子どものスマホ利用に制限は不可欠! その理由とは
子どもがSNSを介し犯罪に巻き込まれるケースで、低年齢での事例が増えています。子どもを守るためのスマホの利用制限や対策について、ITジャーナリストで成蹊大学客員教授の高橋暁子さんにお話を伺いました。
(高橋さん)親子の緊急時の連絡手段として、子どもが小学生のうちからスマホを持たせるケースが増えています。親の中古のスマホをお下がりにして格安SIMと契約すれば、キッズケータイに比べ手頃な価格で使えることも背景にあるでしょう。
問題は子どもにスマホを持たせること自体ではなく、フィルタリングなどの制限を全くかけない親が多いことです。親の携帯をそのまま渡してしまうと、大人のスマホと同じ状態でどんな機能でも使えてしまうので大変危険です。
【子どものスマホのリスクと制限方法1】犯罪やトラブルに巻き込まれる
(高橋さん)小学生の子どもたちで流行っているゲームやアプリは、大人向けのものが多いんです。例えば、対戦系のゲームや動画投稿アプリなど高学年を中心に流行っていますが、本来、小学生は対象年齢外です。
利用者の中には大人が多く、知らない大人と簡単につながってしまう。GPS機能をオンにしていると、近所に住んでいる人とつながってしまう機能もあったりします。
同級生のふりをして近づいてくる大人もいますし、ボイスチャットやチャットでやり取りしている人だと、子どもの方は警戒心が薄れがちです。簡単に会いに行って誘拐されたり、性被害にあってしまう事例が増えています。
スマホの制限方法
スマホでアプリをダウンロードするのを制限したり、事前に親の許諾を取らないとダウンロードできないように設定します。アプリをダウンロードした場合は、どんな機能があるのかを確認し、GPS機能やボイスチャット機能など危険性の高い機能はオフにしましょう。子どもが隠れて使うことがないよう、なぜそのような機能を使わないほうがいいのか、危険性をしっかりと伝えておく必要があります。
また、インターネット上の有害なコンテンツを排除する「フィルタリングサービス」も利用しましょう。日本の携帯電話会社には、18歳以下の子どもが利用する場合に、フィルタリング機能を提供することが義務付けられています。契約する際には必ず子どもが利用すると伝えてください。格安SIMなど、契約したいプランにフィルタリング機能がない場合には、個人で有料のフィルタリングサービスを契約し、ダウンロードして利用することも可能です。
犯罪被害にあった児童の中で、フィルタリングの利用の有無が判明した児童のうち、約9割がフィルタリングサービスを利用していないというデータ(※)もあります。フィルタリングの設定は子どもを守ることと考えましょう。親としては面倒でも必ず行う必要があります。
出典:警察庁「なくそう、子供の性被害。」
【子どものスマホのリスクと制限方法2】スマホ依存症やゲーム依存症
(高橋さん)スマホのアプリやゲームはものによっては心理学者等も入って開発し改良を重ねて、長時間利用させ、課金に誘導する仕様になっています。
アプリやゲームには友達からのメッセージや「いいね」等の通知がきます。一定時間でまたゲームできるようになったり、期間限定でのガチャなどもあり、子どもはいつもアプリやゲームが気になり、ログインしてしまいます。求めていた結果が簡単に得られるので、また利用したくなってしまうのです。SNSやアプリも同様で、子どもは友達からの通知や新着が気になって、つい利用し続けてしまいます。
こうした仕組みはギャンブルと同じなんです。求めていた快楽が得られる度に脳内でドーパミンが大量分泌されて、子どもはアプリやゲームに依存してしまいます。また、子どもは小さいほど前頭葉が未発達で我慢する力が弱く、依存症になりやすい傾向があります。
スマホの制限方法
スマホを利用する時間や時間帯について親子でよく話し合い、実生活に支障ない範囲で利用するようルールを決めます。例えば平日は30分、土日は1時間など、ライフスタイルに合わせて設定します。夜21時以降は使わない、など利用時間帯を決めておくのも良いでしょう。
