鍵を持たせてよい年齢は、何歳ごろから?
子どもに鍵を持たせるタイミングは、何歳ごろが適切なのでしょう?
著書に『比べない子育て』(1万年堂出版)『子どもの能力を決める0歳から9歳までの育て方』(KADOKAWA出版)などがある家庭教育研究家の田宮由美さん(以下、田宮さん)によると、「鍵を持つ年齢は人によってまちまち。何歳ならOKというわけではない」そうです。
田宮さん「鍵が大事なものだと感じられるかどうか、責任感を持てるかどうかは、個人差があります。”〇歳になったから持たせよう”という発想ではなく、いつごろから鍵を持たせる必要があるかを逆算して、親子で準備をしましょう。
例えば、小学1年生で鍵を持つ必要があるのなら保育園や幼稚園のころから、小学3年生など学童保育が終わるタイミングで留守番デビューをするならその前から、鍵が大切なものであることを親子で話す、お留守番の練習をしていくなどの準備をしておくのが大事です」
鍵を持つ時期=ゴールを設定して、最初は10分、20分程度の留守番をスタート。鍵を開ける練習などもしながら、時間をかけて親子で取り組んでいくのがいいそうです。
子どもに鍵を持たせるリスクとは?
子どもに鍵を持たせることには、どんなリスクがあるのでしょう?
リスク1:鍵を無くしてしまう
学校で友達と遊んでいる間に紛失したり、公園で遊んでいるときにポケットやカバンから鍵を落としてしまう、などのリスクがあります。マンションの集合玄関の鍵などは、紛失してしまうと高額な賠償が必要になるケースもあります。
リスク2:不審者につけられてしまう
鍵を持っていると「家におうちの人がいない」と分かってしまうため、不審者に後をつけられたりするケースがあります。
リスク3:鍵を忘れて家に入れなくなってしまう
登校時に鍵を忘れてしまうと、親が外出で施錠をした後、家に入れなくなってしまいます。親が帰るまで外で待つのは、年齢が小さい子にとってとても不安なことですね。
【子どもの鍵の持たせ方1】キーケースでランドセルに固定する
鍵の紛失を防ぐために、鍵の保管方法も、親子で話し合って決めておく必要があります。
田宮さん「子どもはどうしても大人ほど小物の管理が上手にできません。鍵は"ここに置く""ここに入れる"と保管場所を一つに決め、その場所からあまり動かさないようにするのが原則です」
田宮さんのおすすめは、キーケースやキーチェーンなどで、ランドセルに鍵を固定してしまうこと。
田宮さん「ランドセルに鍵を付けておけば、紛失のリスクはほぼ回避できますよ」
まれに、ネックストラップなどで鍵を持っている子もいますが、首に絡まる可能性が危惧される他、外から鍵が見えてしまうと、親がいない家に子どもが一人で帰るのだと丸分かりになってしまいます。不審者がついてくるリスクを防ぐためにも、パッと見で鍵だと分からないようにキーケースを使うのが安心です。
【子どもの鍵の持たせ方2】ランドセルや鞄用に複数の鍵を用意する
注意したいのが、外遊びや塾などで家を出るときに、ランドセルから鍵を外す必要がある場合。その都度、鍵を付け外しするのは紛失のもとになるそうです。
田宮さん「持ち出し用の鍵とランドセル用の鍵、二つ備えておくのもいいかもしれません。持ち出し用の鍵は、ただバッグやポケットに入れるのではなく、キーチェーンなどを使ってベルトループなどに固定しておくと、紛失しにくくなりますよ」
キーケース選びのポイント
ランドセルに鍵を取り付けるには、さまざまな方法があります。
最も手っ取り早いのは、ランドセル用のキーケースを使うこと。写真のキーケースは、鍵をケースの中に隠すことができ、鍵とケースを固定するワイヤーはリールで巻き取れる形になっています。
その他にも、キッズ用の携帯電話を入れられるタイプ、紛失しても場所を突き止められるGPSタイプ、防水タイプ、キャラクターもの、防犯ベルタイプなど、さまざまな機能を備えたものがそろっています。
田宮さん「キーケースはとても便利ですが、ランドセルの外に付けると"鍵を持っている"ということが誰の目にも分かってしまいます。これでは、隠せてないのと同じです。お子さんにとっては、ランドセルを背負ったまま鍵が使えるので便利ではありますが、できればランドセルのポケットなどに入れておくか、ランドセル内にキーケースを固定するのがいいですね」
専用のキーケースを買わなくても、各種ストラップで代用することもできます。
習い事用のリュックに鍵を取り付けた例。合鍵を2本作り、ランドセルとリュックのどちらにも鍵を取り付けています。コイルチェーンで鍵をリュックに取り付けてしまえば、鍵を紛失する心配も減り、伸び縮みするため鍵の取り扱いもスムーズです。
田宮さん「大切なのは、キーケースなども、お子さんのお気に入りのものを一緒に選ぶこと。色・柄はお子さんの好きなものを選んでもらうと、"自分のもの"という意識が芽生えます」
子どもに鍵を持たせるのは、実は多様なメリットが!
