食用油は捨てる時代からリサイクルする時代へ
揚げ物の後の食用油、シンクに流してはいけないとご存じでしょうか。シンクに流すと排水口の詰まりや水質の汚染につながりますし、排水管の耐用温度は60~70℃なので、熱い油の場合はキッチン設備を傷めてしまう可能性もあります。
食用油はお住まいの自治体の指示に従って捨てる必要があります。多くの自治体では、可燃ごみとして捨てることが推奨されています。油が漏れないように凝固剤で固めたり、新聞紙や紙タオルに含ませて、紙パックやポリ袋に詰めてから廃棄する必要があります。
一部の自治体では、食用油を可燃ごみとして処理するのではなく、回収してリサイクルしています。回収された食用油は、石けんやバイオディーゼル燃料に精製され、再利用されています。
葛飾区では、平成25年に食用油の回収を始めました。拠点数を増やしたことで回収量が増え、令和2年度の段階では、回収量が当初の約7倍に増えていると言います。
回収された食用油は、石けんや肥料、バイオディーゼル燃料として再利用されています。
葛飾区では公用車をバイオディーゼル燃料で走らせる取り組みも開始しています。バイオディーゼル燃料の場合、黒煙や硫黄酸化物もほとんど排出しないそう。
また、杉並区では、家庭用廃食用油の拠点回収を実施しています。回収された廃食用油は、資源化事業者により、飼料・せっけん、バイオディーゼル燃料などにリサイクルされています。
拠点回収・リサイクルの普及啓発のため、環境フェア等のイベント時に廃食用油を使ったキャンドルワークショップを実施する取り組みがされています。
足立区では、定期的に資源買取市を実施し、食用油を含め古紙や空き缶などの資源を有償で買い取る取り組みを行っています。食用油は1kgあたりで1円。手間をかけてリサイクルの準備をする分、少しでも返金があると思うとうれしいですね。
このように、各地で使用済みの食用油を積極的に活用する取り組みが進んでいます。
食用油の適切な捨て方やリサイクル、実際にやってみると・・・
食用油の捨て方やリサイクル法として推奨されている方法を実際に試してみました。リサイクルする場合と可燃ごみとして捨てる場合の両方を試しています。
※自治体によってやり方の詳細が異なる場合もあるのでご注意ください。
【リサイクルの場合】油の入っていたポリ容器に油を入れ栓をして出す
リサイクルが可能な自治体の場合、油の入っていたポリ容器もしくはペットボトルに使用済みの油を入れ、しっかりと栓をします。ペットボトルの場合、口径が狭いのでフライパンから油を入れるのは、なかなか難易度の高い作業でした。広口のじょうごなどを使うと良さそうです。
【可燃ごみの場合1】紙タオルや新聞紙に吸わせて捨てる
牛乳パックの中に紙タオルや新聞紙など吸油性の良い紙を丸めて入れ、その中に使用済みの油を吸わせます。牛乳パックはある程度の温度に耐えられるよう、内部がポリエチレン加工されていますが、100℃を超えると溶け始めるそう。揚げ物をしていると食用油は100℃を超えるため、粗熱が取れてから入れる必要があります。
まれに自然発火してしまうことがあるので、紙タオルや新聞紙に軽く水を含ませておくと良いといわれています。
油が入った牛乳パックはガムテープなどで封をして、可燃ごみとして出します。
【可燃ごみの場合2】市販の凝固剤で固めて捨てる
油が熱いうちに市販の凝固剤を入れて溶かします。油が冷めるに従って固まっていきます。1時間ほどかけて完全に固まったら、フライ返しなどで剝がして捨てることができます。このままごみ袋に入れて捨てることが可能です。
【可燃ごみの場合3】片栗粉で固めて捨てる
片栗粉で固めて可燃ごみとして捨てる方法もあります。熱い状態の使用済み油に片栗粉を適量入れかき混ぜます。
市販の凝固剤ほどしっかりとは固まりませんが、とろみが付いて扱いやすくなります。牛乳パックやポリ袋などに入れましょう。油が緩いと漏れてしまいやすいので、必要に応じて紙パックや新聞紙など吸油性の良い紙を追加し、最後にガムテープなどで封をします。
1の方法と同様に、まれに自然発火してしまうことがあるので、紙タオルや新聞紙に軽く水を含ませておくと良いといわれています。
油がこぼれると掃除が大変なので、密閉した後に牛乳パックやポリ袋を軽く振ってみて、油がこぼれないかをしっかり確認しましょう。心配な場合には、さらに密閉袋に入れたり、ポリ袋に入れて輪ゴムで止める方法もあります。
また、油の量が多いほど多くの片栗粉が必要になるため、油の量が多い場合には市販の凝固剤を使った方がお安くなることも。片栗粉は少量の油で揚げ焼きにした後の油の処理に適した方法だと言えそうです。
普段、筆者の家では牛乳パックに新聞紙を敷いて油を吸わせる方法で油を処理してきましたが、4つの方法を試してみて最も手軽だと感じたのは、ペットボトルに詰めてそのままリサイクルに出す方法でした。市販の凝固剤も手軽ですが、コストが気になります。
また、牛乳が空になるのを待って揚げ物をしたり、新聞紙を取っておく必要がなくなると、揚げ物をするタイミングも自在になりますね。
おわりに
限られた資源を有効に活用していくためにも欠かせない、食用油のリサイクル。家庭で身近にできるSDGsの取り組みとして、お子さんと一緒に情報を調べたり、リサイクル拠点に持っていってみるのもおすすめです。
参考:葛飾区「家庭から出る廃食用油を回収しています」
参考:杉並区「家庭から出る廃食用油を回収します」
参考:足立区「資源買取市 資源を現金買取します!」
あわせて読みたい
食用油は捨てずに回収するのがトレンドに! リサイクルの現状とは?
油の捨て方のコツを知っておけば、面倒な揚げ物もグッと手軽に!揚げ物レシピはこちら
油の処理が面倒で揚げ物を敬遠しがちな人は多いもの。ちょっとしたコツで食用油の処理は手軽になります。カリッと揚がったおいしい揚げ物をぜひご家庭でお試しください。