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【専門家に聞く】ゴミ問題の影響とは? 身近でエコなプラスチックフリー

ゴミの中でもプラスチックゴミは、地球規模の深刻な環境問題の一因です。レジ袋有料化政策が始まったのを機に、プラスチックフリーを意識しだした方もいるのではないでしょうか? プラスチックゴミ問題やプラスチックフリーをはじめとしたゴミ対策について、プラなし博士として活動する生物海洋学者の中嶋亮太さんにお話を伺いました。

最終更新日:2024.1.2

目 次

ゴミ問題って、そもそもそんなに深刻?

浜辺でゴミ拾い

PIXTA

日本は、とても衛生的な国です。きちんとゴミを分類し、収集に出してさえいれば、ゴミがあふれる光景とは無縁でいられますよね。おかげでゴミ問題がさほど深刻だと感じられない方もいるでしょう。
しかし、世界規模でみるとゴミは地球環境にかなりのダメージを与えています。現在ゴミ問題の中でも、プラスチックゴミによる環境汚染への取り組みは急務だと言われています。

多くの先進国が取り組むプラスチックゴミの現状と対策について、海洋のプラスチック汚染について研究を行っている国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC) 副主任研究員、中嶋亮太さんにお話を伺いました。

地球にとって深刻なゴミ問題

ゴミの山

PIXTA

―― ゴミ問題で問題となっているのは、どのようなゴミなのでしょうか?
まず、JAMSTECは、海洋・地球・生命の包括的な理解を目指す海洋地球科学の総合的な研究機関です。ミッションの一つが、地球環境変化の「現在」を知り「将来」の予測を立てることです。海洋ゴミが海洋生態系、さらには地球全体に及ぼす多大な問題についても調査を進めています。

私たちは、ゴミ問題の中でもとりわけ、プラスチックゴミを注視しています。なぜなら、世界中、どこの海を見渡しても、プラスチックが海洋ゴミのかなりの割合を占めているからです。

プラスチックゴミの量

2017年7月釜石沖 水深約660mの様子

写真提供:JAMSTEC 2017年7月/釜石沖 水深約660m

―― どのくらいの量のプラスチックゴミがあるのでしょうか?
2015年の時点で海を含む水系に流出したプラスチックゴミは、年間およそ2,000万トンと言われています。つまり東京スカイツリーおよそ550個分の重さに相当します。すでに流出して海洋に存在するプラスチックゴミの総量は億トンの単位になります。

―― ものすごい量ですね。
我々人間が、今のペースでプラスチックを使い続け、廃棄を続けると、2050年には、プラスチックゴミが海にいる全ての魚の量を超えると予想されています。そうなれば、さまざまな海洋生物に負の影響が起こるでしょうし、食卓事情も変わってしまうと懸念されています。

プラスチックゴミってどんなもの?

―― 海にあるプラスチックゴミの内訳では、どのようなものが多いのでしょうか?
世界中で廃棄されるプラスチックゴミのうち、約半数が使い捨てプラスチックゴミです。海で見つかるプラスチックゴミには、漁に使われた網や、建材もありますが、圧倒的に多いのが、容器・包装などの使い捨てプラスチックです。
ペットボトルや使い捨て食器・包装材などは誰の身近にもあり、ほんのわずかな時間だけ使用して直ちにゴミに変わるものです。こうした使い捨てプラスチックが海で見つかるゴミの大部分を占めます。

海に行きついたプラスチックゴミはどうなる?

2019年9月房総半島の東沖 水深約5700mの様子

写真提供:JAMSTEC 2019年9月/房総半島の東沖 水深約5,700m

―― プラスチックゴミは海に行きついた後、どうなるのですか?
このうちのほとんど、というより、ほぼ全てのプラスチックゴミは生物に分解されることはなく、海洋に蓄積を続けています。冷たい深海へ沈み、捨てた時の状態のまま残っているプラスチックゴミもあります。

海岸や海の表面を漂ううちに、劣化して微細化し、マイクロプラスチックになることも珍しくありません。マイクロプラスチックはさらに微細化が進むとナノプラスチックになります。
プラスチックの中には抗菌剤や難燃剤(ナンネンザイ:燃えづらくする物質)、可塑剤(カソザイ:形を変えやすくする物質)といった、生物が口にすると身体に影響を及ぼす有害な化学物質も含まれています。

こうしたマイクロプラスチックをプランクトンが食べ、そのプランクトンとマイクロプラスチックが魚のお腹に収まり、さらに大きな魚がその魚とプラスチック片を食べるといった風に、プラスチックの汚染が海洋生物の食物連鎖に入り込んでいくんです。結果として海洋生態系の劣化につながっています。

プラスチックゴミ削減は日本人の課題

スーパーでの買い物の様子

PIXTA

―― 普通のライフスタイルが、深刻なプラスチックゴミ問題の一因になっているということですよね?
日本の慣習ともいえる商品の保護、衛生面への配慮が、プラスチックフリーの障害になっていることは間違いありません。皮をむいたり、洗ったりしてから食べるフルーツや野菜も当たり前に包装されていますよね? これが普通という国は他にないです。

―― 確かに私自身も普通の生活の中で出るプラスチックゴミには鈍感かもしれません。
日本には容器包装リサイクル法があり、プラスチックゴミのうち容器・包装は個別に回収する仕組みがあります。家庭ではプラスチックゴミはきちんと分別しているので、全てがリサイクルされていると思いきや、実情は異なります。