初めて子どもに鍵を持たせようとする時、リスクが気になることがありますが、鍵を持つことは親子にさまざまなメリットをもたらすと田宮さんは言います。
メリット1:自信が持てる
家族の一員として、鍵という大切なものを任されているという責任感が、子どもの自信につながります。親に信頼されているという喜びにもなります。
メリット2:自己管理ができるようになる
鍵を持つようになると、帰宅後の過ごし方を子どもが自由に、主体的に決められるようになります。今日は公園に遊びに行こうかな、友達の家に行こうかな、と、自分の行動を自分で決められるようになります。
メリット3:生きる力が育つ
鍵を無くしてしまった、鍵を忘れて家に入れなくなった、という失敗もまた、子どもの成長につながります。困ったときの対応策を、自分で考えて行動できたという経験は、万一の際に命を守る能力につながります。
大事なのは、安心して鍵を持たせるための準備をして、きちんとステップを踏んでいくことだそう。以下に詳しくご紹介します。
【鍵を持たせるステップ1】「あなたを信頼している」とポジティブな声掛けをする
鍵を管理できるようになるためには、「まずは、鍵を持つことの責任について教えましょう」と田宮さん。
田宮さん「鍵はおうちや家族を守る大切なもの、鍵を預かるというのはとても責任があることなんだよ、ということを、まずは親子で話しましょう。
その際に必要なのは、“あなたにはできると思っているから渡すのよ”“あなたを信頼しているよ”というポジティブな声掛けです。あなたにはできる、だから渡すというメッセージを伝えることが大切です」
【鍵を持たせるステップ2】いざというときの駆け込み場所を「親子で」決める
「鍵を無くすと泥棒が入ってくるよ」「鍵を忘れると外でずっと待っていなきゃいけないよ」。鍵の大切さを教えようとして、必要以上に怖がらせていませんか?
