フローリングのお掃除は4つのプロセス
フローリング掃除の疑問を解決するには、まずフローリングのことを良く知ること。お話を伺ったのは、ワックス・洗剤メーカーの(株)リスダンケミカル山中猛代表取締役。同社は、業務用ワックス製品を手掛けるフローリングのスペシャリストです。
山中代表によると、フローリングの掃除は、“細かいごみやホコリを取る”、“掃除機をかける”、“湿り拭きをする”、“定期的にワックスをかける”、この4つの工程が大切だそう。また、「フローリングを長持ちさせるには、日常のホコリ取りだけでなく、『定期的なワックスがけ』が必要です。ワックスをかけないと、砂ボコリで目に見えない傷がついたり、日光などでヒビ割れや変色が発生しやすくなってしまいます」とのこと。
順を追って説明していきましょう!
フローリング掃除に必要な道具とは?
フローリングの掃除には、以下の道具を使用します。全てホームセンターなどで購入できますよ。
- 掃除用ワイパーまたは部屋用のほうき
- 掃除機
- 湿り拭き用雑巾
- ワックス&ワックス用雑巾
【掃除の前に】“複合”と“単層”、フローリングの種類を知ろう
フローリングの掃除を始める前に、知っておいてほしいこと。それは、フローリングの種類です。大きく分けて2種類あり、種類が違うと多少掃除方法も変わってきます。
(山中代表)「フローリングには、“複合フローリング”と“単層フローリング”があります。前者は一般的なフローリングに使われています。賃貸の物件含め多くの一般家庭は、複合フローリングと考えていいでしょう。後者は、無垢材など質感が変化していくのを楽しむフローリングです。木にこだわりを持つ方などが選択されることが多いですね」
複合フローリングは、上の写真を見ると分かるように、合板(木のチップやベニヤ板など)の基板の上に、表面の化粧単板を貼ったもの。反りや伸び縮みが少なく、施工が簡単でバリエーションが豊かであるという特徴があります。
一方、単層フローリングは、一枚板を使って製造します。木の美しい質感と頑丈さを誇る反面、膨張したり伸縮したりしやすい特性を持ちます。上の写真を見ると、単層の方は木の密度が高く、頑丈なことがわかりますね。
一般家庭のほとんどが複合フローリングではあるものの、複合と単層を見分けるポイントを挙げるとすれば、「単層の場合は伸び縮みがするので、フローリング同士の目地(隙間)をあえて少しだけ空けています。単層は複合と比べると、『rの溝(目地)』が深くなっています」とのこと。
フローリング掃除は、ほうき・モップ掃除機(3)雑巾(4)ワックスの順に
(山中代表)「フローリングは、お化粧と同じです。素地をきれいに保たなければ、ワックスをかけたところできれいになりません」
お肌や髪の毛の手入れと同様、基本が大切なんですね。目地にホコリやチリがたまりやすいため、お掃除ワイパーだけでなく、掃除機を使いましょう。また、ほうきなどで定期的に溝を掃除し、汚れをかき出すことも忘れないようにしたいですね。
特に単層フローリングの場合は、上述したように目地をあえてあけているため、ホコリがたまりやすい構造です。部屋用ほうきでかき出したり、掃除機をしっかりかけることが大事です。
(山中代表)「モップやほうきなどで細かいホコリやゴミを取ってから掃除機をかける、掃除機をかけた後に細かいごみを取る、どちらでも構いません。肝心なのは、その後に、 固く絞ったぞうきんで“湿り拭き”をすることです。フローリング掃除をするうえで、効果的かつ簡単なお手入れ方法と言えます」
水拭き!? よく、「フローリングは水拭きはNG」なんて声を聞くのですが、大丈夫なのでしょうか。
フローリング掃除に欠かせない“湿り拭き”
(山中代表)「たしかにフローリングに多くの水分が入ってしまうと、膨れたり、反れたりすることがあります。ですが、硬く絞った雑巾の水分程度であれば問題ありません。フローリングの表面に付着した体の皮脂や食べ物の汚れなどは乾拭きでは取れません。こうしたしつこい汚れも湿り拭きならきれいに拭うことができます。週1回、気になる箇所を“湿り拭き”すれば十分ですよ」
フローリング用ウェットシートを使う場合も同様の手順で問題ないとのこと。“湿り拭き”が、フローリングをピカピカにするために欠かせないなんて、目からウロコ。フローリング掃除の手順は、複合も単層も同じです。
ただし、台所まわりなど、油汚れや黒ずみが激しい場合は、「湿り拭きではどうにもならない」そう。
(山中代表)「もしもフローリングが非常に汚れている場合、剥離剤で溶かすしかありません。個人でやるには手間がかかるので、そういった状況の場合はハウスクリーニング業者に頼んだほうが賢明だと思います」
定期的なワックスがけ(またはオイル仕上げ)を! ワックスはごしごしと塗らない!
