ポリ袋で作るポリパン®ってどんなもの?
パン作りって工程を想像するだけで二の足を踏んでしまう・・・そんな方におすすめしたいのが「ポリパン®」です。この調理方法の生みの親、天然酵母パン工房&ナチュラルフードスクール「happyDELI」代表の梶晶子さん(以下、梶さん)から「ポリパン®」の魅力や簡単にできるレシピを教えていただきます。
そもそも「ポリパン®」ってどういったものなのでしょうか?
梶さん「パン作りというと、材料をしっかりこねて発酵させてと思いがちですが、ポリパン®では、材料をポリ袋に入れてフリフリするだけ。一次発酵もポリ袋のままできるので、最小限の道具だけでパン作りができます。もちろん、後片付けも楽ちんです。いつでも、どこでも、誰でもできるのがポリパン®です。子どもから大人まで、キッチンがないアウトドアでも材料さえあれば、どんな環境でも作ることができますよ」
まるで魔法のようにパン生地ができてしまうのには驚きですね! この方法は一体どうやって生まれたのでしょうか?
梶さん「きっかけは、私が主宰するパン屋のパン教室を市の公民館で開催してほしいと頼まれたことでした。ところが予定より参加者が多くなってしまい調理道具が足りなくなってしまいました。ボウルが足りないので、ポリ袋に計量して持ち込んでいた小麦粉をボウルにあけずに、そのままポリ袋ごと使用することにしました。ポリ袋に直接他の材料を入れて、混ぜ合わせてもんで、作ってみたんです。すると道具はほとんど必要としないし、キッチンも汚れないので参加者さんたちにとても好評だったのです。それからトライ&エラーを繰り返して完成したのが今のポリパン®レシピです」
ないところから生まれたポリパン®。誕生した理由にも納得です。これならファミリーはもちろん、一人暮らしのキッチンでも始めてみたくなりますね。
梶さん「パン作りには癒しの効果があると思っています。発酵したふわふわのパン生地やパンが焼ける香りは心を豊かにします。ポリパン®はそんなおいしい、楽しいと感じられる幸せな時間を気軽に味わっていただきたいという気持ちで続けています」
パン作りに必要不可欠! 酵母ってご存じですか?
パンは生地を発酵させることで、もちもちふわふわ感が生まれます。その発酵に必要不可欠なのが「酵母」です。一口に酵母といっても沢山の種類があるのをご存じの方も多いと思います。
市販されている酵母の中で一番手に取りやすいのがよく耳にする「イースト(インスタントドライイースト・ドライイースト・生イースト)」です。他にも、最近よく見かける天然酵母(発酵種)というものもありますよね。この2つの違いはどこにあるのでしょうか。知っているようで知らない酵母の話を梶さんに詳しく教えてもらいました。
イーストと天然酵母(発酵種)の違いとは?
梶さん「イーストは、酵母を純粋培養したもので、発酵力が強いので短時間でパワフルにパン種を膨らませてくれるのが特徴です。一方、天然酵母(発酵種)は、酵母以外にも培地の成分が入っていたりと、緩やかに時間をかけて発酵するのでその分小麦粉のおいしさを引き出してくれるという違いがあります。ただ、天然酵母(発酵種)といってもいろいろな種類があります。果物などと水を長時間置いて発酵させる自家製培養酵母もありますが、初心者の方なら、扱いやすいホシノ天然酵母パン種がおすすめです」
発酵力の違いでパンの仕上がりが変わるのでしょうか?
梶さん「実は、発酵はパンのおいしさに直結する工程です。短い時間で発酵させたパンは風味が十分に引き出されずに老化も早くなります。天然酵母(発酵種)は発酵がゆっくりとしている分、生地の熟成が進んで粉の独特の風味や香り、旨みが増します。こうしてできたパンは次の日でもおいしくいただけるのが特徴です。また、材料の分解が進んでいるので消化もよく、腸内環境にも寄与するといわれています。
時間はかかるけれど、ぜひ天然酵母(発酵種)にトライしてみてください。できあがったパンがおいしければまた作りたくなるでしょ? けれど、決してイーストがダメという訳ではないのでケースバイケースで使い分けてくださいね」
その日のうちに作って食べ切りたい時はイースト、たくさん焼いてストックしておきたい時は天然酵母(発酵種)、など長所と短所が分かれば予定に合わせて使い分けができそうですね。
ホシノ天然酵母パン種を起こしてみよう!
