自立心とは?
「自立心とは、人からの指示で行動するのではなく、子どもが自分で考え、自分から行動するために必要な心構えのことです。また、自立と自律という言葉がありますが、自立が『外的要因』の独立を指すのに対して、自律は『内的要因』の独立を指します。お手伝いできる・着替えができるといったことが『自立』、自分の意志をコントロールして行動ができるようになることが『自律』です」と大門さん。
今回は、自分のことが自分でできるようになる「自立」の方をテーマに解説していただきました。
自立心はいつから芽生える?
子どもの自立心は、いつ頃から芽生えるものなのでしょうか。
「自立の前は『依存』という段階なのですが、それは大人に全面的に面倒を見てもらうという状況です。赤ちゃんだったら、お風呂に入れてもらって、 着替えさせてもらって、全ての世話をしてもらうのが基本ですね。その段階から徐々に成長し、環境によって異なりますが、2~3歳くらいから『私もやりたい』『僕もやりたい』という気持ちが出てきます。これが自立心の芽生えです」(大門さん)
自立心が出てきた頃に、『自分で服を着てみよう』『自分でご飯を食べよう』というように習慣づけることができれば理想的ですね。
自立心を育てるために大事なこと
子どもの自立心の芽生えをうまくキャッチするにはどうしたらいいのでしょうか。
「自立心は自然に出てくるものではありますが、子どもが『自分で』といったときにやらせないと、習慣として育ちにくくなるでしょう。自立心の芽生えをうまくとらえて、自分で何かを始めようとしたときは途中で取り上げず、子ども自身にやらせてあげたほうがいいと思います」(大門さん)
例えば、子どもが初めてズボンを履こうとして間違って履いてしまった場合、親に怒られてしまったらやる気を失ってしまうかもしれません。
「子ども自身がどうせ自分にはできない、と諦めてしまう状況は避けたいですね。親は子どもを応援する気持ちで履けるまで待ってあげたいものです。でも、こういった時期に親御さん自身が問題をかかえていたり、時間がなかったりすると、子どものやることを待ってあげられません。そのため、子どもの自立心を育むために一番大切なのは『親の余裕』だともいえるでしょう」(大門さん)
また、なるべく早くから自立心を育てたいと思う親御さんも多いと思いますが、大門さんによれば、「自立心は保育園や幼稚園に入園するまでに身に付けなければならないというものではなく、入園後もどんどん育っていくものです。保育園や幼稚園では家のようにずっと親に面倒を見てもらえるわけではないので、自立心が自然に育つきっかけにもなります」とのこと。焦らずにじっくり向き合えるといいですね。
子どもが自立心を持てないとどうなる?
子どもが自立心を持てないとどのような困りごとがでてくるのでしょうか。
「自立心を持てないと『自分で考える』ことができないので、物事を決められないということが起こります。自信がないので、誰かの後ろにくっついたままで自分の意見を言うことも難しいでしょう。例えば、誰かと遊びたいときも、その意志を表現できないので、自分で友達をつくれないということになってしまいます」(大門さん)
自分で考え、意志を表明できなかったら、人間関係がうまく構築できないということにつながりかねませんね。
子どもが自立心を持つメリット
子どもが自立心を持つことのメリットについて大門さんに伺いました。
主体性が身に付く
「自立心を持つと、自分の意志で行動しようとする態度が身に付きます。子どもが自ら考え、やる気を持って取り組む『主体性』が身に付きます」(大門さん)
自分で決定し、自己主張ができるようになる
「自分の気持ちを主張したり、他者に対して表現できるようになります。また、あれをしよう、これをしようと考え、決めたことを実行できるようになります」(大門さん)
判断、決断力が身に付く
「自立心によって、物事の良い/悪い、つまり、善悪を判断できるようになります。人が作ったルールに従うだけでなく、自分で判断ができるようになります」(大門さん)
自発性・独立性が生まれる
「例えば、『あの子におもちゃを貸してあげよう』というように、自ら行動する自発性が生まれます。一人で集団に入り、集団のルールになじんで、すべきことを実行できるようになります」(大門さん)
