そもそも常備菜とは?
常備菜とは、どのようなものを指すのでしょうか?また、常備菜として調理したおかずを日持ちさせるための保存方法や調理方法、食べるときのポイントなども気になりますよね。順にみていきましょう。
常備菜ってどのくらい保存できる?
常備菜は「作り置きのおかず」と似たイメージを持たれがちですが、一般的には作り置きしても日持ちしなければ常備菜とは言えないようです。
「〇日以上日持ちするもの」という定義はありませんが、3日程度は冷蔵庫で保存できるおかずが常備菜というのが一般的な考え方です。
ただし、常備菜の保存期間は、食材や調理方法、それぞれの家庭の保存環境や冷蔵庫の状態によるため、一概に「〇日保存できる」とは言い切れません。
高温多湿の夏場は、保存期間を短めに
家庭用冷蔵庫にはさまざまな保存温度に対応できるものもあり、冷蔵室、冷凍室、野菜室、製氷室に加えて、氷温帯、パーシャル帯、さらには真空機能を設けたものまであります。しかし、季節の違いや冷蔵庫内の保管場所、さらには食品の詰め方や扉の開閉回数などで、保存温度が大きく影響を受けます。
高温多湿になる夏場は、どんな食材でも傷みやすいですよね。冷蔵庫に入れておいても、冬に比べれば夏はどうしても庫内の温度が上がり、食品は腐りやすいので、保存期間は短めを意識しましょう。冷蔵庫に保存したからといって、安心だとは限りません。ほんの少しの温度上昇が日持ちを短くしますので、家庭における温度管理は極めて重要です。
常備菜におすすめの保存容器
常備菜は、フタ付き密閉容器やフリーザーバッグで保存するのが一般的です。空気が好きな細菌もいれば嫌いな細菌もいますが、なるべく空気に触れないように密閉して保存するのが適しています。しかし、密閉しても容器内にはそもそも空気が存在しています。
また蓋をしても、容器の材質上、外部の酸素との完全な遮断性はないため、常備菜の保存中に容器内に外部から酸素が入り込んできてしまいますので、完全に細菌の増殖を抑えることは不可能です。むしろ、フタ付き密閉容器やフリーザーバッグで保存をするのは、冷蔵庫内で他の食材にドリップなどがかからないように、あるいは逆に、かけられないようにするためと考えた方が良いでしょう。
容器の色は、透明だと中身が一目で分かるので、食べ忘れが起こりにくいです。さらに日付が書けると「いつまでに食べればいいのか」「いつ食べようか」など献立を立てやすくなります。
常備菜を長持ちさせるコツ
常備菜を長持ちさせるには保存方法とあわせて、調理方法も重要です。一般的な常備菜を長持ちさせるコツをご紹介します。
水気と塩気に注意!
漬物やピクルスなど加熱しない常備菜は、できるだけ調理段階で水分を抜き、塩気を多くすること。食塩濃度が高いと細菌が利用できる水分が減るため、食中毒菌などの増殖を抑えることが可能です。さらに、殺菌効果があるお酢(酢酸)など、酸を加えるのも常備菜を日持ちさせるポイントです。
加熱した常備菜は水分が多かったり、塩気が少なく薄い味付けだったりすると長持ちしない場合があります。どちらの条件も食中毒菌を含め細菌には好都合であり、増殖しやすくなります。とはいえ、肉じゃがなど煮汁にもしっかり調味料の味を感じられれば、具材が浸かるくらいの煮汁を一緒に保存すると、傷みを防げることもあります。
また、加熱の有無にかかわらず、常備菜を作るときは下準備として食材を塩もみするなど、水気をとってから調理するのもおすすめです。
保存容器は清潔・乾燥がカギ
常備菜を入れる保存容器は丁寧に洗った後、しっかり乾燥させましょう。水滴が残っていると細菌の増殖の要因になります。また、容器内に食材の汚れが残ると細菌にとって大好物の栄養源になるため、フリーザーバッグは再利用せずに、その都度新しいものに替えるのが鉄則です。
食中毒予防の3原則は細菌を「つけない」・「増やさない」・「やっつける(殺菌する)」。保存容器を清潔に、さらに乾燥に気を配ることは、細菌を「増やさない」に相当する、食中毒予防のカギです。
取り分けは清潔なトングや菜箸で
口に入れたお箸で保存容器や残りの常備菜に触れると、口内から常備菜に雑菌が汚染してしまい、増殖を招きます。常備菜を保存容器から取り出すときは、清潔なトングや菜箸を使って取り出しましょう。食中毒予防の3原則のうち、「つけない」に相当します。
加熱した常備菜は、粗熱を取って冷蔵庫へ
加熱調理した常備菜は、熱いまま保存容器に入れ、冷ましてから密閉しましょう。料理が熱い状態のままフタをすると、保存容器の内部に水滴が溜まり、水気が増え傷みやすくなります。
