更新日: 2017年08月24日
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【教育研究家に聞く】「シュタイナー教育」とは? 特徴や注意点、家庭でできるポイント

「シュタイナー教育」をご存じですか? 日本にも幼稚園などがたくさんあるほか、俳優の斎藤工さんが「シュタイナー学校」に通っていたことも知られています。一体どんな教育なのでしょうか? その特徴や注意点、家庭で取り入れるポイントについて、教育研究家・征矢里沙さんに取材いただきました。

【シュタイナー教育とは】シュタイナー教育の始まりとは?

Rudolf steiner 出典:https://madisonwaldorf.org/about-our-school/about-rudolf-steiner/
シュタイナー教育は、オーストリア(現在のクロアチア)生まれの哲学者、ルドルフ・シュタイナー博士(1861-1925年)によって提唱されました。
彼の思想体系は、社会・経済・医学・農業など幅広い分野に影響を与えており、その中の一つが教育です。

最初の学校は、第一次大戦直後の1919年に、ドイツで設立されました。その後世界中に広がり、現在、世界60ヶ国以上に1,000校以上の学校と1,500園以上の幼稚園があると言われています。

日本では、全日制学校が7校以上、園は50園以上あります(2017年8月時点)。
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東京賢治シュタイナー学校 たんぽぽこども園(提供:NPO法人いきはぐ)
シュタイナー教育は、ルドルフ・シュタイナー氏の独特な思想を背景にしているため、独特な用語が多く、難しそうに思えることもあります。

また、「テレビを見せない」「キャラクターものはダメ」「食べ物はオーガニック」のような特徴が目立つ部分もあり、誤解されがちな部分もあるのかなと思います。シュタイナー教育とは本当はどういうものなのか、その内容と特徴について分かりやすく解説していきます。

【シュタイナー教育の特徴とは その1】「からだ」「こころ」「あたま」のバランスを重視

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PIXTA
シュタイナー教育の最も大きな特徴を一言で言えば、「からだ」と「こころ」と「あたま」のバランスを大切にする、ということだと思います。

大人になったときに、身体だけ発達し過ぎるのも、感情的になり過ぎるのも、頭でっかちになり過ぎるのもよくない。身体と心と頭が「バランスよく調和する」ことが、人間にとって大切だ――ということが、シュタイナー教育ではとても重視されています。

○それぞれが育つ時期を7年ごとに分ける


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(提供:NPO法人いきはぐ)
それでは、「からだ」と「こころ」と「あたま」をバランスよく育てるにはどうしたらよいのでしょう。
ルドルフ・シュタイナー博士は、人間の成長の段階を「7年」ごとに分けて考えました。

●0~7歳 …「からだ」を育てることが一番大切な時期
●7~14歳 …「こころ」を育てることが一番大切な時期
●14~21歳 …「あたま」を育てることが一番大切な時期

シュタイナー教育としては、この「順番」を守ることが大切だと言われています。

たとえば、知能を発達させるのは早ければ早いほどがいい、という考え方があるとします。
それに対して、「あたま」=思考力を中心的に育てるのは14歳以降がベスト、その前には、「からだ」=手足をたくさん動かしたり、「こころ」=感情を豊かにするような体験をたくさんすることのほうが大切です、というのが、シュタイナー教育の考え方です。

◯幼稚園から学校までカバー


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京田辺シュタイナー学校(提供:NPO法人いきはぐ)
こうした考え方を実現するために、シュタイナー教育では、幼稚園・保育園の「幼児教育」に加え、6~18歳までの「学校教育」も行われています。

あまり知られていないことですが、日本にもシュタイナー教育を行う「シュタイナー学校」が約7校あります。そのうち4校は高等部まであり、小~高一貫教育が行われています。

