【ニット洗濯の方法1】“家庭洗濯”ができるか、洗濯表示でチェック
「『1洗濯表示を確認』『2洗う準備』『3実際に洗う』『4干す』。ニット素材を洗う際は、この4つの手順を覚えておいてください」
そう教えてくれたのは、ライオン株式会社の大貫和泉さん。繊維製品品質管理士、健康予防管理専門士などの資格を持ち、洗濯用洗剤などの製品開発・調査に約20年携わってきた“お洗濯マイスター”。洗濯のプロ中のプロです。
(大貫さん)「大前提として、自宅で洗えるかどうかの基準となる“家庭洗濯”の洗濯表示があることを確認してください。表記がなかったり、×印が付いている場合は、手洗いを含め自宅で洗うことはできません。その際は、クリーニング可能なマークがあるか確認し、クリーニング業者に出してください」
洗濯機の中に水が溜まっている上図マークが、洗濯表示の中で家庭洗濯ができるかどうかのマーク。
- 左図のように「×」があれば、家庭洗濯ができないことを意味します。
- 中図の「30」は、「水温(液温)は30℃を限度とし、洗濯機で洗濯ができる」ことを示します。40と書いてあれば40度が限度になります。
- 右図は「手洗いができる」ことを指します。
(大貫さん)「平成28年12月より現在の新しい洗濯表示に切り替わりました。それ以前の衣類は、旧絵表示のままなので、注意してください。旧絵表示では、手洗い表示は“手洗イ”と明記されているなど、違いがあります。インターネットでも調べられる他、弊社の『これ洗える?』アプリで調べれば従来の絵表示と、新洗濯表示を見比べることもできます」
上のように「家庭洗濯」の下に2本の棒線が引いてある図は、手洗いコースやドライコースなど弱水流コースで洗濯することを推奨しているマーク。
「左から右」の矢印は洗濯の強さを表します。右に行くほど、優しく扱うこと(弱水流や手洗い)が望ましいという意味です。
※棒線2本の場合は、標準コースではなく、「ドライコース」「おうちクリーニング」など弱水流のコースを指定して、洗濯機を回します。メーカーによって呼称が異なるのでご注意ください。
【ニット洗濯の方法2】洗う準備(1)洗剤は“おしゃれ着用の中性洗剤”を
洗濯表示の見方が理解できたら、洗う準備を整えましょう。
棒線2本の表記がない場合でも、「ニット素材を自宅で洗濯する場合は、おしゃれ着用の中性洗剤を使ってください」と大貫さん。
(大貫さん)「弊社で言えば、アクロンがおしゃれ着用洗剤になるのですが、おしゃれ着用洗剤は、弱水流でも十分汚れが落ちるように開発されています。またそれだけでなく、おしゃれ着用洗剤には色あせ、型崩れ、毛玉、テカリ防止効果も含まれています。洗濯後に保管し、キレイな状態で着用するには、おしゃれ着用洗剤を使用した方が良いということです。『ニットを洗う場合は、おしゃれ着用洗剤』と覚えておいてくださいね」
また、しつこい汚れやシミを落としたいという人も多いはず。漂白剤はどのように使ったら良いのでしょうか?
(大貫さん)「液体タイプの酸素系漂白剤を使用することです。塩素系漂白剤は真っ白になってしまい、粉末タイプの酸素系漂白剤は毛・絹はNGです。液体タイプの酸素系漂白剤は、気になる汚れに直接塗布できるだけでなく、除菌や抗菌効果があるため、部屋干しをする際にも適しています」
『おしゃれ着用洗剤×液体タイプの酸素系漂白剤』。これぞ「自宅洗濯でニットを長持ちさせる鉄則」と覚えておきましょう。
【ニット洗濯の方法3】洗う準備(2)襟元や袖元が外側にくるようにたたみ洗濯ネットへ
使用する洗剤が分かれば、次は洗い方ですが、その準備段階で「洗濯ネットに入れる際のたたみ方」にも大事なポイントがありました。
汚れがちな襟元や袖元、すそが外側にくるようにたたむ
(大貫さん)「半分に折って、袖の部分を内側に折り返します。それをもう一度、折りたたみ、最後に手首を返してください。こうすることで、汚れがちな襟元、袖元、すそが外側に出ます。この形のまま、洗濯ネットに入れてください。汚れやすい箇所に洗剤と水がよく当たって汚れが落ちやすくなるんです。ビーズが付いているニットや毛の長いアンゴラニットは、裏返しにしてから同じようにたたんでネットに入れると良いですよ」
醤油のシミなどがニットに付いてしまった場合には「洗剤の直塗り」
(大貫さん)「また、ファンデーションなど化粧品の汚れが付いた部分に関しては、直でおしゃれ着用洗剤を。醤油などの食べこぼしの汚れが付いた部分は、液体タイプの酸素系漂白剤を塗って叩くようにしみこませると良いですよ。ただし、これらの前処理はたたむ前に行うように」
醤油をこぼしてしまったニットで試してみると――。
直塗りからわずか数十秒で、汚れが浮いてくる様子が分かります。子どものニットなどは汚れやすいもの。この直塗りテクニックを利用するだけで洗濯後の仕上がりがまったく変わってきます。
そして、先述したように洗濯機のコースは通常コースを選ばないように注意しましょう。メーカーによって、「ドライコース」「おうちクリーニング」「手洗いコース」など呼称が変わります。おしゃれ着用洗濯が何コースに相当するのか、取扱説明書やメーカーのホームページから確認してみるといいでしょう。
ちなみに、先の醤油をこぼしてしまった白ニットをドライコースで洗うとご覧の通り!
