅色に変わった状態になった最初の日」から始まります。
出典:一般財団法人 日本気象協会「2022年第3回「紅葉見頃予想」
なぜ狩らないのに「紅葉狩り(もみじがり)」? その由来とは?

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紅葉狩り(もみじがり)とは「色づいた木々を鑑賞する秋の行楽」のこと。「狩り」といっても、葉が赤や黄色に染まる様子を楽しむもので、果物狩りのように採取する訳ではありません。落ち葉を持ち帰る事が禁止されている場所もあります。なぜ「狩り」と呼ぶのでしょうか。
「狩り」とは、本来「獣を捕まえる」と言う意味で使われてきました。
その後、平安時代には、狩猟をしない貴族が美しい紅葉をめでるために野山をめぐるようになり、その様子が狩りに似ていることから、紅葉見物することを「紅葉狩り」と呼ぶようになったと言われています。
狩らないのに「紅葉狩り」と言うのは、貴族の風雅な遊びが由来だったのですね。
鬼女・紅葉を狩るから「紅葉狩り」という説も!

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鬼女・紅葉を狩るから「紅葉狩り」という説もあります。
由来になった伝説は長野県長野市の戸隠山(とがくしやま)に残っています。
「戸隠山に住んでいた『紅葉』という鬼女が山を降りては村の人々を餌食にするため、当時の帝が平維茂(たいらのこれもち)に鬼退治を命じ、神剣で鬼女を退治した」というもの。
この伝説は、「紅葉狩」という有名な能の謡曲として今も語り継がれています。舞台となった戸隠山では、今でもこの伝説を語りつぐ「鬼女紅葉祭り」という行事が開催されています。
紅葉は日本だけのもの? 海外でも紅葉狩りを楽しめる?

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日本以外にも紅葉を楽しめる場所があります。紅葉が見られるのは、落葉樹が生息する東アジアの沿岸部と北アメリカ大陸の東部、ヨーロッパの一部など。カナダの西部に広がる「メープル街道」も紅葉で有名なエリアです。
しかし日本のように全土に渡って紅葉を楽しめる国は少ないんです。
日本は国土に占める森林の割合が3分の2と多く、様々な落葉樹が生えています。加えて、1日の寒暖差が大きいなど、葉が色づきやすい環境も整っています。
昔から日本で紅葉狩りが親しまれているのも、そうした背景があるんですね。
紅葉(こうよう)するのはカエデの木だけ? 紅葉する木は100種類以上も?!

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紅葉と言うと赤いカエデや黄色いイチョウをイメージする人が多いかもしれませんね。
一口にカエデ、イチョウと言っても様々な種類があります。

PIXTA ヤマモミジ
こちらはヤマモミジ。葉のギザギザが特徴です。

PIXTA オオモミジ
オオモミジはギザギザが少なめです。
他にイロハモミジやイタヤカエデなどもあります。

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ちなみにカナダの国旗に使われているのは「サトウカエデ」だそう。なお、「〇〇モミジ」と呼ばれている木は全てカエデ科の植物です。
紅葉狩りの際に、カエデやイチョウの種類を調べながら鑑賞するのも楽しいかもしれませんね。
ちなみに、モミジの語源は葉が色づくという意味の動詞「紅葉づ(もみづ)」から来ているそう。
また、「紅葉」という漢字は「コウヨウ」とも「モミジ」とも読みますね。「コウヨウ」は、葉が色づく様子を表すのに対し、「モミジ」は、葉が色づく様子や色づいた葉を表すだけではなく、植物の呼び名としても使われています。
葉はどうして赤や黄色に紅葉するの?

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ところでなぜ葉の色が変わり紅葉するのでしょうか?
通常は、光合成によってできた養分が葉から枝へと流れていくのですが、秋になって気温が下がりだすと、その動きが鈍くなります。すると、葉と枝の間に離層という組織が作られて、養分や水分を運べなくなります。
養分の流れが滞った葉は、葉を緑色に見せていた葉緑素が分解され、今まで見えなかった色素が浮き出てきます。
イチョウなど・・・元々葉に含んでいた黄色い色素(カロチノイド)が目立つようになり黄色く色づく
カエデなど・・・赤い色素(アントシアン)が生成され、赤く色づく
樹木の種類によって紅葉の色が違うのは、こうした現象だったんですね。
紅葉を楽しめる時期をどうやって予測してるの?