鍵を無くす/忘れるリスクを教えるときは、同時に、不安を取り除いてあげることも忘れずに。いざというときの対策を親子で一緒に考えると、不安を解消することにつながります。
田宮さん「鍵を持たせるならば、家に入れなくなったときに頼る先も必ずセットで決めておきましょう。このとき、頼る先は親が勝手に決めるのではなく、子どもと話し合いながら決めるというのがポイントです。
“〇〇さんと△△ちゃんのおうちで待つとしたら、どっちがいい?”など、可能な条件の中から、お子さん自身が選び取れるようにしてあげるといいですね。お子さんも自分で選んだという安心感がありますし、万が一の場合の行動が頭に入ります」
いずれにしても、ご近所に頼れる先があることが大切。鍵を預けるほど親しくはなくても、親に電話連絡をしてもらえるくらいの距離感で、頼れる関係性をつくっておくと安心です。
頼る先がない場合は、学校や学童保育所から親に連絡してもらうという対策が取れることも。学校や学童保育所に事前に状況を伝えておき、「困ったら学校・学童へ」というルールを作っておくのもいいですね。
【鍵を持たせるステップ3】留守番するときのルールを決める
鍵を持つことに責任感と安心感ができたら、留守番をするときのルールを親子で決めましょう。「なぜそうするか」という理由まできちんと理解できれば、子どもにも「守らなければ」という意識が芽生えます。
《防犯のルール1》家に入るときは「ただいまー」と大きな声で
鍵を無事に開けて、さあ帰宅という瞬間に危険が潜んでいます。
田宮さん「帰宅時に不審者が侵入してくるケースがあります。家の中に誰もいなくても“ただいまー!”と大きな声で言うように習慣づけましょう。不在と思われないようにすることがポイントです」
《防犯のルール2》来客や家にかかってきた電話には、基本的に「出ない」
宅配便の受け取りや電話の応対などは、子どもにさせないほうが無難です。
田宮さん「配達員を装って侵入する不審者もいます。また、電話で親の不在を確認するケースもあります。モニター付きインターホンがある場合、お友だちや回覧板を持ってくるご近所さんなど、よほど知っている人なら出てもよいですが、基本的にはお子さんは応対しないというルールを徹底したほうがいいですね。
家にかかってくる電話も、お子さんが取るのはやめておいたほうがいいですね。電話番号が表示できる電話なら、保護者の携帯電話や職場からかかってくるものだけ取っていい、などのルール決めをしておきましょう」
《防災のルール1》コンロは基本、使わない。代替品を検討する
親の留守中は、基本的に子どもはコンロのそばに近づかないほうが安心です。
田宮さん「火事やヤケドの危険性がありますので、ガスコンロやIHコンロには近づかないようにしたいですね。お料理が好きなお子さんもいますが、少なくとも低学年のお子さんが子どもだけで火を扱うのは避けましょう。”お料理はパパやママが一緒にいるときにしようね”と声掛けをして、ライターなども手が届くところに置かないようにしましょう」
どうしても子どもだけでお湯を使う必要がある場合は、水筒に入れておいたり、電気ポットや電気ケトルの使用を検討しましょう。ただし、電気ポットや電気ケトルの場合、ヤケドの危険性もあるため、ヤケドしたらどうするかという対応策も合わせて教えておくのがポイントです。
《防災のルール2》災害時はどう対応するかを決めておく
近隣で火災が発生したらどうするか、地震のときはどうするか。あらかじめ決めておくことが、子どもの安心につながります。
田宮さん「グラッと来たときにまず避難する場所を決めましょう。机の下、テーブルの下、家の中で安全な場所はどこかを親子で考えてくださいね。また、大きな地震の際に避難する場所、例えば学校の体育館や避難場所に指定されている公園までのルートを親子で確認しておくことも大切です。その際、持ち出し品の保管場所の確認も忘れずに」
ご近所で火災が起き、消防車のサイレンなどが鳴ると、子どもはとても不安に感じます。すぐに親に連絡が取れる手段を確保し、困ったことがあったら駆け込める「頼り先」を決めておくことで、不安を緩和してあげることができます。
田宮さん「万が一親の帰宅が遅くなってしまったときのことも想定しておきましょう。おなかが空いたときのために、おやつや軽食の場所を教えておくと安心です」
キッズ携帯を持たせ、見守り機能を使う
子どもとの連絡用にキッズ用の携帯電話やスマホを持たせる人も増えています。
内閣府の調査によると、インターネットを利用している小学生のうち自分専用のスマホを使用している小学生は、全体の40%に上ります(令和元年度 青少年のインターネット利用環境実態調査/内閣府)。
田宮さん「いざというときに親や頼るべき大人に連絡が取れるというのは、お子さんの安心につながります。GPSで位置を測位できるのも、働いている親にとってはありがたい機能ですね」
おわりに
鍵を持たせるにあたり、鍵に鈴を付ける、置き鍵をしてみるなど、いろいろな方法を試されてきた方も多いのではないでしょうか。もしかすると失敗もあったかもしれませんが、田宮さんがおっしゃるように、失敗は学びの元。そして、「あなたを信頼しているのよ」というメッセージが、鍵を持たせる上で大切なんですね。子どもを信頼することが、成長につながるという田宮さんの言葉が印象的でした。