なぜエコバッグが必須になったの?
令和2年7月よりレジ袋有料化が始まりました。レジ袋有料化は政府が掲げる3R政策の一環です。経済産業省では3R政策について次のように述べています。
「環境と経済が両立した循環型社会を形成していくための3つの取り組みの頭文字をとったものです。3Rは、リデュース、リユース、リサイクルの順番で取り組むことが求められています。」
1.Reduce(リデュース)・・・廃棄物の発生抑制
2.Reuse(リユース)・・・・・・再使用
3.Recycle(リサイクル)・・・再資源化
3R政策ホーム/経済産業省
こうした3R政策の一環として、まずはリデュース(ゴミの削減)を狙って、レジ袋流通を抑えるために、エコバッグ普及が求められています。
【専門家に聞く】エコバッグを普及させる意味
まずは、なぜ政府が3R政策に踏み切ったのか、エコバッグが普及するとどんな効果があるのかについて、国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)副主任研究員、中嶋亮太さんにお話を伺いました。
―― レジ袋の年間廃棄量はどのくらいなのでしょうか?
レジ袋の廃棄量は、重さでいうとプラスチックゴミ全体の2%程度と言われています。しかし、数量でみれば、年間に世界中で1兆~5兆枚ものレジ袋が廃棄されています。
―― かなりの量ですね・・・
レジ袋は言ってみれば確実にゴミになるものの一つです。レジ袋はリサイクルよりも、そのほとんどが使用後に廃棄されていると考えた方がよいです。ゴミとして集められ焼却処分されるなら、まだましなのですが、あらゆるシーンで故意ではないにしろ「環境にもれる」レジ袋が存在します。
「環境にもれる」というのは、例えばゴミとして出したゴミ袋がカラスにつつかれてゴミ収集所から出てしまったり、道やビーチなどで風に吹かれて飛んでいったり、うっかり落としてしまったりと、ポイ捨ても含めて、家庭ゴミからもれてしまうことです。
特にレジ袋は世界中で「故意ではないうっかり」そして「ポイ捨て」から、もれたゴミになっています。こうして「環境にもれる」レジ袋の多くが最終的に海や河川に行きつきます。
―― 大量のレジ袋が海に辿りつくと、どのような影響があるのでしょうか?
海面や海中に浮遊するレジ袋は、魚や亀・クジラなど海洋生物が餌と見間違えて食べてしまったり、消化管を詰まらせたりといった被害を引き起こしています。こうして海洋生物の運動機能や身体に影響が及ぶと、子孫が残せなくなったり、死期が早まったりして生態系の劣化につながります。
ビーチのゴミ拾いなどで収集されて可視化できるレジ袋ゴミの数は、場所にもよりもますが、そんなに目立ちません。しかし、海底にはたくさん見られます。
また、レジ袋はペラペラですよね? とても薄いので、たやすく劣化して、簡単にマイクロプラスチックになってしまうんです。いわばプラスチックの微粒化です。それをプランクトンや魚が食べ、ゆくゆくは人間が口にするというスパイラルが起き、食の安全も脅かされる可能性があるのです。
―― レジ袋が有料化しても、ゴミ袋として使う家庭も多いようです。エコバッグに変えることで、こうした現状に効果はあるのでしょうか?
レジ袋有料化には大きな意味があります。レジ袋が環境にもれるリスクを減らすには、レジ袋の量を削減することが最善なのです。
レジ袋を有料化することで、まずレジ袋をもらわない人が増えますよね。そうすると、レジ袋のポイ捨てや外でレジ袋を使う人が減り、結果的に街中や空気中を舞うレジ袋が減るのです。そうなれば確実に海に流入するプラスチックの削減につながります。
「エコバッグが環境にやさしいと言えるのか」と疑問視する人がいますが、エコバッグがビーチに散乱しているのは見たことはありません。
また、レジ袋をゴミ袋として使っていた家庭では、プラスチックのゴミ袋を買う必要が出るかもしれません。それでも、ゴミを捨てるために購入した袋は、ほとんどがゴミ処理場に行きます。結果的に環境にもれる量を減らすことになります。
―― 確かに購入したレジ袋は、確実に持ち帰って再利用するなど意識も変わってきました。
そもそも、日本はレジ袋の単価自体が安すぎます。アメリカでは1枚10円程度が普通。イギリスでは2021年の4月からすべての小売店で1枚10ペンス(10円程度)が義務づけられる予定です。これだけ値段が高いとエコバッグも浸透しやすいです。
レジ袋の有料化を早くから導入していたイギリスでは、現在すでにレジ袋ゼロ化を実現しつつあります。今回、日本でもレジ袋有料化が始まり、コンビニエンスストアでのレジ袋辞退が7割を超えたとするデータもあります。「レジ袋は買うもの」という意識が高まり、エコバッグが定着すれば、ますますレジ袋辞退の割合は上がり、もれるレジ袋は減少するでしょう。身近なことから意識と行動が変われば、大きな状況改善効果が生まれると思います。