プラスチックゴミはリサイクルできるように思われがちですが、実際にリサイクルされているのは、透明のペットボトルを含めてほんの一部にすぎません。しかもリサイクルは、できて2・3回。なぜならプラスチックはリサイクルするたびに劣化していき商品価値がなくなるからです。
そのため、日本国内の純粋なプラスチックのリサイクル率は1割程度、世界でもプラスチックのリサイクル率は全体のわずか9%というデータもあります。

プラスチックゴミの行方

―― 残りの約90%はどうなるのでしょうか?
日本は世界有数のゴミ処理技術を持つ国であり、ゴミ処理施設も他国では類を見ないほどの数があちこちに建てられています。おかげで、日本国内のプラスチックゴミの7割程度は焼却処分されます。
一方で油や食品で汚れた使い捨て弁当の容器やフォーク・ストロー、ペラペラのレジ袋などのほとんどはリユースできず、リサイクルにも回されていません。

同時にこれらの使い捨てのプラスチック製品は、細かく分けるとポリエチレンやポリプロピレンなどさまざまな種類があります。ポリエチレンをリサイクルしようと思えばポリエチレンだけを集めなければならない。でも、実際ゴミ箱の中はさまざまな種類のプラスチックゴミがごちゃまぜです。そのため、リサイクルが難しい。

世界規模でみると、リサイクルされたプラスチックは9%だけという話をしましたが、残り約90%のうち、約10%が焼却され、さらに残った約80%が埋め立てられたか、環境中に「もれた」とされています。

―― 「もれた」というのは、どういうことですか?
例えば、わざとじゃなくてもお菓子などの食品の包装を道端に落としたり、レジ袋が風で飛ばされたりした経験はありませんか? また、ゴミ箱からプラスチックゴミがあふれる光景を誰しも目にしたことがあると思います。
ビーチに散乱しているプラスチックゴミ、道路上に落ちているプラスチックゴミ、そのようなプラスチックゴミは全て、廃棄物を処理する流れから「もれた」ゴミです。こうした事態が世界中、毎日あらゆるシーンや場所で発生しています。

家庭から出る使い捨てプラスチックの末路は、家庭ゴミとしてきちんと処理されるか・もれるか、のどちらかです。プラスチックゴミの100%を完全に処理することは不可能で、どんなに廃棄物処理が行き届いている日本でも数パーセントのゴミがもれ出しています。
使用するプラスチックの量が多いと、もれる量も比例して多くなります。生活の中で使用するプラスチックを削減しないと、もれるプラスチックゴミが減ることはないと考えたほうがよいでしょう。

バーゼル条約決定でゴミ問題の意識改革

―― プラスチックフリーに移行していかないと、どのような状況になるとお考えですか?
日本は、産業廃棄物やリサイクル資源として集めたプラスチックゴミの多くを中国や東南アジアに送って処理してもらっていました。しかし、2019年に日本も加盟する国際条約・バーゼル条約に「汚れた廃プラスチックを輸出してはならない」とする項目が決定されました。
※輸出相手国の同意がない場合
今まで海外で処理してもらっていたプラスチックゴミの多くを、今後は日本国内で処理しなければならないという意味です。しかし、現実には、日本国内では輸出できなくなった廃プラスチックを処理しきれていません。

そのため、プラスチックゴミの行き場がなくなり、国内にどんどん溜まっています。ゴミとして処理されるのを待つ間、野外に放置されるため、マイクロプラスチック化して環境にもれるプラスチックゴミが増えるのは間違いないでしょう。
プラスチックゴミによる被害の深刻さが解明され、かつ処理における国際条約も改められた今こそ、今の生活や未来の地球を守るために素早い意識改革が必要です。

身近なプラスチックフリーとは?

浜辺に捨てられたゴミ

PIXTA

―― 私たち消費者が取り組むべきことはありますか?
まず、消費者がこうしたプラスチックゴミの事実を知り、使用を抑える意識が大切です。欧米では、環境意識が高い層を中心に、こうしたプラスチックフリー活動が生活に根付いています。
日本でも、レジ袋有料化でレジ袋辞退やエコバッグ携帯の意識が少しずつ定着してきました。加えてマイボトルやマイ箸・お弁当を持ち歩くなど、生活の中でできるエコ活動を始める時期だと思います。

おわりに

お弁当を詰める様子

PIXTA

プラスチックゴミの現状は、一般的に知られているより深刻です。こうした現状を一人ひとりが意識できるとよいですね。エコバッグやマイボトルなど生活の中でできるプラスチックフリーを始めてみてはいかがでしょうか。

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  • この記事取材先プロフィール

    中嶋亮太

    生物海洋学者(博士) 国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC) 副主任研究員

    中嶋亮太

    1981年生まれ。横須賀にあるJAMSTECで、地球環境において大きな問題となっている海洋のプラスチック汚染について研究を進めている。プラなし博士としてラジオ・雑誌・webなどさまざまなメディアでプラスチックフリーを広める活動を行う。

    著書:『海洋プラスチック汚染 「プラなし」博士、ごみを語る』(岩波科学ライブラリー)

    もっと見る
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公開日:2020.11.9

最終更新日:2024.1.2

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