炊飯器を置かず、お鍋炊きご飯にする家庭が増えている!?
最近、キッチンの取材をしていて、あることに気づいた。炊飯器がない家が多いのである。特に30代の若い世代だ。
「炊飯器はどこに置いているんですか? 」もしかしてご飯を食べない人が増えているのかしら、などと思いつつ、聞くと、意外な答えが返ってきた。
「わたし、お鍋でご飯を炊くんですよ。だから炊飯器はいらないんです」。
日本のキッチンは置き型の家電が多く、オーブントースター、電子レンジ、フードプロセッサー、コーヒーメーカーなど、家電置き場はキッチンプランの大切なところ。
中でも炊飯器は蒸気が出る、ふたを上に開ける、配膳する食卓に近くなければいけないなど、プランナー泣かせの家電。
けれども鍋とガスコンロがあれば炊飯器はいらない、という人が増えているのだ。
鍋炊きご飯が流行しているのは知っていたけれど、キッチンプランに関わり始めていたとは。まさにキッチン上手な人たちの解決法だ。
「それにお鍋で炊くご飯は早くて、美味しいんですよ。最近はご飯炊き向けの、かわいいお鍋がたくさんあるんです。」
3合のご飯が火をつけてから20分程度で炊きあがる(蒸らし時間は除く)。
お鍋ごと、食卓にだすと配膳も楽な上、テーブルのコーディネートとしてもさまになる。ふたを開けると熱々の炊きたてご飯。たいしたおかずがなかったとしても、それだけでごちそうだ。
三重県の陶器メーカー、長谷製陶ではご飯炊き専用の土鍋「かまどさん」を出したところ、これが大ヒット。
お鍋のご飯炊きは、吹きこぼれがやはり泣き所なのだけれど、これは内フタがついて、吹きこぼれにくいという点が好評のようだ。
理想的な炊飯ラインを実現できるので、粘りが強く甘みもより引きだす。
中くらいの強火(中強火)で火にかけ、ふたの穴から蒸気が噴出し始めたら1~2分後に火を止めて、蒸らすこと20分で炊きあがり!
火加減調整いらずで美味しいごはんが炊けるうえに、普通の鍋としてもかなり優秀な土鍋。
お鍋でおいしくご飯を炊くコツとは?
お鍋でご飯を炊くコツを調べてみた。
まず「水の量は、軽く水切りをした米に同容積の水を加える」とある。ただしこの先の注釈が面白い。「まずはこの方法で炊飯をして、2回目以降はお好みに応じた水加減がベスト」という。まさに的を得た言葉だ。
ご飯はお米の水分量やその日食べたい好みで炊きあがり(柔らかめ、かため)が変わるのが、日本人だろう。それにお鍋の特長を知りながら、火加減をし、「自分のものにしていく」のが、お鍋炊きご飯の本当の面白さじゃないだろうか。分量通り、時間通りでいいなら、炊飯器で用が足りるからだ。
そしてポイントは炊き始めから沸騰するまでの間だという。「この間に10分前後の時間をかけると甘みがしっかり引き出せ、ふっくらと質感のよいご飯にしあがります」。この最初の10分を「おいしい上昇ライン」というそう。
お鍋炊きご飯派に共通する人のキッチン
お鍋炊きご飯派に共通する人のキッチンは、次の通りである。
1. 加熱はガスコンロを選んでいる。‘はじめちょろちょろ中ぱっぱ‘がしやすいし、ぱりぱりとおこげの音と香りも楽しい。
2. 炊飯器を置くスペースがいらず、キッチンをすっきり使っている。
多機能コンロの中にはグリル部でトーストが焼けるものもあり、その場合はオーブントースターも持っていない。ごちゃごちゃ家電を持たない暮らしを好む。
3. お気に入りのお鍋を持っている。「ル・クルーゼ」や「かまどさん」など、土鍋、鋳物鍋、アルミやステンレスの文化鍋、圧力鍋。種類はさまざまである。使っておいしく、食卓に置いて楽しいものが人気があるようだ。中には飾るようにしまえる棚をつくる人もいる。
そんなわけで私も夕べ、土鍋でご飯を炊いてみた。知り合いから、新米が届いたのである。水分の多い新米。炊飯器で炊いても、いつもべたべたご飯にしてしまう私だが、火加減を楽しみながら調節し、なんとか炊き上げた。
まさに一粒一粒がピカピカと光って、ほどよいかたさのご飯。ぎゅっと噛みしめると甘い味が広がった。