そのまま使える顆粒状のイーストとは違い、ホシノ天然酵母パン種を使うには起こして生種の状態にしておくという作業が必要です。ホシノ天然酵母パン種の生種は、夏なら丸1日、冬なら暖かい場所で2日半程でできあがります。できあがった酵母は冷蔵庫で1カ月程度保存可能です。
梶さん「酵母は冬夏の室内でも活動し続けますが、注意したいのは高温になりすぎてしまうことです。40度を超えると酵素の活性が高くなり生地がだれやすくなります。また、酵母も弱っていってしまいます。無理に高温の場所に置かずにゆっくりと起こしていきましょう」
ホシノ天然酵母パン種の起こし方1
ホシノ天然酵母パン種25gに対して常温の水50gを加えて軽く混ぜる。空気が通るように軽くラップをしておく。
ホシノ天然酵母パン種の起こし方2
常温に置く。発酵が進み一度盛り上がりますが、それが収まって、最初に混ぜた時よりもゆるい状態になったらできあがり。
さて、酵母の準備ができたら、さっそくパンを作ってみましょう! 初めてのポリパン®でぜひトライしてもらいたいレシピを梶さんに教えていただきました。
フライパンでできる! 基本レシピ「イングリッシュマフィン」
ポリパン®初心者におすすめしたいのがイングリッシュマフィン。このレシピにポリパン®の基本と魅力が詰まっています。オーブンがなくても、二次発酵から焼きまでフライパンの上でできる手軽さがうれしいレシピです。
材料
- 強力粉・・・100~120g
- 薄力粉・・・30~50g
※強力粉と薄力粉を合計して150gにする
※強力粉は、カメリヤなどの外国産やゆめちからの場合は少なめ。春よ恋、キタノカオリなどの場合は多めにすると作りやすい
- 水・・・80g
- ホシノ天然酵母パン種の生種・・・12g(大さじ1弱)
- 太白ゴマ油・・・10g
- 砂糖・・・10g(大さじ1)
- 塩・・・2g(小さじ1/3)
- ゴマ・・・適量
- コーンミール・・・適量
ポリパン®はホシノ天然酵母パン種の生種を使うのがおすすめではありますが、インスタントドライイーストを使っても作ることができます。以下にその分量をご紹介しておきますね。
- ゆっくり発酵させたい場合:インスタントドライイースト・・・小さじ1/20(0.15g)= 粉量の0.1%
- 早めに発酵させたい場合:インスタントドライイースト・・・小さじ1/4(0.75g) =粉量の0.5%
いずれの場合も、もともとの水分量に、甘酒大さじ1か、水10gを足したものに、インスタントドライイーストを振り入れ、2~3分ふやかしてから混ぜて使います。
用意する道具
- ふたつきフライパン
- ポリ袋
- フライパン用ホイル(クッキングペーパー)
- 透明な容器
- ゴムベラ
- キッチンばさみ
- スケッパー
- 軍手
- フォーク
ポリ袋の選び方
表示にポリエチレンとあるものを選びましょう。厚さは破れにくい0.03mmがおすすめです。材料が入ればどんなサイズでも構いませんが、今回のレシピでは縦350mm×横250mmのものを使用しました。
「こねる」はいりません。ポリ袋でフリフリ、スタート!
パン作りの最大の難所「こねる」の工程は必要としません。これこそがポリパン®の真骨頂。袋の中に次々と材料を入れていくだけなので粉がキッチンに散らかる心配もありませんね。
梶さん「粉をフリフリする工程ではお子さんがやりたい! と目をキラキラとさせてくれますよ」
ポイントは材料を入れる順番。振り始めると、みるみる内に生地がまとまっていくのでできあがりの目安は写真で確認してくださいね。
生地の作り方1
ポリ袋に粉類を入れる。袋に空気を取り込んでから口をねじり、振り混ぜる。
生地の作り方2
水に生種と油を入れて、ゴムベラで混ぜ合わせる。
生地の作り方3
1に2を加える。
生地の作り方4
袋に沢山空気を取り込む。袋底辺を縦に置いた状態で上部を2~3回折りたたんでから両端をねじる。
生地の作り方5
右手でねじり口を握って、左手で袋の角に指を入れてつかむ。
生地の作り方6
勢いよく上下にフリフリスタート!
