間接照明とは?
光は、私たちの暮らしにとって欠かすことのできないもの。昼間の自然光はもちろん、夜に灯す「照明」も安全と健康のためにとても大切な要素です。住まいの照明には、部屋全体を照らし夜間の視認性を確保する直接照明と、光と影の織りなすコントラストや雰囲気を楽しむのに用いる間接照明があります。
「日本のご家庭でよくある天井に一灯だけの直接照明は、高い位置から部屋全体を照らすため、単調な空間になりがちです。高低差をつけて必要なところを照らし、暗がりも残す多灯照明の考え方で、間接照明を上手に使うことをおすすめしたいですね。間接照明を取り入れることで、日中の自然光で過ごすシーンと夜のシーンを切り替えたり、使い方次第で空間をさまざまに演出することができます」と話してくれたのは、リビングデザインセンターOZONEにある「家design」でインテリアコーディネートを提案する川端さん。
今回は、部屋別におすすめの間接照明の使い方の事例を交えつつ、間接照明の上手な取り入れ方について、川端さんに教えていただきました。
部屋・空間別おすすめ間接照明の使い方事例
住まいに間接照明を取り込んで心地良さを感じるには、そこに住む人と部屋の内装や家具・建具など、さまざまな要素の調和が大切です。では、実際にどうすればよいのでしょうか?
【玄関・廊下】~奥行きやコーナーを演出~
玄関とそこから続く廊下は、訪問する人が家の印象を最初に捉える顔としての役割があります。日中でも照明をつけなければならないほど暗くなりがちなので、人感センサー付きのフットライトといった間接照明を使って、明るさを補いましょう。
また、廊下や突き当たりの壁にブラケットを設置して光で照らすと、暗がりが無くなり安心感と奥行きが生まれます。アートや観葉植物などを飾るコーナーがあれば、スポットライトを使うことで華やかな光のオブジェが出来上がります。
【リビング】~シーンに合わせた雰囲気を演出~
リビングは、来客を通したり家族が団らんの時間を過ごしたりと、家の中で人が集う場所。その時々のシーンや、使い方に合わせた間接照明を用いるのがポイントです。
テレビやプロジェクターで雰囲気あるホームシアターを実現させるなら、画面やスクリーン両脇の背面から壁上部に向けて照らす照明で演出します。ホームパーティーをするなら、ソファそばのティーテーブルや、キャビネットの上にテーブルスタンドを配置しましょう。
「間接照明を部屋の中のアイコンとして、フォーカルポイントに。人が集うときは華かなライティングにして、ゆっくりお酒を楽しむときは明るさを抑えて」と川端さん。
【ダイニング・キッチン】~手元を明るく照らし、食卓を彩る~
ダイニングでは、テーブルセッティングや料理をおいしそうに見せる演出に効果的な照明を選びます。
ペンダントライトを使用することが多いですが、ダイニングテーブルの大きさ、部屋の広さや天井の高さとシェードの大きさとのバランスを考えるのがポイント。圧迫感が出てしまう場合は、ペンダントライトの代わりにスポットライトを使うのもおすすめです。
ペンダントライトでもスポットライトでも、ダクトレールを使用するタイプを選ぶことで、照明の位置を自在に調節できるため、テーブルの人数に応じた使い方もできて便利です。
キッチンでは、火や刃物を使う作業をするので、キッチン全体を明るく照らす直接照明以外に、手元を照らす照明が必要です。照明の色みも、ダイニングやリビングとそろえることで統一感が生まれます。
【寝室・ベッドルーム】~就寝前の美しい光で「暗さ」を楽しむ~
寝室は眠るための空間。良質な睡眠の確保には、寝室の環境を整えることが重要です。心地良く眠りにつく環境とは、まぶし過ぎず刺激の無い照明が不可欠なことはもちろん、一日の疲れを癒やすようなリラックス効果のある、柔らかく温かな光であることも大切です。
就寝前に読書をする習慣があるなら、シーリングライトなどの直接照明は調光機能で部屋を暗くし、手元のみ照らす読書灯をベッドサイドに置いて使うのがおすすめ。また、夜中にトイレに行くときのために、足元だけ照らすライトがあると便利です。
目がさえて眠れなくなることを防ぎ、再び安眠・熟睡へ誘う灯り。疲れている体や脳を、就寝前の美しい灯りで癒すことで眠りの質の向上へとつなげます。
【和室】~フロアランプで座位視点を意識した空間づくり~
