静電気はどうして起きるの?
金属に触れたり、セーターを脱ぐ時に起こりやすい静電気。「ビリッ」と痛みを伴うことも多く、冬の困りごとですね。日常生活で静電気はどうして起きるのでしょうか? 「静電気」の原因や対策について、米村でんじろう サイエンスプロダクションのサイエンスエンターテイナー、チャーリー西村さん(以下、西村さん)に伺いました。
(西村さん)この世に存在する物体は、マイナスとプラスの両方の電気を持った状態です。人間はもちろん、ドアノブや洋服などすべての物体が、です。
通常、物体が持っているマイナス電気とプラス電気はそれぞれ同じ量です。この状態では、電気は安定した状態で動きがありません。ところが、日常の中で物体同士が擦れて合って摩擦が生じると、片方からもう一方へマイナス電気が移動します。これにより、物体はマイナス電気側(またはプラス電気側)に偏った状態となるのです。
このように電気のバランスが偏ると、電気は不安定な状態になり、プラス電気側(またはマイナス電気側)と結合して、元の安定した状態に戻ろうとします。これが「静電気を帯びている」状態です。静電気を帯びている状態で、物体に触ると、その瞬間に電気が流れて、触れた物体に移動します。これが「放電」と呼ばれる現象です。
冬に静電気が発生しやすいのはなぜ?
西村さんによると、電気のマイナスとプラスのバランスが崩れ、「静電気を帯びた状態になる」ことは、通年、起きているそうです。
なぜ冬だけ静電気に悩まされるのでしょうか?
(西村さん)私たちの身体は年中、マイナスかプラスの静電気を帯びた状態ですが、普段は空気中の水分や足元から徐々に放電していきます。
ところが、冬など乾燥した季節には、そのような放電ができないため、人間や物体内の電気のバランスは大きく崩れた状態になりがちです。そのため、何か物体に触れたことがきっかけで一気に放電して「バチッ」となりやすいんです。
実証! 静電気が起きる現象とは?
静電気は突発的に起こるものと思っていませんか? 西村さんによると人為的に発生させることも可能なのだそうです。実際に静電気を発生させる実験を見せていただきました。
まず、電気を通しにくいアクリル板の上に立つことで、地面から電気が逃げないようにします。
細かく割かれたビニール紐がついた帽子をかぶり、風船をマフラーで擦っては肌に触れることを数回繰り返します。すると、ビニール紐がフワフワと空中に漂います。これはビニール紐が静電気を帯びた状態になり、放電できる物体を探しているためだそう。ちなみに、ビニール紐だけでなく全身に電気が溜まっている状態なのだそうです。
ある程度電気が溜まったら、何か別のものに触ります。この時は近くにいた人の手に触れました。手に触れた瞬間、頭上のビニール紐がフワッと落ちました。これが放電が完了した証拠で、私から相手の手に電気が移動した状態だそうです。
ちなみに、相手の手に触れるのではなく、アルミホイルを持ちながら同じような実験をすると、触れた瞬間に「バチッ! 」と刺激を感じました。人間の手に比べて、アルミホイルなど金属はより電気を通しやすい性質のため、一気に放電したので感じる刺激も大きかったのです。
【手頃な静電気対策】いきなりドアノブを握らない
(西村さん)上の実験の通り、静電気を帯びた状態でいきなり金属を触ると一気に電気が流れて、バチッと強い刺激になってしまいます。
金属は電気を通しやすいので、金属以外のゆっくり電気を通す素材にまずは触れましょう。オススメは、コンクリートや土、木や紙など。壁はこうした素材のものが多いので、良いかと思います。逆に電気を通さないプラスチックやゴム、ガラスの素材では効果が期待できません。
【手頃な静電気対策】鍵など先端が尖った金属でドアノブに触れる
金属のドアノブをいきなり握るといつも静電気が起こるのに、「鍵を使って開けてからドアノブを握ったら何も起こらなかった」という経験はありませんか? 鍵が鍵穴に触れる時に静電気でバチッとなりそうなものなのに不思議ですよね。
西村さんによると、鍵が鍵穴に触れる時に、鍵の先端から一部の静電気が逃げているのだとか。これを「先端放電」と言います。そのため、鍵を開けてからドアノブを握った時に、痛みを感じにくいようです。
【手頃な静電気対策】肌と髪を保湿する
西村さんによると、冬に静電気が起きやすい原因の一つが空気の乾燥です。肌や髪が水分で潤っていれば、その水分を通して電気が空気中に放電されやすくなるので、電気を溜めにくくなるそう。
特に髪の毛が乾燥していると、静電気を溜めやすくフワフワと立ってまとまりにくくなってしまいます。
日頃からハンドクリームやトリートメントを使って、肌と髪の保湿を心掛けましょう。
【手頃な静電気対策】衣類の組み合わせに注意
冬の重ね着注意!?