【シュタイナー教育の特徴とは その2】テレビ禁止って本当? 不思議な雰囲気の理由

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横浜シュタイナーどんぐりのおうち(提供:NPO法人いきはぐ)
シュタイナー教育の幼稚園・保育園や学校に行くと、現代社会では珍しい独特の「文化」があるような印象を受けます。

たとえば幼稚園の内装は、薄ピンク色のカーテンに、木のおもちゃや椅子、羊毛で作ったふわふわの飾り。

テレビやビデオ、キャラクターもの、CDですら一切ありません。
「ここは現代かしら?」と思うような、何とも不思議な雰囲気ですが、一つひとつに理由があるといいます。

○テレビや勉強より、手足をたくさん動かす体験を


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東京賢治シュタイナー学校 たんぽぽこどもの園(提供:NPO法人いきはぐ)
シュタイナーは、幼児期は、健康な「からだ」を作ることが一番大切な時期だと提唱しました。
手足をたくさん動かして遊ぶことが、骨や筋肉や内臓の発達はもちろん、「思い通りに体を動かす」という経験の繰り返しから、「意思」の力や「想像力」の発達にもつながるそうです。

テレビやゲームは、どうしても一ヶ所にじっとして見ることが多くなります。そのため、内容には関係なく、この時期にはあまり推奨されないのだと言います。大量の情報を一度に浴びるので、「あたま」が忙しくなり過ぎてしまう、ということもあります。

音楽や歌も、テレビやCDを通してより、大人が目の前で歌ってあげたり、鉄琴などの簡単な楽器で演奏してあげた方がよいという考え方だそうです。

同じ考え方から、7歳になるまでは「文字」や「数字」を教え込むこともありません。

○子どもが安心してゆっくり成長できる環境


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横浜シュタイナーこどもの園(提供:NPO法人いきはぐ)
小さな子どもは、色々なことをどんどん吸収する力を持っていますよね。
だからこそ、早くから色んなことを教えて、どんどん「刺激」を与えることが発達を早める、という考え方もあります。

それに対して、シュタイナー教育では、小さな子どもは吸収力が高いからこそ、刺激を与えすぎない方がよい、と考えるそうです。ピンク色のカーテンや木製のおもちゃに囲まれた、温かみのある環境は、子どもに「安心感」を与えます。

安心感のある環境で、自分のペースでゆっくり成長することが大切、とシュタイナー教育では考えられているそうです。

○年齢によって必要とされることは変わる


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学校法人シュタイナー学園(提供:NPO法人いきはぐ)
ただし、それは「からだ」を育てる幼児期の考え方。
7歳以上になると、子どもにとって必要とされることも変わってきます。小・中等部のカリキュラムでは、「こころ」を育てるために、様々な分野に渡ってたくさんの経験や体験が提供されています。

「あたま」を育てる高等部になれば、高等数学を学んだり論文を書いたり、パソコンやネットを駆使する生徒もたくさんいます。テレビもずっと禁止されているわけではありません。

「現代」を否定しているわけではなく、あくまで、子どもの健全な成長のために、適切な時期に適切な刺激を与えていきましょう、という考え方だと言えます。

【シュタイナー教育の特徴とは その3】目指すのは「自由」な生き方ができる人間

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PIXTA
そんなシュタイナー教育が目指すのは、「自由」な生き方ができる人間に成長することです。これは、単に勝手気ままという意味ではなく、「自らの意思によって行動できる」というような意味だそうです。


○シュタイナー学校の卒業生は?

シュタイナー学校の卒業生で、日本人に知られている人はあまり多くありませんが、俳優の斎藤工さんは小学校までシュタイナー教育を受けており、様々なインタビューでシュタイナー教育について話しています。

また、「果てしない物語」「モモ」などの作者である児童文学作家ミヒャエル・エンデも、一時期シュタイナー教育を受けており、シュタイナーの思想にも大きな影響を受けていることを語っています。

俳優の斎藤工さんを見ると、その幅の広い活躍ぶりは、自由でいながら芯がある、という印象を受けます。ミヒャエル・エンデも、児童文学でありながら、時代に流されない奥の深い作風が特徴です。

出典:学校法人シュタイナー学園 卒業生インタビュー


○シュタイナー学校の卒業生はフリーダム!?