子どもの自立心を育てるために親ができる4つのこと
子どもの自立心を育てるために、家庭でできることはあるのでしょうか。
大門さんに、日常生活の中で取り組みやすいことを紹介していただきました。
その1 スキンシップを大切にし、目を見て話す
「あなたのことを受け入れている、ということを言葉以外で表現しましょう。会話するときはスマホを見ながらでなく、お父さんお母さんが、子供の目線に合わせた姿勢で目をしっかり見ながら伝えたり、スキンシップしたりといったことが大事です。親に受け入れてもらえている安心感があるからこそ、自立心が育つのです」(大門さん)
その2 話を聞いてあげる
「子どもが駄々をこねていたり、機嫌が悪いときには、気持ちを聞いてあげましょう。子どもが言葉にしにくいときでも、質問を投げかけて気持ちを整理させてあげることで、子どもは自分の心に目を向けることができます」(大門さん)
その3 否定せずに一緒に考える
「例えば、子どもが片付けられないのを注意したいときに『なんでできないの?』『どうしてできないの?』と責めるのではなく、『どうやったら片付けができるかな?』と自分で考える時間を与えてあげるとよいでしょう」(大門さん)
その4 指示を出し過ぎない
「子どもへの指示の出し過ぎに気を付けましょう。何から何まで親から指示されたり、意見を押しつけられると、子どもは自分で考えるチャンスを奪われてしまいます。親自身の経験や価値観に基づいてなんでも口を出すのは避けて、3回に1回程度に減らした方がいいでしょう。子ども自身に考えさせることが自立心を育むことにつながります」(大門さん)
自立心を育てる声のかけ方とは?
普段何気なく行っている子どもへの声掛けが自立心が育つのを妨げているかもしれません。大門さんに伺った、自立心を育てるための声掛けのコツを紹介します。
その1「ごめんね」でなく「ありがとう」
「『ごめんね』という言葉は気楽に使ってしまいがちですが、そもそもは罪悪感を持ったときに使う言葉です。親が考えなしに『ごめんね』という言葉を使うと、子どもは自分が親に迷惑をかけているのだと申し訳なく感じてしまうことにもなりかねません。例えば、夕食が遅くなったときなどに『ごめんね』でなく、『待ってくれて、ありがとう』と伝えてみてはいかがでしょうか。人を喜ばせることができると感じることは子どもの自信や自立心の芽生えにつながります」(大門さん)
その2 「私は」を使う
大門さんは、お母さんと子どもが「癒着」の状態になることも問題だと言います。
「癒着というのは自分と子どもが一心同体のような区別がつかない状態になってしまうことです。癒着しすぎると、子どもの自立を妨げることにもなってしまいます。それを防ぐためにも、子どもに話す時に『私は』『お母さんは』と意識して区別をつけて話をすることが大切です」(大門さん)
親と子の問題を切り分け、双方の意見を区別することが子どもの自立にもつながるのですね。
その3 「ちょっとお手伝いしてくれない?」と頼む
子どもに簡単なことでもいいので手伝ってもらい、それに対して上から褒めるのではなく、子どもに「自分は役に立つ存在なのだ」という自信を持たせることがおすすめだと大門さんはいいます。
「子どもに誰かを助ける喜びを体験してもらいましょう。人に感謝され、喜ばせることができたということが自信につながり、またやってみようと思う原動力になります。例えば、子どもが走り回って困ったときに、『私が迷子になっちゃうから、手をつないでくれるかな?』と頼んでみると、親の役に立てることを喜んで、手をつないでくれることもありますよ」(大門さん)
子どもに注意をしたい場面にも、自立心を活用できるのですね。
おわりに
心理カウンセラーとして子育ての悩み相談にも関わってきた大門さんに、子どもの自立心を育てるために親ができることを伺いました。大切なのは親自身が余裕を持つこと。「親がいっぱいいっぱいだったりすると子どもの自立に目を配る余裕が持てなくなるので、困ったときには家族や友達のサポートも得て、まず自分のケアを大切にしましょう」とのこと。ママやパパが笑顔で子どもを見守りつつ、日常生活の中で簡単に取り入れやすいことから始めて、子どもの自立心の芽生えをサポートしていきたいものですね。