生地の作り方7
粉類がそぼろ状になって、袋の中がクリアになったらできあがりの合図。
生地の作り方8
生地がカリフラワー状にくっついてひとかたまりになったらOK。
生地の作り方9
ポリ袋の内側に残った生地をくっつけるように外側からつかんで生地をまとめる。(ここまでで2~3分)
生地の作り方10
袋の中の空気を抜いて、指2~3本分の余裕を持たせて上部を結ぶ。
生地の作り方11
透明な容器に入れて一次発酵の準備完了。生地の高さに印をする。
ポイントさえわかれば難しくない! 一次発酵
パンの発酵とは、酵母が生地の中の糖分を分解して炭酸ガスやアルコールを発生させる現象のこと。この時に酵母が発生させた炭酸ガスが生地を膨らませて、パンらしいふんわりとした食感を作りだします。特に一次発酵は、小麦粉の香りや旨味を引き出してくれる大切な時間でもあります。
発酵完了の見極めを難しく考えてしまいがちですが、袋の中で発酵させるポリパン®なら膨らみ方が一目で分かるので安心です。また、透明容器に入れておけば、発酵の目安がわかりやすいですね。発酵前から約3倍に膨らんでいれば一次発酵完了です。
梶さん「発酵というと、オーブンの発酵機能を使って、何度で何分と難しく考えがちですが、都合に合わせて室温で常温発酵してもいいですし、すぐに焼かない場合には、冷蔵庫の野菜室に入れておいて、冷蔵発酵させてもいいですよ。
低い温度で発酵させると時間はかかりますが甘味のある生地になります。常温発酵では、ほったらかしにできる利点がありますが室温によって発酵時間が変わります。オーブンの発酵機能を使用する時はふくらみ過ぎに気を付けてくださいね。発酵にかかる時間はあくまで目安です。酵母は生き物ですので、時間で決めるのではなく生地の膨らみ方で判断してくださいね」
以下が、ホシノ天然酵母パン種を使った場合の一次発酵にかかる時間の目安です。参考にしてみてくださいね。
- 気温30度・・・3~4時間
- 気温20度・・・10~13時間
- 気温15度・・・15~18時間
洗い物削減! まな板いらずの生地の分割
生地の分割にもポリ袋が活躍します。ハサミで袋をカットして、まな板代わりに使用しましょう。
生地の分割と成形1
袋の側面と底辺をL字にカットしてポリ袋を開く。
生地の分割と成形2
手やスケッパーに打ち粉をしてから生地に触ると扱いやすい。生地を切るというよりスケッパーを底につけたままずらして生地を遠くに剥がすような気持ちでやるとやりやすい。
生地の分割と成形3
生地を4つに分割する。
生地の分割と成形4
手に打ち粉を振って、1つを手に取り、生地のきれいな面が外側になるようにする。
生地の分割と成形5
半分にたたむ。
生地の分割と成形6
ハンカチをたたむようにさらに半分にたたむ。
生地の分割と成形7
つるんとした面を上にして左手にのせ、生地の表面が張るように、右手で生地を下に巻き込んでいく。
生地の分割と成形8
裏側のお尻をつまんでとじる。
生地の分割と成形9
コーンミールかゴマを両面にまとわせる。
生地の分割と成形10
フライパンにフライパン用ホイルを敷き、その上になるべく速く離して、とじ目を下にして生地をのせる。
生地の分割と成形11
フライパンにふたをする。
場所を選ばずフライパンの上で! 仕上げの二次発酵
二次発酵はふたをしたフライパンの中で行います。気温が低い場合は、ガスコンロを強火で15秒ほど加熱し消火します。そのまま放置して、発酵が進むのを待ちます。発酵前と発酵後を比べるとこんな感じです。ずいぶんふっくら膨らんできたのがわかりますね。
生地が二倍程度に膨らみ、指で押してみて、ゆっくり戻ってくるくらいが発酵完了のベストなタイミングです。(指に粉をつけて触りましょう)
フライパンでパン焼き開始!