洋室と違って天井や壁、畳の色が茶やグレー、深い緑色といった暗めで渋い色みが多いのが和室です。直接照明の一灯だけだとさらに暗く平坦になりがちなので、床に座った時の視線の位置に合わせて、低い位置にフロアランプの間接照明を用いるとくつろげる空間になります。また、シェード素材も和紙を使ったデザインにすると、和室全体に統一感が生まれます。
和室を寝室にしていたり年配の方の個室にしていたりする場合は、畳の上に布団を敷いて眠ることも。照明は、手元でリモコン調節・操作できるタイプにしておくと便利です。
【子ども部屋】~目に優しく、成長に合わせた落ち着く灯り~
子ども部屋の間接照明は、手元に陰影をつけず集中力をアップさせるデスクライトと、ベッドサイドに読書灯などを設置するのがおすすめです。小さなお子さんは目や脳も発達段階のため、目に優しく落ち着く灯りを選ぶとよいでしょう。
【トイレ・洗面所】~狭い空間を広く・天井を高く見せる演出~
トイレは比較的狭い空間で、窓が無かったり直接照明のみを使用していたりすることが多くあります。光を隅に当てると空間が膨らんで見えるので、ブラケット(壁照明)を使うのがおすすめです。
空間の使用頻度が高く、スイッチのONとOFFを繰り返すので、すぐ点灯するランプや人感センサーなど自動で消灯するタイプの照明にすると、消し忘れなく省エネにもなります。
洗面所は、スキンケアやヘアケア・メイクアップと、大きな鏡を使用する機能性重視の空間です。そのため、間接照明は鏡の周りに効果的に配置して、顔映りや肌を明るく美しく見せる使い方が求められます。
【書斎・ワークスペース】~集中力や効率を促すライト使い~
パソコン操作や読み書きといった手元作業を行うワークスペースでは、キッチンと同様に空間全体を照らす直接照明以外に、手元を照らすデスクライトが必要です。手元に影ができにくい角度で、目が疲れにくく作業に必要な明るさを確保しましょう。
知っておきたい間接照明の基礎知識!
間接照明を選ぶ前に、まずは知っておきたい照明についての基礎知識です。間接照明は、設計デザインの段階から組み込むタイプのものと、スタンドやランプといった後から追加するタイプ(照明器具そのもの)の2つに分かれます。
設計デザインに組み込む場合は、照明器具そのものは隠れて見えないようにするのが特徴です。一方、スタンドやランプなどで間接照明を楽しむ場合は、好きなデザインのものを選べたり、インテリアやシーンに合わせて気軽に替えたりできるのが特徴です。
ここでは、後から追加できる照明器具についてご紹介します。
間接照明におすすめな照明器具とは? インテリアやシーンに合わせて変幻自在
間接照明におすすめな照明器具には、天井からつるすタイプや置くタイプ、壁に取り付けるタイプなど、さまざまな種類と特徴があります。それぞれ見ていきましょう。
【ペンダントライト】
コードなどを使って天井からつるすタイプの照明。照明器具自体のデザイン性が高いのが特徴です。ペンダント形式でテーブルを照らすだけでなく、美しいシェードが空間のアクセントとなります。部屋全体のバランスを考えて照明器具のデザインとサイズを選びましょう。
【スタンド】
床に置くフロアスタンドや、家具の上に置くテーブルスタンドなど、ポータビリティーがあるのが特徴です。
【スポットライト】
天井や壁に取り付けられ、照らす場所や方向・範囲を変えられるのが特徴です。クリップ式でシェルフなどに取り付けられるタイプもあります。
【ブラケット・ウオールランプ】
壁に取り付けられるデザイン性の高い照明器具。光を拡散させたり、上下方向を照らして奥行きを演出できたりといった特徴があります。
間接照明の効果とは? おしゃれ空間・リラックスタイムを演出
「オフィスでは、作業スペースに必要な照度を確保しているので明るく設定されています。リラックスするために仕事場の照明環境と住宅の照明環境を変えた方がよいでしょう」と川端さん。
空間に求めるのは、リラックスなのか、おしゃれな雰囲気を出したいのかなど、シーンによって間接照明の使い方・効果は異なります。温かで柔らかく優しい光には、緊張感を解きほぐしほっとする効果が。また、ほの暗い部屋に浮かぶ灯りはドラマチックな雰囲気が味わえます。
おしゃれな間接照明を選ぶポイントは?
