空き家の活用の前に! そもそも「空き家」の定義とは?
国土交通省の定義では「1年以上住んでいない、または使われていない家」を空き家としています。
その判断基準は、おおむね以下のような内容が挙げられています。
●人の出入りがあるか
●電気、ガス、水道が使用されているか(それらは使用可能な状態にあるか)
●所有者の利用実績など
人の出入りがなく、電気、ガス、水道の使用もほとんどない家が「空き家」となるわけです。
「特定空き家」になると、固定資産税が最大で6倍に!?
さらにこの空き家のうち、倒壊等の危険性がある、地域の景観を損なっている、衛生上有害となりうる、といった理由で放置された不適切な物件を「特定空き家」としています。
「特定空き家」に指定されると、固定資産税の軽減特例から除外されてしまい、大きな出費に…。どんなに古くても住宅が建ってさえいれば最大で1/6の軽減が受けられるはずの土地に対して、固定資産税を軽減前の正規の額で支払わねばいけなくなってしまいます。
そうならないよう、「1年以上使っていない家=空き家」を活用する対策が、いろいろと議論されているのです。
「特定空き家」と判断するのは誰?
「特定空き家」かどうかを判断するのは、各市町村です。
市町村は「特定空き家」に該当する物件に立入調査をすることができ、物件の現状を把握する権限をもっています。所有者に対して空き家の措置を助言・指導・勧告・命令することもでき、この指導・勧告に従わない場合は、強制撤去を行うことも可能となっています。
「特定空き家」にならないための3つの選択肢とは?
空き家が増えると、不法占拠や放火など犯罪のリスクが高まることから、地域の防犯という点で問題視されています。また、建物が劣化してくると、倒壊の危険も。空き家があることで災害のリスクが高まるだけでなく、ごみの不法投棄や害虫・害獣の住処になってしまうなど、衛生上の観点からも、近隣住民にとっては悩ましい存在です。
地域にとって迷惑な空き家、つまり「特定空き家」にしないためには、3つの選択肢があります。
(1)空き家を売却する
(2)賃貸物件として貸し出す
(3)空き家のまま維持・管理をする
どれが最適かは、状況によっても異なります。それぞれのメリット・デメリットを考えてみましょう。
空き家の活用法1 売却する
空き家を売ってしまい、維持・管理という選択肢をなくす方法です。不動産を所有するわずらわしさから解放されたい人には、維持費がなくなるメリットがある一方、税控除がなくなるなどのデメリットもあります。
売却するメリット
・維持費がかからない
・まとまった現金を手にすることができる(新たな不動産取得や老後・教育資金などに回すことができる)
売却するデメリット
・土地を子や孫へ引き継げない
・すぐに買い手がつかないこともある
・古い建物が建っている場合、売れにくく評価額が下がる(建物を解体し更地にすると売却しやすいが解体処分費や固定資産税がかかる、また、解体処分費は住宅ローンが組めないためまとまった資金が必要)
・所得税が高くなる場合がある(購入額より売却額が低い場合はかからない、また、売却益も3,000万円までは控除される場合がある)
・手数料などがかかる(売却したお金から不動産販売業者へ支払う手数料が引かれる)
空き家の活用法(2) 賃貸物件として貸し出す
転勤などで一時的に家を空ける場合や、老後の住まいの選択肢として不動産を所有しておきたい場合など、すぐに手放すのが難しい場合の選択肢です。建物が比較的新しく立地もよければ、現実的な選択肢といえます。
人が住むことで家が傷むのを避けられる、空き家から一定の収入が得られるというメリットがある一方、管理の手間・費用が生じるというデメリットがあります。
賃貸物件として貸し出すメリット
・家が傷むのを防げる(家は人が住まなくなると劣化が早くなるため、貸し出すことで劣化が防げる)
・一定の収入を得ることができる(家賃収入を維持・管理のための資金にすることができる)
・節税できる場合もある(サラリーマンをしながら大家をする場合、所得との損益通算によって、所得税や住民税から還付が受けられる)
賃貸物件として貸し出すデメリット
・管理にまつわる手間・費用がかかる(敷金礼金・更新料・家賃の管理、住居・駐車場等の管理、管理会社への委託費用がかかる)
