「水量・水流・時間・回数」が全然違う!? 洗濯コースの4大要素とは?
洗濯物と洗剤を入れ、ふたを閉めて、ボタンをピッ。ふだんの洗濯はボタンひとつで完了、日ごろから洗濯コースを細かく使い分けている・・・という人はあまり多くないかもしれません。
「標準コース以外のコースは使わないという人が、実は半数近くいる・・・という調査結果があります。洗濯機のコースは水量や水流などがかなり違います。洗濯物に合わせて適切に選ぶと、汚れ落ちもよく衣類も長持ちします」
とアドバイスするのは、家電に詳しい家電+ライフスタイルプロデューサーの神原サリーさん。
神原さんによると、洗濯機のコースは、
水量
水流
(洗い/すすぎ/脱水の)時間
(洗い/すすぎ/脱水の)回数
という4つの要素が、洗濯物に合わせて細かく調整され、組み合わせられています。
家電通の神原さんと一緒に、身近な4洗濯コースの特長をおさらい!
メーカーによってさまざまな呼び方や設定がありますが、主なコースは上の4つ。
神原さん「海外の洗濯機の中には20種類位コースが細かく分かれているものもありますが、日本ではおおむね上記の4つに大別されます。大きく違うのは水量と水流です」
洗い/すすぎ/脱水の時間配分や回数がどのように組み合わせられているかは、機種ごとに異なります。
詳細は取扱説明書に記載されています。流し読みしてしまいがちな取扱説明書ですが、しっかりと中を読んでみると、「そうだったのか」という新しい発見がありますよ。
何を洗うのに適しているの? 身近な4つの洗濯コースの洗濯物まとめ
ニット、ワンピースなど型崩れしやすいものやドライマーク表示のものは「おしゃれ着・デリケートコース」を。
毛布やマット、デニムなど、厚地で水・洗剤が内部までしみ込みにくいものは「大物・厚物コース」を。
それ以外のいわゆる普段着の洗濯物は、仕上がりまでの時間によって「標準コース」か「時短・スピードコース」を選ぶ、というのが一般的な使い分け方です。
では、それぞれのコースの特長や使い方のポイントを見てみましょう。
メーカー各社の知見やこだわりが詰まっている【標準コース】
標準コースは基本的に、1回の洗いと2回のすすぎ・脱水で構成されています。
洗い
すすぎ
脱水
すすぎ(2回目)
脱水(2回目)
「洗い」のステップで、どのような水流をつくり、どのように洗剤液を浸透させるか、「すすぎ」「脱水」で、いかに衣類をいためず汚れと洗剤液を“はがす”か、などが、各メーカーの腕の見せ所。
神原さん「洗い、すすぎ、脱水とステップは分かれていますが、私はすすぎ、脱水も”洗い”のうちだと思っています。衣類の中に含ませた洗剤液のすすぎ、脱水を繰り返して、汚れが落ちていきます」
昨今は「お湯洗い」などの新しい洗い方も登場。より汚れ落ち性能を高めた機種が次々と発表されています。
ドラム式と縦型洗濯機の「洗い方」の違いとは?
ドラム式の基本の洗い方は「たたき洗い」。
神原さん「ドラムを回転させて、衣類を持ち上げて落とすたたき洗いがメインです。この中に、ドラムの急反転によるもみ洗いを組み合わせていきます」
縦型よりもかなり節水でき、少ない水で洗剤を溶かすため、皮脂汚れが落ちやすいといわれています。
一方、縦型洗濯機の基本の洗い方は「もみ洗い」。
神原さん「洗濯機の底についた回転する羽根のことをパルセーターといいます。このパルセーターの回転によってつくり出されたかくはん水流で、もみ洗いをするのが縦型洗濯機です」
洗濯槽を高速回転させると、遠心力でやさしくしっかり洗うことができます。また、洗濯物をこすり合わせて汚れを落とすこともできるので、泥汚れなどガンコな汚れにも強いといわれています。
縦型洗濯機は「汚れが多いもの」から順に入れる! 汚れ落ちに違いが!!