照明は、光と影のバランスでおしゃれを演出することが可能です。空間に奥行きや高低差を出し、立体感を印象づけることで、ドラマチックな雰囲気や、落ち着いたくつろぎ感をアップさせることができます。
空間・インテリアとの照明プラン
間接照明の使い方は、空間全体のインテリアとのトータルバランスが大切。照明器具のデザインやスタイルはもちろん、カーテンなどのファブリック類の色みは照明の色によっても微妙に変化します。昼間の自然光の中で見るのと、照明をつけて見るのではファブリックの色は違って見えるからです。
また、スポットライトをカーテンに向けて当てることで、ふんわりとした優しい光が広がる演出もできます。
その他、観葉植物や生けた花・小物などのアイテムと間接照明を組み合わせて飾ると、おしゃれなディスプレイに早変わり。LEDを使ったランプは発熱しないので、対象となるものを熱で痛めにくく安心です。
間接照明を使ったおしゃれな演出のコツ
例えば、テレビやソファの後ろ、ベッドの下に隠すホリゾンタルライトといった照明器具を設置して、床面や壁面、天井面を明るく照らすことで開放感や雰囲気ある空間を演出します。
設計デザインを変更しなくても、天井にダクトレールを取り付けたり、コードレスタイプのランプを配置したりといった方法で照明器具を取り付けることも可能です。ダクトレールに、ペンダントライトやスポットライトを複数台取り付けて照らす方向を変えることで、おしゃれな雰囲気を味わえます。
配線やコンセント位置などが難しい場合の間接照明演出方法
間接照明を置きたい場所に、コンセントが無い場合はどうすればよいのでしょうか。「デザイン性も高く、コンパクトで使いやすいポータブルタイプが多くラインアップされています」と川端さん。
ポータブルタイプはプラグが不要なので、ベランダやエクステリアなど屋外にも持って行けるのもメリットです。また、ソーラー充電式タイプのライトならバッテリーの交換も不要。エコスタイルで日常使いしながら、災害時に備える非常用光源にもなります。他にも、吹き抜け空間には昇降タイプの間接照明を取り付ければ掃除も可能です。
おしゃれな間接照明人気ブランド・メーカー3選
スタイリッシュなデザインの照明一つで、何気ない空間をドラマチックに演出します。電源に依存しないアンプラグド・充電式ポータブルランプで、手軽にお気に入りの空間と時間を楽しみましょう。
louis poulsen「Panthella-Portable(テーブルランプ)」
直径160mmのコンパクトなテーブルランプ。USB経由で事前に充電しておけば場所を選ばず、どこへでも好きな場所に移動して使うことができます。
LE KLINT「candlelight(キャンドルライト)」
北欧デンマーク生まれの充電式キャンドルライト。本物そっくりに揺らぐ炎のようなLEDライトで、いつでもどこでもほっと癒やされる居心地の良い空間を演出します。
FLOS「BON JOUR UNPLUGGED OPTIC (フロス ボンジュール プラグ無ポータブルスタンド)」
最長6時間の点灯が可能なコードレステーブルランプ。スタンド本体とシェードのバリエーションが豊富で、好みやシーンに合わせてコーディネートも可能です。
住まいのご相談はOZONE家designへ
リビングデザインセンターOZONEでは、住まいづくりのサポートメニュー「OZONE家design」をご提供しています。住まいづくりコンサルタントが、新築・建て替え・リノベーションなど、お客さまそれぞれの家づくりのご要望に合わせてご対応します。
「リビングデザインセンターOZONE」とは
「リビングデザインセンターOZONE」は、新宿パークタワーの3~7Fに展開する「住まいとインテリアの情報センター」。
家具や生活用品、住宅設備、建材まで、個性豊かなショールームとショップ、住宅デザインの書籍や製品カタログを集めたライブラリーなどの情報フロアで構成されています。
毎日を快適に、暮らしが楽しくなるような住まいの実現に向けて、セミナーやワークショップなどの他、コンサルティングを重視した専門家による家づくり支援やインテリアデザインのプログラムを実施しています。ぜひ、お越しください!
リビングデザインセンターOZONE
◆住所:東京都新宿区西新宿3-7-1 新宿パークタワー内
◆電話番号:03-5322-6500(代)
◆営業時間:OZONE 10:30~18:30
◆休館日:水曜日(祝日除く)・夏期・年末年始
※ザ・コンランショップ 新宿本店、OZONEパークサイドオフィスは休館日が異なります。
おわりに
間接照明とはどういったものか、空間別の取り入れ方、選ぶ際のコツやポイントをお伝えしました。安全や健康に配慮した効果に加えて、おしゃれなことはもちろん、シーンや目的に応じた使い方、経済性・メンテナンスのしやすさも大切。「LED使用が照明器具商品の90%以上とほとんどになっているので、約10年はメンテナンスの手間が掛かりません」と川端さん。
照明器具も進化しているので、住まいや暮らしに合った間接照明の効果的な使い方を取り入れて、生活の質をさらにアップさせましょう。