・入居者が安定しない(家賃収入が途切れる可能性もある)
・定期的にリフォーム費・修繕費が必要(賃貸物件としての価値を失わないよう、リフォームや修繕の費用がかかる)
・借主とトラブルが発生する可能性がある(家賃滞納や犯罪行為など借主の質によってリスクが増える)
・個人事業主としての義務が生じる(家賃収入を得る個人事業主となった場合、経費などの帳簿管理、確定申告などをしなくてはならない)
・家の中の整理、片づけをしなければならない
参考:国税庁「タックスアンサー:不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)」
空き家の活用法(3) 空き家のまま維持・管理する
なにかとメリット・デメリットの多い「売却」や「貸し出し」といった活用法に対し、できるだけ良好な状態で空き家を保ち続ける選択肢です。
売却や賃貸経営に比べてリスクが少ないというメリットがある一方、遠方にある空き家などの管理が大変などのデメリットがあります。
空き家として維持・管理するメリット
・ライフプランの変化に対応できる
・土地を子や孫へ引き継げる
・リスクが少ない
空き家として維持・管理するデメリット
・定期的な管理に手間がかかる
なぜ空き家には定期的な管理が必要なの?
家は住む人がいなくなると、とたんに劣化が進んでしまいます。
定期的に換気をしないと、湿気がとどまってしまい、床や壁がはがれ落ちたり腐ったりする原因に。また、定期的に通水をしておかないと、水回りの配管も劣化してしまいます。庭の草木は伸び放題で、近隣からの苦情の対象にも・・・。ツタなどが家に根を張ったり、シロアリや害獣が巣をつくったりすることで、壁などの躯体を傷つけ、倒壊の原因になってしまいます。
でも、所有する空き家が、必ずしもこまめに通える距離にあるとは限りません。遠く離れた実家や、海外転勤などで住まいを離れる場合などは、空き家の管理方法を考える必要がありますね。
行政の空き家対策事業や補助金などを調べてみよう
空き家は売却するにしても賃貸住宅として貸し出すにしても、さまざまなリスクがありますが、それらを支援してできるだけ空き家の活用を進めるため、いま自治体はさまざまな補助金制度などを整備しています。
まずはお住まいの地域で、空き家活用にどんな支援制度があるかを問い合わせてみましょう。定住推進のための空き家マッチングの仕組みを持っている自治体があったり、賃貸や民泊の整備のためのリフォーム資金を一部補助している自治体があったりと、さまざまな取り組みが行われています。
少子高齢化や人口減によって空き家が増えている昨今、「2033年には約3軒に1軒が空き家になる」という野村総合研究所(NRI)の発表もあり、空き家問題は行政にとっても解決すべき喫緊の課題となっています。
東京ガスの空き家管理サービス「実家のお守り」で、賢く空き家を管理
2022年3月、東京ガスでは、これまでの住宅に関する様々なノウハウを生かし、誰も住んでいない家のお手入れを行うサービス『実家のお守り』をスタートしました。
サービス内容は、月1回空き家を訪問し、換気や通水、草木の確認や草むしり、郵便物の回収などを行った上で、写真報告してくれるというもの。
利用料は月額9,900円(税込)~※。遠方に住んでいて、空き家の管理のために休日を費やしている方や、高い交通費を負担している方にも、ありがたい価格設定ですね。
東京23区や東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県の都市部でスタートしています。
草木のお手入れは、近隣からの苦情対策として。また、月1回、人の出入りがあることで、防犯対策にもつながります。
※ベーシックプランの利用料です。プラン詳細はこちらをご確認ください。
おわりに
人の手が入らない家は、どんどん劣化が進んでしまいます。「空き家」とはいえ、その家と土地は、まぎれもない財産です。空き家管理サービスなどを上手に利用して、適切に管理していけるといいですね。
参考:野村総合研究所 プレスリリース「住宅の除却・減築などが進まない場合、2033年には空き家が2,000万戸超へと倍増」
参考:国税庁「パンフレット暮らしの税情報(令和元年度版):土地や建物を売ったとき」