フローリングをきれいにしたら、後はワックスがけです。しかし、ここにも留意点があります。まず、ワックスを塗る日は、天気が良くて空気が乾燥している日を選ぶこと。また、ワックスの種類もチェックしましょう。
(山中代表)「複合フローリングの場合、基本樹脂ワックスになります。ツヤを出したい人は、ツヤが出る樹脂ワックスを選んでください」
ワックスがけの道具は、いらないタオルや雑巾を一つ用意するだけでOK。
(山中代表)「まずはワックスをトレーなどに移してください。手のひらサイズに折りたたんだタオルを、びしょびしょにならない程度にワックス液に浸し、フローリングの目に沿って塗っていきます。ごしごし塗るのではなく、ワックスを塗って床面が濡れたら、その部分はもう触らず、塗ってない場所へ移動していきます。ペンキを何度もごしごし塗らないのと同じ要領です」
単層フローリングにはUVなどの表面加工がされているものと、オイル仕上げのものと2種類あります。
(山中代表)「オイルでメンテナンスをするのは、オイル仕上げ床のみです。オイル仕上げ床に普通の樹脂ワックスを塗布すると、木の呼吸を妨げてしまうので厳禁です。必ず専用のメンテナンスオイルを塗布するようにしてください。ただし単層でも表面加工がされているものは、通常のワックス塗布ができます。
一部床材の種類によっては、樹脂ワックスをかけると弾いてしまうものがあります。水溜りのように弾くため、すぐに分かると思います。その場合は綺麗に膜ができないので、ワックスをかけない方がいいでしょう」
写真のように、ワックスをかけた部分と、そうでない部分の違いは歴然。
ここで気になるのは、ワックスを使う必要性。たしかに、見た目にはピカピカで美しいけど、特に美しさを求めていない人もいるはずです。
ワックスをかける本当の目的をご存じですか?
(山中代表)「見た目の美しさではなく、ワックスをかける一番のポイントは、薄いプラスチックの膜を作ることで、フローリングを細かい傷から守ることです。樹脂ワックスは、もともと樹脂が水に溶けている状態。これを塗布することで、フローリングの上に薄いプラスチックの膜ができあがります。膜が衝撃を受け止めることで、フローリングが摩耗する速度を緩めてくれるわけです」
もともとフローリングの表面には、床材メーカーによるウレタンやUV塗装の加工がされており、一定の強度が保たれているそう。入居したての賃貸物件の床がピカピカなのは、まさに樹脂ワックスをかけたばかりだから。ところが、生活をしていく中で、フローリングはどんどん摩耗していきます。ワックスを施さないと、下の写真のように摩耗してしまうというから驚きです。
このような状況になってしまうと、フローリングそのものを張り替えなければならず、大きな出費が発生することに。単層フローリング(オイル仕上げ床)の場合も、オイルを含侵させないと、シミが残ったり、かすれたような状態になったりしてしまいます。
(山中代表)「部屋全体にワックスがけを行う必要はありません。リビングや部屋を見たときに、摩耗しやすい導線を見定めてください。人が通ることが多い廊下やキッチン、お子さまがいる家庭なら子どもたちが良くいるエリアなどは、フローリングの膜が摩耗しやすくなっています。逆に言うと、部屋の隅っこなどは、ホコリやチリこそ溜まりますが、ダメージはそれほどない。また、洗面、トイレなどで使用されるサニタリーフロアは、樹脂ワックスをかける必要はありません」
意外なことに、ワックスがけは一般的な価格の樹脂ワックスであれば、「2年に一回で十分」と話す。
(山中代表)「最近の樹脂ワックスは、非常に精度が良いため、簡単に剥がれません。欧米のような土足文化ではないため、よほど安価な樹脂ワックスでない限り2年に一度で問題ないでしょう。むしろ、年に数回もワックスをかけてしまうと、膜の上に膜を重ねていくため厚化粧のように、コテコテになってしまいます」