縦型洗濯機で標準コースを使う際、知っておくといいのが、洗濯物を入れる順番です。
神原さん「縦型洗濯機の洗濯槽は、パルセーターに近い下側のほうが水流がより強くなっています。靴下など、しっかり汚れを落としたいものを先に(下側に)入れると、強い水流を生かしてすっきり洗い上げられます」
水をたくさん使って時間を短縮する【洗濯機の時短・スピードコース】
く洗い上がる設定となっています。
神原さん「洗濯において時間がかかるのは、意外にも、洗濯槽に水をためている時間なのです。そのため、標準コースのようにすすぎが2回になると、どうしてもトータルの洗濯時間が長くなります」
そこで、洗い時間を短縮するだけでなく、すすぎを1回に短縮し、水をためる時間をカットしたのが「時短・スピードコース」です。
時短=節水ではない! 時短・スピードコースの落とし穴
急いでいるときに便利な、時短・スピードコース。
多くのメーカーでは、すすぎ・脱水を各1回にして、標準コースより早「すすぎを1回にすると、水も節約できるのでは?」と考えがちですが、「ここが落とし穴です」と神原さん。
神原さん「標準コースは基本的に『ためすすぎ』をしますが、時短・スピードコースは、すすぎ回数を減らした分、『流水すすぎ』で洗剤液を流していきます。そのため、メーカーによっては標準コースより大量の水を使うこともあるので注意しましょう」
「すすぎ1回=時短=節水・エコ」とひとくくりにせず、しっかりと取扱説明書を読んで使用水量を確認する必要がありそうです。
水流を減らしてほぐすように洗う【洗濯機のおしゃれ着・デリケートコース】
手洗い表示やドライマークのついた洗濯物を洗う「おしゃれ着・デリケートコース」。
おしゃれ着洗い、デリケート洗い、ドライモードなど、メーカーによってさまざまな呼び方がありますが、これらはすべて「衣類の風合いを守りながら洗う」というコースです。
衣類が型崩れしないよう、水はたっぷり。水流もソフトにして、摩擦などの力を極力かけず、洗剤の力を頼りながら、短めの洗い・すすぎ・脱水時間で洗い上げます。
神原さん「デリケートコースが出始めの頃は、あまりにもやさしすぎる水流で、本当に洗えているのか不安になる人もいたようです。ですが、昨今は、たっぷりの水を降り注がせながら洗ったり、衣類の中にしっかり洗剤液を浸透させながらもすっきりと流しきるなど、デリケート洗いの進化はめざましいんですよ」
洗剤はもちろん、おしゃれ着洗い用の洗剤を。
神原さん「洗剤によって風合いなど仕上がりも変わってきます。おしゃれ着・デリケートコースを選ぶ際は、必ず専用の洗剤を使ってくださいね」
洗剤を内部までしっかり浸透させる【洗濯機の大物・厚物コース】
毛布や肌掛けぶとん、タオルケットやマットなど、厚地のものを洗う時に使う「大物・厚物コース」。
洗濯物の生地が厚い分、水や洗剤が繊維の奥まで浸透しにくいため、豊富な水量を使いながら、強い水流で、長い時間をかけて洗い/すすぎ/脱水をしっかりと行うコースです。
神原さん「洗う時間も使う水量も最大、が、このコースの特長ですね。標準コースが40分としたら60分以上はかかる機種がほとんどだと思います」
毛布などは水をどんどん吸うため、洗濯時間が少ないと、水や洗剤をしみ込ませるだけで終わってしまう、と神原さん。
神原さん「毛布やマットなどはあまり頻繁に洗うものでもないため、できるだけ繊維の奥までしっかりと洗いたいですよね。ですから、水流も強く、すすぎも脱水も長めに設定されています」
「大物・厚物コース」を使用する際のポイントは、洗剤の量を適正にすること。たっぷりの水を使うため、洗剤も水量に合わせて標準より増やす必要があります。
洗濯コースの使い分けがラクになる! 神原サリー流・かご分別&分け洗いのすすめ
洗濯機のコースをうまく使い分けるために、神原さんがおすすめしているのは「かご分別」。
普段着を入れる「標準コースのかご」、型崩れしやすいものを入れる「デリケートコースのかご」など、使うコースに合わせて洗濯かごを複数用意しておく方法です。
神原さん「シンプルですが、すごく効果的ですよ。洗濯物の種類別に分け洗いをすると、洗いムラが出にくいため汚れ落ちがよく、衣類の寿命も長くできるなど、メリットがいっぱい。さまざまな点からベストな洗濯方法の一つなのですが、難点は、洗濯物をひとつひとつ分別するのがとても面倒というところなのです」。
そこでコースごとにかごを用意しておくことをおすすめしている神原さん。
「脱ぐときに洗濯物を分別できてしまうので、分け洗いのハードルがぐっと下がります」
おわりに
特にこだわることなく「標準コース」だけを使ってしまいがちな洗濯機。でも、家電通の神原さんのお話を聞いていると、それぞれのコースの目的や設定の違いがはっきりと見えてきました。
洗い上りの良さは、適切なコース選びから。そして、コースを上手に使い分けるには、洗濯物の分別のルーティン化がポイント! これを心に刻み込んで、今日から実践してみたいですね。