決めた時間以外は利用できないよう、スマホのペアレンタルコントロールの機能や見守り機能を使って設定します。
WHOが2018年にゲーム依存を疾病として正式に認定して以来、ゲーム会社やサービスプロバイダーはスマホやアプリの利用を制限する機能を提供するのが当たり前になりました。必ず何らかの制限ができるはずなので、親が探して設定しましょう。
また実生活で満足感や充足感が得られていない子どもほど、逃避行動からアプリやゲームに依存しやすくなることも分かっています。友達との関わりやスポーツクラブ、習い事、塾などのゲーム以外の活動で、子どもが没頭できる環境があると良いでしょう。小さいお子さんなら、親が外遊びなどに連れ出して一緒に楽しむのも効果的です。
【子どものスマホのリスクと制限方法3】有害サイトへのアクセス
(高橋さん)インターネット上には、性的な描写や犯罪、暴力、ギャンブル、出会いサイトなど、子どもにはふさわしくないコンテンツが溢れています。
自分で善悪や危険性を判断して行動できる力が備わっていない段階で、無制限にインターネットが利用できる環境を与えてしまうのは、非常に危険です。
スマホの制限方法
制限方法1にてご紹介したフィルタリングを設定しましょう。
【子どものスマホのリスクと制限方法4】友達とのトラブルやネットいじめ
(高橋さん)私宛に来る相談で一番多いのは、SNSでの子ども同士のトラブルです。SNSでやり取りしているうちに、子ども同士がけんかして疎遠になってしまうケースが多発しています。
文章だけでやり取りすると、表情や声のトーンなど微妙なニュアンスが伝わらないため、気持ちが伝わらなかったり、誤解してしまったりと、トラブルになりやすいんです。報道ではいじめにつながってしまうケースも報告されています。
スマホの制限方法
(高橋さん)相手の反応が目で見えないSNSでは、気持ちを伝える努力が必要だということを子どもに伝えましょう。スタンプを使うようにしたり、丁寧な言い方を心掛ける必要があります。またトラブルになったら、SNSでのやり取りは一度中断し、対面で話すようにさせます。
最初は親と子でLINEグループを作り、友達とつながる前に練習してみるのがおすすめです。友達とのやり取りが始まってからも定期的に内容を確認し、アドバイスをしてあげると良いでしょう。
いつからスマホを持たせるべき? 子どものスマホデビューに適した年齢とは?
(高橋さん)小学生など低年齢からスマホを与えることには、メリット・デメリット両面があります。メリットとしては、早い段階から使いこなしていくことで、ITリテラシーを高めていくことができます。練習期間として親も子も一緒に慣れていくチャンスでもあります。「中学生になるまで禁止」などギリギリまで禁止するとリテラシーが育たず、一人だけうまく使いこなせずにトラブルにつながりやすくなる懸念があります。
自撮り動画を投稿するのは危険ですが、物撮りなどの手法で動画を撮る方法もあります。子どもが編集作業を通して表現力を高めることにつながります。スマホで行えるプログラミングのアプリや学習系のアプリも良いでしょう。ポジティブなスマホとの関わり方を、親と子で見つけられると良いですね。
また思春期以降に初めてスマホを子どもに渡すと、親にスマホを見せることに抵抗感が出てしまいます。誰とつながってどんなやり取りをしているのか、知りたくても分からなくなってしまいます。そうなってから、スマホの付き合い方を教えたくてもなかなか難しくなります。もっと早い段階から親子でスマホとの付き合い方を学ぶのがおすすめです。
おわりに
子どものスマホ利用においては、フィルタリングやペアレンタルコントロールなどの制限が欠かせません。大事な子どもを守るためにも、親も使い方や設定を調べて対策したいですね。高橋さんによると、最近は無料の動画サイトなどでも設定方法が公開されており、見ながらやれば簡単に設定できるそうですよ。