レジ袋より使いやすいエコバッグの選び方
レジ袋有料化は、私たちの生活にも地球環境にも、とても有意義な政策と言えます。エコバッグの利用を習慣づけるには、3Rに対する意識、そして常に持ち歩いて愛用したくなるようなエコバッグとの出会いがカギになるかもしれません。
エコバッグといえば、以前は100円均一やノベルティ、雑誌やムック本の付録として手に入れるイメージがありました。しかし、最近はおしゃれなブランドやショップもオリジナルエコバッグを販売したり、さまざまな素材・デザインのエコバッグが出回っています。好きなブランドのエコバッグを使用したり、用途やシーンに応じて使い分けるのもいいですね。ここからは、エコバッグを選ぶ際のポイントについてご紹介していきます。
大きさ
エコバッグ選びでまずチェックしたいのは大きさです。一般的なレジ袋の中~大程度の容量があると便利です。
他にも、お弁当などを傾けずに入れられるものや大容量のものなど、用途にあわせて違うサイズのエコバッグをいくつかそろえておくといいですね。
素材
エコバッグは、気づかないうちに汚れてしまいがちです。自宅で気軽に洗える素材かチェックしておきましょう。あわせて、早く乾く素材かどうかも確認したいポイントですね。
また、生鮮食品の買い物には、防水加工や耐熱加工素材のエコバッグが重宝します。
携帯性
エコバッグは携帯性に優れていないと、持ち歩くのが億劫になるものです。薄く小さく折りたたむことができ、なおかつ折りたたみ方がシンプルなものがよいでしょう。また、重さも大事なポイントです。軽ければ軽いほど携帯が苦になりません。
デザイン
エコバッグのデザインは多様化しています。素材や形とともにデザインも工夫され、メインのバッグとして使えそうなものもたくさん出回っています。
男性が使っても違和感がない落ち着いた色や柄のエコバッグを選べば、家族で共有できたり、仕事中や外出時など、いざという時のサブバッグとしても使えますね。
便利なエコバッグはどのタイプ?
最近のエコバッグは、一般的なトートバッグ型やレジ袋型以外にもさまざまタイプがあります。では、どんなタイプのエコバッグが使いやすいのでしょうか? タイプ別にご紹介していきます。
トートバッグ型
エコバッグの中でも代表的なのが、トートバッグ型のエコバッグです。おしゃれな柄やブランド物も多く、「個性が出しやすい」「選び甲斐がある」といった点も。その日のコーディネートに合わせて、サブバッグとして持ち歩いている方も多いでしょう。
反面、持ち手の長さやマチを確認せずに購入すると使いづらい場合があります。洗いやすさとともに、サイズ感をよく確認して購入しましょう。
レジ袋型
レジ袋型のエコバッグは小さく折りたたむことができ、広げるとマチに余裕があります。携帯しやすいので普段愛用中のバッグにそっと忍ばせている方も多いでしょう。ただし、使用後にしっかり折りたたまないといざ使う時にしわだらけといったことが起こりがちです。
きんちゃく型
きんちゃく型のエコバッグは、大容量でも小さく折りたためるよう工夫されたタイプが多いようです。容量と携帯性を兼ね備えているといえます。バッグの口を紐で締められるため、ついつい買い物の量が増えがちな方にはおすすめです。ただし、折りたたみ方が少々複雑というものもあります。
レジかご型
レジかごにそのまま装着して使えるのが、レジかご型のエコバッグです。以前は、いかにも「食品の買いだし用」といったイメージでしたが、最近はおしゃれなデザインが増えてきました。自転車かごにも合うサイズ感のものが多いので、自転車ユーザーにも人気があるようです。
大容量なので、たくさん買い物したい時に便利です。また、底面が平らなので、詰めた商品が安定しやすく、生鮮食品などの買い物に適しています。保冷機能がある素材を使用した物が多いのも魅力ですね。
リュック型
リュック型のエコバッグの魅力の一つは両手があくことです。雨の日やお子さんと買い物に行く場合などに便利です。また、広げると大容量なタイプが多いので、旅先などでも重宝しますね。
おわりに
レジ袋有料化が、どのように環境問題につながっているのか今一つ実感がないという方もいらっしゃるかもしれません。しかし、実際にエコバッグが定着することで、レジ袋のゴミ化やマイクロプラスチック化を防ぐことにつながります。
ライフスタイルやファッションに合うエコバッグで一人ひとりがエコ生活を実行できるとよいですね。
参考:経済産業省「3R政策について」
参考:環境省「環境省の最近の3R行政について」