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PIXTA
私も実際に、シュタイナー学校の卒業生に何人も会いましたが、皆とてもしっかりと自分の考えを持っていると感じました。一方で、周りに合わせるよりも、自分の意思や気持ちを大切にして、生き方を柔軟に変えていく面があるように思います。

自分の中で筋が通っていれば、今までやっていたことをやめたり、全く違うことを始めたり、周りが全くやっていないことでも一人で飛び込んでいく、そんな傾向がある気がします。それが、日本人の一般的な感覚からすると「フリーダム」に感じる部分もあるのかもしれません。


○シュタイナー学校の卒業生の進路は?

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PIXTA
日本における本格的なシュタイナー教育は、1980年代から始まりました。
ただ、教師や資金などの不足から、小学部しかない時期も長く、幼~高一貫教育を受けた卒業生が出てきたのは、ついここ数年のことです。その卒業生の調査はまだまだこれからの課題です。

ただ、私から見た傾向としては、「大学進学率は高い、でも進路は幅広い」と感じました。
多くの生徒が大学に進学する一方で、職人に弟子入りするなど独自の進路を選ぶ子もいます。進学の目的も、偏差値ではなく、自分が学びたいテーマに沿って大学や学部を選ぶ傾向があるようです。海外留学する生徒も、比較的多いと言われています。

シュタイナー教育のデメリット、注意点とは?

最近では教育雑誌などにも取り上げられ、知る人も多くなったシュタイナー教育ですが、注意点として知っておきたいこともあります。


○「ルール」にとらわれ過ぎないように

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「からだ」「こころ」「あたま」をバランスよく育てる、と一口に言っても、シュタイナー教育の方法を現代で実践するのは、なかなか大変なことです。
テレビやキャラクターものを避けるほか、体の一部を酷使しがちなスポーツ(サッカーや野球など)も、中高生になるまでは推奨されません。
シュタイナー博士が有機農業も提唱したことなどから、シュタイナー教育をする親には、食べ物にこだわる人も多いです。

ただ、そうした「ルール」にとらわれ過ぎると、子ども自身が見えなくなってしまったり、周囲から孤立してしまったりするので、注意が必要です。家庭においては、時と場合によって、現実とのバランスを取ることも大切だと思います。


○シュタイナー博士の思想が難解すぎる

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シュタイナー教育のもとになっているルドルフ・シュタイナー博士の思想を調べてみたら、難解で挫折してしまう人もたくさんいます。100年前の思想の上に、いわゆる「スピリチュアル」な面もたくさんあり、違和感のある人もいるかと思います。

シュタイナー教育をやる人は、これを全部理解して、全部に賛同しているのか…といえば、そうでもありません。全部を理解しなくても、シュタイナー教育の大切な部分は理解できますし、幼稚園や学校に通う親にも、色々な考え方の人がいます。

シュタイナー教育の幼稚園や学校などでは、初心者向けのやさしい公開講座を行っています。やさしい本もたくさん出ているので、まずはそちらをおすすめします。


参考:クレヨンハウス:「月刊クーヨン編集部シュタイナーの子育て」、発行日: 2009/2/7
71z ovvr0jl 出典:http://www.amazon.co.jp
月刊クーヨン編集部 (編集)「シュタイナーの子育て」、クレヨンハウス、発行日:2009/2/7

○偏差値が高くなるわけではない


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幼児期はゆったり育てていますが、高等部ではかなり高度なことをしています。そこから、「その方が逆に偏差値も高くなるってことでしょう?」と捉える親もいますが、そういうわけではありません。