(西村さん)静電気は衣類同士の摩擦によっても起こります。冬は乾燥しているので、空気中の水分に放電しにくい上に、重ね着で衣類同士に摩擦が起こり、静電気を帯びやすくなってしまうんです。ストッキングとスカートの裏地がまとわりついたり、セーターを脱ぐ時などに「パチパチッ 」と静電気が発生するのもこのためです。
素材の組み合わせを工夫して静電気を防ぐ!
衣類にはプラスの電気を帯びやすい素材と、マイナスの電気を帯びやすい素材があります。同じ性質の素材同士では、静電気が生じにくいんです。重ね着をする際には、衣類の素材に注意してみましょう。
上の図では、右の方の素材ほどプラスに帯電しやすく、左の方の素材ほどマイナスに帯電しやすくなります。中ほどの素材であるシルク・木綿・麻などは、どちらにも帯電しにくいんです。
つまり、上の図で距離が近い素材を組み合わせたり、どちらにも偏りづらい、中間の素材を取り入れることで静電気を帯びにくくなります。
例えば、ウール素材のニットの下に着る肌着なら、ポリエステルよりシルクや木綿、ナイロンを選ぶと良いということ。逆にポリエステル素材のフリースの下に着る肌着なら、同じポリエステルか、木綿・シルクなどを選ぶと良いですね。
【↑プラスに帯電しやすい素材】
・ウール (ニット・コートなど)
・ナイロン (タイツ・コートなど)
・レーヨン
・シルク・絹
・木綿
・麻
・ポリエステル (フリース・衣類の裏地)
・アクリル (セーターなど)
・塩化ビニール
【↓マイナスに帯電しやすい素材】
ただし静電気の状態は、温度や湿度、身の回りにある物などの環境で多様に変化するので、必ずしも上の通りではないそう。静電気は身近な現象なのに、まだまだ解明されていないことが多いのも興味深いですね!
【手頃な静電気対策】ゴム底の靴を避ける
(西村さん)身体に溜まった電気は、足元からも地面に逃げていきます。ところが、電気を通しにくいゴム底の靴やサンダルを履いていると、電気が逃げにくい状態となり、身体に電気が溜まってしまうのです。革などの天然素材は電気を逃しやすいのでオススメですよ。
【手頃な静電気対策】静電気防止スプレーを使う
(西村さん)静電気防止スプレーには、「水」や「界面活性剤」が含まれています。
衣類の電気が水分を伝わって空気中に逃げやすく、電気が溜まりづらくなることで静電気を防止するという仕組みです。
静電気が起きやすい組み合わせで重ね着したい場合には、静電気防止スプレーを使うといいかもしれませんね。
チャーリー西村さんに教わる! 自宅で静電気を体験してみよう!
西村さんに自宅で静電気を体験する方法を教えていただきました。ぜひ、お子さんと一緒に試してみてください!
風船を使って静電気を体験してみる
用意するもの
・風船 2つ
・マフラー
膨らませた風船をマフラーで擦ります。2つの風船を近づけると、静電気の力による反発を感じることができますよ!
静電気の反発を利用した風船ボレーも。何秒できるか、チャレンジしてみるのも面白いかもしれませんね。
静電気で空中クラゲを操る
用意するもの
・風船
・ビニール紐
・マフラー
ビニール紐を適当な長さに切って上部分を結び、細かく割きます。ビニール紐と風船をマフラーで擦ったら、空中に投げたビニール紐に風船を近づけてみましょう。ビニール紐がフワフワとクラゲのようにただよいます。
おわりに
私たちの周囲では、気づかないだけで静電気が頻繁に発生しているんですね。ちょっとした工夫で静電気の「バチッ! 」と感じる刺激を減らせるので、ぜひ試してくださいね。