なんと真っ白な姿に元通り! きちんと洗えば、驚くほどに汚れが落ちるので、何かをこぼしてしまっても、焦る必要はありませんね。
注意! 泥汚れがニットについてしまった場合はまず洗剤を!
もし泥汚れが付着した場合は、「最初におしゃれ着用洗剤を塗布してください。最初に水で予洗いをしてしまうと、泥が繊維の中に入り込み落ちにくくなるだけです」と大貫さん。
まずは、「おしゃれ着用洗剤を直塗り! その後に水で予洗いをする(または洗濯機に投入)」という手順を頭に入れておきましょう。
【ニット洗濯の方法4】手洗いをする時は押し洗い。こするのはNG
一方で、わざわざ洗濯機を回したくないという人もいるはず。“家庭洗濯”ができる衣類であれば、もちろん手洗いも可能となります。その際に気を付けることは?
(大貫さん)「洗面器などに水、またはぬるま湯をはって、そこにおしゃれ着用洗剤を入れます。そこに、先ほどお伝えしたたたみ方のまま、衣類を入れ、押し洗いをしていきます。汚れが気になる箇所があれば、洗面器に入れる前に、洗剤の原液を直に叩くように塗っておきましょう」
(大貫さん)「一つの角を10回ずつ押すように洗ってください。最後に、中央部分を10回ほど押し洗いします。計50回の押し洗いで十分。その後、すすぎをするためにきれいな水で、同様に計50回の押し洗いを。中の洗剤が抜け切るよう、すすぎは2回ほど行うようにしてください」
(大貫さん)「袖口を洗う際はグーパーするように『つかみ洗い』だけで大丈夫。袖口を含め、こすり合わせて洗ってしまうと縮んでしまいますので、気を付けてください」
水分を絞る時のコツはあるのでしょうか。
「絞る時はねじって絞るのではなく、押し出すように水を抜いてください。まずは乾いたバスタオルなどに衣類を寝かして上から押し、水を抜き取るようにします。洗濯機で脱水するなら短時間に留めましょう」
【ニットの干し方】日陰で平干し
最後に、干し方でも心がけておいてほしいことがあります。
(大貫さん)「ハンガーに吊るすと、肩や袖が伸びてしまうため、平干しがおすすめです。ロングカーディガンなどは、ハンガーを3本使ってM字に干すなど、『重みを一点に集中させず、分散させる』ようにしてください。100円ショップなどで販売している部屋干しネットも重宝しますよ」
干す場所にも注意が必要です。
(大貫さん)「日向に干すと色あせの原因になってしまうので、日陰に干しましょう」
そして、あとは乾くのを待つだけ! おさらいとすると、
- 自宅で洗えるか、“洗濯表示を確認する”
- 洗剤選び、汚れの前処理、たたみ方などの“洗う準備”
- 手洗いを含むコースの選択をして実際に“洗う”
- 色あせ、型崩れを防止して“干す”
この4つの手順を丁寧に行うだけで、実は家庭でも簡単にニットをキレイに洗うことができるのです。
(大貫さん)「適当に洗ってしまうと、縮んだりヨレてしまったり、毛玉が発生してしまいます。紹介した手順を踏まえて洗濯を行えば、ニットも長持ちするので、ぜひ試してみてください」
おわりに
気に入っているけどクリーニングに出すほどじゃない・・・そんなニットを持っている人は少なくないはず。大貫さんが教えてくれた自宅で洗える4つの手順を実行すれば、自分で洗っても長く愛用できること間違いなしですよ。
取材協力:ライオン社Lidea「ニットの洗い方」