日本の食品ロスは、世界全体の食料援助量よりも多い!?
食べきれなかった残菜や期限切れで捨てられてしまう食材など、日本で1年間に出る食品ロスは、約523万トン(令和3年度推計)。
一方、国連が飢餓に苦しむ人々のために世界中へ援助している食料は約440万トン(2021年)。その1.2倍にものぼる大量の食品を、日本という一つの国だけで捨てている計算になります。
なぜこれほどに食品ロスが多いのでしょう? 大きく分けて3つの原因があると井出さんは言います。
出典:消費者庁「食品ロスについて知る・学ぶ」
【食品ロスの原因1】賞味期限を過ぎて捨てる《直接廃棄》
日本の食品ロスの内訳は、47%が家庭から、53%が企業から出ています。「家庭から出る食品ロスの割合が高いのも日本の特徴です」と、井出さんは言います。
家庭や企業から出る食品ロスの多くは、賞味期限が過ぎたことにより、そのまま捨てられてしまう直接廃棄ごみ。賞味期限が切れたものは食べられないという誤解が、多くの食品ロスにつながっています。
井出さん「お店で売られている商品には、賞味期限や消費期限のずっと手前に“販売期限”というものも設けられています。これを過ぎたものは棚から撤去され、廃棄されることになります。また、日本では、前日に納品した同じ商品より1日でも日付が古い商品はお店に納入できません。この独特のルール、日付後退品も、食品ロスを増やす一因となっています」
出典:消費者庁「食品ロスについて知る・学ぶ」
【食品ロスの原因2】皮をむき過ぎたり可食部を捨てたりする《過剰除去》
食べられる部分まで捨ててしまうことを「過剰除去」といいます。
日本の食品ロス523万トンは、魚の骨や野菜・肉の腐敗部分など「食べられない部分」は省かれた数字です。ちゃんと食べられる食品が、年間523万トンも捨てられているわけです。しかも、この523万トンには、畑で捨てられる農産物や、備蓄食品の入れ替えで処分されるものは含まれていません。
野菜の皮を厚くむき過ぎない、果物は丸ごと1個捨ててしまわずに傷んだ部分だけを取り除くなど、生鮮食品の下ごしらえにも食品ロスを減らすという意識を持って取り組みたいですね。
【食品ロスの原因3】作り過ぎて余らせる《食べ残し・過剰製造》
農林水産省の調査では、食卓に出された料理を食べ残した理由で最も多かったのが「料理の量が多かった」(71.7%)でした(平成21年度食品ロス統計調査)。
たくさん皿数が並ぶと食卓は華やぎますが、残るほど大量に作るのは考えもの。作り過ぎたかな、ちょっと多いかなと感じたら、箸をつける前に取り分けて保存する習慣を身に付けたいものですね。
京都大学と京都市の調査によると、平成29年に捨てられた生ごみのうち、手つかずの食品は全体の45.6%を占めたそうです。つまり、食べ残しのうちほぼ半分は、手を付けることなく捨てられた「まだ食べられる」もの。そう思うと、とてももったいない話です。
出典:農林水産省「平成21年度食品ロス統計調査報告」
食品ロスはどんな問題につながるの?