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例年、メディアでは天気予報と合わせて紅葉の見頃の予測が紹介されますね。なぜ紅葉の時期を予測できるのでしょうか?
それは、紅葉は明け方の最低気温が6~7℃位になると始まり、その約20日~25日後に見頃を迎えるからです。
また、色づきの予測には、日中の天気・昼と夜の寒暖差・空気中の水分の3つの気象条件がポイントになっています。
鮮やかな紅葉になる条件
・日当りが良い・・・赤や黄色の色素となる養分である糖分が活発に作られる・夜は冷え込む・・・夜の気温が高いと昼間作った養分を使って活動してしまい、鮮やかな色に紅葉しない
・適度な湿度・雨の日がある・・・乾燥しすぎると紅葉する前に葉が枯れてしまう
同じ場所なのに毎年色の具合が違うのは、これら3つの条件の揃い方が毎年違うからなのです。これらの条件が揃いやすい渓谷や川沿いは、紅葉の名所として知られているところが多くあります。
紅葉狩りできるのは秋だけじゃない?! 「春紅葉(ハルモミジ)」とは?

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春にも赤くなるカエデがあるのをご存知ですか? これは「春紅葉」と言い、若葉を日差しから守るために起きる現象です。
他にも若葉が赤くなる木がありますよ。どんな木が赤くなるか、春の公園で探して見るのも面白いかもしれませんね。
紅葉狩りの楽しみ方は色々! もみじを舌で味わう事ができる場所も?!

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万葉集を見ると、人々は奈良時代から紅葉を楽しんでいたようです。平安時代の紅葉狩りでは、紅葉を鑑賞しながら宴を開き、和歌に詠む「紅葉合(もみじあわせ)」が貴族の間で流行したそうです。江戸時代には各地の大名が家来を引き連れて紅葉の名所を訪れます。これが紅葉狩りの普及のきっかけだとも言われています。
皆さんは紅葉をどんな風に楽しみますか? 紅葉狩りの楽しみ方をいくつかご紹介します。
紅葉狩りに出かける

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沢山の紅葉した木が揃った山や街道は圧巻! ハイキングしたり、ドライブして車内から眺めたり、温泉から紅葉を楽しめるところもありますよ。高原や山へのお出かけは足元が滑りやすい場所がありますので注意してください。
また、お近くの公園で紅葉を眺めながらピクニックするのも良いですね。
インテリアに取り入れる

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身近に紅葉を感じるには、美しい落ち葉をインテリアに取り入れるのもオススメ。手軽に楽しめますよ。テーブルコーディネートに取り入れれば、秋の雰囲気を感じられる素敵な食事の時間を楽しめますね!
食べる

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大阪府北部の箕面市の名物は「もみじの天ぷら」。
「もみじの天ぷら」は、小麦粉に白ごまと砂糖を加えた衣をつけて揚げた、カリッと香ばしくてほんのり甘い仕上がり。その場で食べるだけではなくお土産として持ち帰ることもできるそう。紅葉を目だけではなく舌でも味わってみては?
紅葉狩りに手作りのお弁当を♪
秋らしいお弁当をもって「紅葉狩り」に出かけましょう。好きなおかずをたっぷり詰め込むだけではなく、イチョウやモミジの形に切った食材を使うと楽しいですよ。
【レシピ】行楽のお弁当にも!「秋の味覚の炊きおこわ」

おわりに
万葉集には、「もみじ」を詠んだ歌が百首以上あるとか。色鮮やかに変化する木々の美しさには昔から多くの人が心を動かされていたようです。秋の風物詩である紅葉狩りをぜひ楽しんでくださいね!
参考: allabout暮らしの歳時記 三浦 康子「紅葉狩りの起源・豆知識…紅葉を狩ると言うのはなぜ?紅葉は鬼女?!」
この記事の監修
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三浦康子
古を紐解きながら、季節の行事や生活の知恵など、今の暮らしを楽しむ方法をメディアにて提案。著書『子どもに伝えたい 春夏秋冬 和の行事を楽しむ絵本』(永岡書店)、『粋なおとなの花鳥風月』(中経出版)、監修書『季節を愉しむ366日』(朝日新聞出版)、『おうち歳時記』(朝日新聞出版)ほか多数
三浦康子 和文化研究家
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公開日:2019.11.18
最終更新日:2022.12.17
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