目的はあくまで「『自由』な生き方ができる人間」を育てることです。
シュタイナー学校の勉強の仕方も、一般の学校とはかなり違うので、いわゆる偏差値は決して高いわけではないようです。ペーパーテストが苦手な生徒は、むしろ多いでしょう。ただ、面接やプレゼンテーションには強く、進学目的もはっきりしているため、AO入試などに受かることは多いと言われています。

家庭でできるシュタイナー教育とは

シュタイナー教育に興味はあるけど、幼稚園・保育園や学校には通うことができない・・・という方もいますよね。
特に幼児期において、シュタイナー教育のエッセンスを取り入れるポイントをお伝えします。


○シンプルな「素材」をおもちゃに

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うめの森ヴァルドルフ子ども園(提供:NPO法人いきはぐ)
シュタイナー教育の幼児教育では、いわゆる既成のおもちゃはあまりありません。

その代わりに、きれいな木ぎれや小石や木の実、紐、布といった「素材」がたくさんあります。子どもたちは、これを自分で自由に色々なものに見立てて遊びます。木ぎれを並べて新幹線に、木の実を布で包んでお弁当に、紐で電車ごっこと、自分達で遊びを作っていくことで、想像力をはぐくむそうです。

おうちでも、精巧に作られたおもちゃだけでなく、想像を使って遊べる「素材」となるものも置くことで、子どもの遊びの幅が広がるかもしれません。


○生活リズムを整える

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シュタイナー教育でとても大切にされているのが、「生活リズム」です。

早寝早起きの生活は、健康な「からだ」作りにも関係します。

また、安心感のある環境が大切、と上で述べましたが、同じ生活リズムの繰り返しが、子どもに「今日も同じだ」という安心感をもたらすそうです。シュタイナー教育の幼稚園では、毎日ほぼ同じ時間に同じことをするほか、同じ曜日に同じこと(月曜日はお散歩の日など)、同じ季節に同じ季節のイベントを繰り返す、ということを大切にしています。

繰り返しによる子どもの安心感、という観点からも、改めて生活リズムを意識してみるとよいかもしれません。


○言葉ではなく行動で教える


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幼児期の子どもが一番吸収しやすい学びは、「大人の真似をすること」だそうです。

7歳以下の子どもは、頭で記憶する能力はまだあまり育っておらず、言葉で何か教え込むことは、あまり意味がないと、シュタイナー教育では言われています。それよりも、大人の行動を観察し、そこから考え方や価値観まで読み取って学んでいるそうです。

簡単に言えば、「片づけなさい」と言うよりも、自分が一緒に楽しく片づけたり、「野菜も食べなさい」と言うよりも、自分が一緒に美味しそうに食べる方が大切だということです。

時間がかかるやり方ですが、そもそも子どもの成長は、ゆっくり自分のペースでしていくのがいい、というのがシュタイナー教育の考え方です。

いつもいつもはできなくても、親としてどんな姿を見せようか、少しでも意識できるときがあるとよいのではないでしょうか。

おわりに

シュタイナー教育とはどんな教育なのか、その特徴や、デメリット・注意点、家庭で取り入れる方法などをご紹介しました。

ルドルフ・シュタイナー博士の思想、と言うと身構えてしまいますが、その中には、「昔ながらの素朴な子育て」の感覚に近いものもたくさんあります。

家庭での子育てにも、ぜひ参考にしてみて下さいね。

ライター紹介

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征矢里沙
・『生きる力』をはぐくむ教育研究家
・NPO法人いきはぐ代表

子ども達の『生きる力』をはぐくむという観点から、様々な教育を研究。大学卒業後、社会人経験を経て、NPO法人いきはぐを設立。全国100ヶ所以上の学校・幼稚園・保育園等を実際に訪問して取材をするなど、『生きる力』をはぐくむ教育を広めるために活動。現在、1歳と4歳の男児二人の母としても奮闘中。

ホームページ:NPO法人いきはぐ

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