冷蔵庫に入れるのも、粗熱が取れてからがよいでしょう。常備菜が長持ちするだけでなく、冷蔵庫で保管中の他の食材が傷むのも防げます。ただし、室温には放置せず、忘れずに冷蔵庫にしまいましょう。食中毒予防の3原則のうち、「増やさない」に相当します。
また、冷蔵庫の扉付近は開け閉めが頻繁で温度変化が大きいため、冷蔵庫奥での保存を心掛けるとよいでしょう。
1食分ずつ、小分けがベター
調理した常備菜を一つの保存容器で冷凍すると、食べるときに一気に解凍することになります。冷凍・解凍を繰り返すと味が劣化しますし、細菌がその都度増殖することにも繋がるため衛生面も心配です。
メニューにもよりますが、常備菜を冷凍保存する場合は1食分ずつ小分けにしましょう。さらに、保存容器の内部を真空状態に近づけられるように、ラップやフリーザーバッグを利用するのがおすすめです。
冷蔵保存の場合も、1食分ずつ小分けにして保存しておくと、必要な分だけさっと取り出すことができ、常備菜を常温に置いておく時間を短くすることができます。
常備菜を食卓に出すときのポイント
常備菜を食卓に出すとき、ポイントとなるのは味や衛生面です。調理から数日たっても気持ちよく食べられるよう、二つのポイントを守りましょう。
加熱済みの常備菜は、再加熱がおすすめ
加熱した常備菜は、食べる直前にお鍋や電子レンジ、グリルなどで再加熱がおすすめです。加熱してから食べる方が細菌の殺菌、食中毒予防の3原則のうち、「やっつける」も兼ねるため、衛生面で安心です。さらに、再加熱をすることで味が持ち直したり、一層食材に味がしみ込んだりといったうれしい効果も期待できます。
盛り付けたら、残りはすぐに冷蔵庫へ
常備菜は、清潔な菜箸などで食べる分をお皿に盛りつけたらすぐに冷蔵庫に戻しましょう。常温に置いておく時間が長いほど、傷みやすくなります。食中毒予防の3原則のうち、「増やさない」に相当します。
【きじまりゅうたさんに聞く】常備菜のアレンジ方法
常備菜と一口に言っても、アレンジを加えると、常備菜を別のおかずに変身させることもできます。
常備菜にはどんなアレンジ方法があるのか、きじまさんに伺いました。
――アレンジがきく常備菜には、どのようなものがありますか?
例えば、きんぴらはオムレツや炊き込みご飯にもアレンジがきく、便利な常備菜です。また、煮物は保存しているうちにどんどん味がしみてきて、調理したばかりの時と味わいが変わってきますよね。こうした味に深みが出たものを楽しむのもいいですし、味がしっかりしみ込む前の煮物を、和風のカレーやシチューにするのもおすすめです。
――常備菜に飽きないために、ほかにどのような工夫ができますか?
常備菜をアレンジするだけでなく、複数のレシピを考えて食材を購入するのもいいでしょう。「アレンジがきく常備菜を作る」というより、「同じ食材から数品の常備菜を作る」という発想です。
夏ならナスやピーマン、冬なら白菜や大根など旬の野菜はスーパーで安く売っていますよね。しかし、ナスやピーマンは5・6個が一袋に入っていたり、白菜や大根は大き過ぎたりして、1回で使い切ろうとすると苦戦することが多いです。
まず、ナスなら素揚げ、白菜や大根なら煮物や炒め物にして加熱済みの常備菜を作ります。残りは塩漬けや漬物にするなど、一つの食材から異なる調理方法の常備菜を数品作ります。そうすれば飽きないし、旬の食材は比較的安く購入できるので節約にもなります。残り物っぽさも感じづらいでしょう。
旬の食材が食べたくなったら、加熱する常備菜、お弁当用、生のまま食べる常備菜など、テーマを決め、どんな常備菜がいくつできるかを考えてみてはいかがでしょうか?
野菜たっぷり! 万能常備菜レシピ
ウチコトでも毎日の食事に役立つ常備菜のレシピを多数紹介しています。栄養たっぷりの常備菜レシピや、簡単・時短でできる常備菜レシピなどを集めました。ぜひ、チェックしてみてくださいね。
忙しい時に! 栄養満点&簡単「作り置き」レシピまとめ
おわりに
普段から常備菜を準備しておけば、毎日の食事作りの負担が減ります。シンプルな味付けの常備菜なら、別の料理にアレンジすることも可能ですし、同じ食材から複数の常備菜を作れば飽きることなく楽しめますね。
常備菜は粗熱を取ってから密閉、冷蔵庫に保存するよう意識しましょう。また、1食分ずつ小分けでの保存を心掛けておくと、傷みも防げますし、加熱したり盛り付けたりするのもスムーズです。
常備菜をうまく利用して、日々の食事に彩りを増やせるとよいですね。
きじまりゅうたさん 取材箇所:【きじまりゅうたさんに聞く】常備菜のアレンジ方法
佐藤順教授 監修箇所:常備菜ってどのくらい保存できる? / 常備菜におすすめの保存容器 / 常備菜を長持ちさせるコツ / 常備菜を食卓に出すときのポイント