食品ロスは、どんな問題につながっているのでしょう。ごみが増える=焼却するのに化石燃料を使う=地球環境にやさしくない、ということはなんとなくイメージできますが、その他にもさまざまな問題があります。
【環境負荷が上がる】ハンバーガー1個廃棄で浴槽15杯の水がムダになる
ハンバーガーを1個つくるには、大量の水が必要です。例えばパン、牛肉、レタス、トマトの4種類を使ったハンバーガーだとして、それらを生産するために使われる水の量は、1個につき2400リットル、または、3000リットルとも試算されています。
井出さん「使う水が3000リットルだとすると、家庭のお風呂(200リットル)で換算すると15杯分です。ハンバーガーを1個捨てることは、それだけ水をムダにしてしまうということなんです」
1キロのお米を生産するにも3000リットルの水が必要。牛肉を1キロ生産するためには、2万リットルもの水が必要とか。食べものの生産・製造には貴重な水資源が大量に使われているという点も、忘れてはいけないポイントですね。
【価格が上がる】捨てるためのコストをあらかじめ払っている
井出さん「スーパーやコンビニの棚をいっぱいにしておくためのコストも、まわりまわって私たち消費者が払っていることを、ご存じでしょうか? 売り場で欠品させないように、たくさん作って余らせるという選択をする企業も少なくありません」
残った期限切れ商品は最終的には処分されるため、そのコストも価格に含まれていきます。
【税負担が上がる】食べ残しのごみ処理費は1キロ当たり59円
レストランで、あれもこれもとたくさん注文してしまうことはありませんか。
食べ残した料理の多くは、各自治体のごみ処理場で焼却処分されます。処分費はレストランも払いますが、私たちが納めた税金も使われます。
井出さん「例えば、東京都世田谷区の場合、食べ残しを含む事業系一般廃棄物の処理に1キロあたり59円かかっています(令和元年度)。ごみを増やすと自分たちの税金負担分も増えることを意識しておきたいですね」
【食品ロスを減らす対策1】賞味期限が近づいているものから買う
食品を棚から取るとき、奥のほうから日付が新しいものを手に取っていませんか。
井出さん「棚の奥から取ってしまうと、賞味期限が近づいたものだけが残ってしまい、廃棄の対象になってしまいます。そうすると、その処分費は結局、割高な価格となって消費者に跳ね返ってきます。食品は必ず賞味期限が近いものから取りましょう」
賞味期限が3カ月以上のものは「〇年〇月〇日」と日付まで示さず、「〇年〇月」と日付の表示を省略することができるので、最近は年月表示のものが少しずつ増えてきました。これも食品ロスを減らすための取り組みとか。
賞味期限を過ぎても多くの食品は食べることができます。賞味期限の誤解については、こちらの記事もご参照ください。
賞味期限と消費期限って何が違うの? 賞味期限が近いほどおいしい食品とは?
【食品ロスを減らす対策2】食育を見直す
日本の小中学生は、年間で1人7キロもの給食を残しているそうです。7キロのお米を炊くと、なんとお茶碗92杯分にもなります。
井出さん「給食を残さないよう、食育で食品ロスについて学ぶことも大切です。東京都足立区では給食の食べ残し問題を解決するために、給食時間をしっかり確保したり、おいしい給食グランプリを開催したりするなどして、10年間で残菜率をおよそ7割も減らしました」
海外では、スウェーデンやイギリスで「食品の腐ったニオイ」を消費者に周知させる取り組みも進んでいます。賞味期限の表示にとらわれず五感で判断する力をつけるため、牛乳が腐ったニオイを嗅げる香水や、こすると描いてある食品の腐ったニオイが出るカードなどが開発されています。
【食品ロスを減らす対策3】空腹時に買い物に行かない
空腹状態で買い物に行くと、金額ベースで64%も多く買い物をしてしまうというデータがあるそうです。
井出さん「ミネソタ大学の教授が発表したデータですが、お腹がすいていると、ついあれもこれもとまとめ買いをしてしまいますよね。まとめ買いは結局余らせて捨てる…ということにつながりますので、お買い物の前は甘い飲み物などをお腹に入れて、空腹感を抑えてから出かけるといいですよ」
必要以上に買い過ぎないことも、食品ロスを減らす大切なポイント。お買い物前の一工夫で、回避したいですね。
【食品ロスを減らす対策4】コンポストを取り入れる
家庭の生ごみや落ち葉などを、微生物の力で発酵・分解させて「たい肥」をつくるコンポスト。ごみの量を減らすだけでなく、自然に還して有効活用することができる、地球にやさしい生活の知恵です。
キッチンやベランダで気軽に挑戦できる、便利なキットも発売されています。
【食品ロスを減らす対策5】フードバンクやマッチングサービスを活用する
賞味期限が近づいた食材は「フードバンク」や「フードドライブ」に寄付をすることで、食品ロスを減らしながら地域貢献をすることもできます。「フードバンク」は1都道府県あたり2~3か所ですが、「フードドライブ」は大手コンビニも取り扱い窓口になるなど身近な存在になりつつあります。官・民を問わず、さまざまな取り組みが始まっているのですね。
おわりに
日本の食料自給率は30%台。海外から大量の食べ物を輸入し、大量に捨てているのが、日本の食品ロスの現状といえます。食品を輸入する場合、「フードマイレージ」(移動距離×重さ)という指標があります。食品を運ぶことでどれくらい環境負荷があるかを測ることができるそうですが、日本は一人あたり6628トン・キロメートル。世界でもトップクラス(ワーストクラス!?)に環境負荷が高い国なのだそうです。大量に作って大量に捨てるという日本式のサイクルを打破するためにも、毎日の生活から食品ロスを減らす行動をしていきたいですね。
出典:井出留美「捨てられる食べものたち 食品ロス問題がわかる本」