さあ、待ちに待った焼きの時間です。
二次発酵で使用したフライパンでそのまま焼き上げましょう。フライパンなら膨らんでいく過程を見守りながら焼き上がりまでを楽しむことができますね。
パンを焼く1
ふたをして火入れスタート。強火で30秒加熱する。
パンを焼く2
ごく弱火に切り替えて4分加熱する。
パンを焼く3
4分経ったら、ふたをとってひっくり返す。この時、焼き色はついてなくてもOK。(軍手やフォークを使ってひっくり返す。側面をつぶさないように気をつけて)
パンを焼く4
強火で15秒加熱後、ごく弱火に切り替えて4分加熱する。これをあと2回繰り返す。焼き色が付いていれば強火15秒の部分は省く。
パンを焼く5
指で押して弾力があれば焼き上がり。
おいしいのは焼き立てじゃない! グリルで焼き直すともっとおいしい
焼き上がったパンはすぐにでも食卓に出したくなりますが、そこはグッと我慢。実はパンがおいしいのは焼き立てよりも粗熱が取れてからだってご存じでしたか?
梶さん「アツアツのパンの中では調理が進んでいます。パンをカットして湯気が立つようではまだできあがりではありません。焼き立てはたくさんの水蒸気がパンの中に溜まって、食感がムニムニして、カットしようとするとつぶれてしまいます。冷ますと水蒸気がパン全体に回りまた余分な水蒸気やアルコールが飛んで、本来の食感や小麦の香りが味わえます」
梶さんによると、発酵種のパンがおいしいのは、次の日。グリルで焼き直すと香ばしさがプラスされてよりおいしくなるのだとか。
イングリッシュマフィンなら、側面をぐるりと一周フォークで刺してざっくりと手で割ってから焼きましょう。
特に、ガスコンロのグリルで焼き直せば、断面のザクザク感と生地のふわふわ感の両方を楽しめるのでおすすめです。
また、すぐに食べない場合は、半分に割った状態でアルミホイルに包んで密閉袋で冷凍保存してもよいのだそう。食べる時には、解凍せずそのままグリルで焼き上げるのがおすすめ。外はカリっと、中はふわふわの食感が再現されます。もし半分に割らずに冷凍した場合は焼く時に必ずアルミホイルに包んだまま焼くようにしましょう。
ポリパン®を作るなら、最新のガスコンロがおすすめ!
4分間隔で上下を返す今日のレシピにはガスコンロの機能「コンロ調理タイマー」を使うと便利です。設定時間が来るとピピっと音でお知らせしてくれるので焼きすぎを防ぐことができますね。
最新のガスコンロには、料理を強力にサポートする便利機能が満載です。
自動で火加減を調整する揚げ物・焼き物に便利な「温度調節」機能や、ボタン一つでガス火炊きのご飯が炊き上がる「自動炊飯」機能。お湯が沸いたり、設定した時間になると消火する「湯わかし」や「コンロタイマー」機能など、「ガスコンロ」には調理をサポートする機能がたくさんあります。(※)
また、“魚を焼く”イメージの強い「グリル」ですが、実は肉や野菜料理、トーストやピザ、揚げもののあたため直しにも使える万能調理器です。
専用容器対応のグリルでは、手軽にオーブン料理も楽しめますよ。(※)
ガスコンロで「おいしい」をもっと簡単に! レパートリーをグンと増やしましょう!
(※)搭載機能や機能名は機種によって異なります。
おわりに
ポリパン®なら、特別な道具も広いキッチンも、オーブンがなくてもパン作りが楽しめます。省略できるところは楽して、時間においしくしてもらう。おいしく楽しいポリパン®は魅力がいっぱいでした。さぁやるぞ、と重い腰を上げるのではなく、ふとした隙間時間にパンを作りたくなりますね。これなら、毎日の生活に取り入れられそうです。
次回は、フライパンでできるピザ作りをご紹介します。どうぞお楽しみに!