ホコリや髪の毛の上からワックスをかけてしまうと、そのまま塗膜してしまうことになります。さらにその上に新たな膜を張ると、その後のメンテナンスが複雑になることも。何度も繰り返しますが、「フローリングはお化粧と同じ」。きちんとゴミを取り除いてからワックスをかけることで、長持ち&きれいに保つことが可能になるんです。
摩耗の激しい部分を見定めれば、さらにワックスがけの面倒は減ります。“2年に一度のワックスがけ”だと分かると、なんだか気持ちが軽くなりませんか。単層フローリングも一年に一度ほどオイルを入れて潤せば十分。趣のある経年劣化を演出してくれます。
ちなみに、シートフロアの場合は一番上が薄い紙でできているため、ワックスを塗布すると、表面の紙がふやけてくる恐れがあるそう。たとえ塗ることができても、何かあった場合、剥離という作業が一切できない(水がつかえない)ので、ワックスは塗らない方がいいとのことです。
過剰なワックスがけはしないように
(山中代表)「ワックスをしみこませたお掃除ワイパー用のシートがありますが、何度もワックスを上塗りすることになるため、おすすめしません。また、ワックス塗膜を傷つけるような化学雑巾や薬品が付いたシートも控えてください。しつこい汚れを湿り拭きで落とす際も、中性洗剤を使うようにしてください。樹脂ワックスはアルコールやアルカリ性の強いものを使用するとワックス塗膜部分が取れてしまう可能性があります」
お天気の良い、乾燥した日であれば、30分~1時間でワックスは乾きます。もちろん、乾く前の歩行は厳禁です。
フローリングが苦手とするものは、直射日光、水濡れ、熱と乾燥 、衝撃、重み・荷重、薬品・ペットなどです。
(山中代表)「掃き出し窓などは、風雨に晒されるためどうしてもザラザラになってしまいます。日焼けこそしてしまいますが、ワックスをかけておくと摩耗しにくくなります」
また、ペットがいる方に対しても、「ワックスの膜があるだけで、直接フローリングに傷をつけなくて済みます。滑りづらいワックスもありますから、ペットに配慮した樹脂ワックスを選ぶといいでしょう。ペットがいたとしても、2年に1回程度のワックスがけで十分です」と助言します。
これらを踏まえた上でおさらいすると、
- 細かいごみやホコリを取る
- 掃除機をかける
- 湿り拭きをする
- 複合フローリングの場合は2年に一度ワックスをかける/単層フローリングの場合は1年に一度オイルを含侵させる
この4つの手順を、正しい理解を持って丁寧に行うだけで、清潔かつ長持ちするフローリング掃除が完了するというわけです。想像以上に簡単ですね。
ちなみに、床暖房対応のフローリングの掃除方法についても掃除の手順は変わりませんが、念のため使用するフローリングメーカーに問い合わせることをおすすめします。
おわりに
お掃除ワイパーと掃除機だけだと、きれいにはできるけど、長持ちさせることができないフローリング。湿り拭きでしつこい汚れを、そして、美観の視点ではなく、摩耗してるかどうかを基準に考えてワックスをかけることで、フローリングは長持ちしますよ。
頑固な汚れはプロに依頼するのもおススメ!
日々掃除をしていても、気づかないうちに頑固な黒ずみやカビが蓄積してしまった・・・という方も多いのでは。
そんな時は、一度ハウスクリーニングの専門業者にお願いしてみるのもおススメです。
東京ガスのハウスクリーニングは、自社研修を受けたプロが専用の機材や洗剤を使い分け、こびりついた油汚れやカビ汚れなどを徹底的にキレイにします。日常のお掃除では手の行き届かない、エアコンの掃除、レンジフードの掃除なども人気です。
利用した方の中には、せっかくお金をかけて綺麗にしてもらったのだから、綺麗な状態を維持しようと感じる方も多いそう。
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