毛布の正しい使い方を知りたい! まず毛布の役割とは?
掛布団だけでは何となく寒い、あたたかさが物足りない・・・。そんなときに登場するのが毛布です。
「毛布の基本機能は保温です。リビングやオフィスなどで使われるひざかけなどと同じ役割ですね」と教えてくださったのは、上級睡眠健康指導士※の加賀照虎さん(以下、加賀さん)。
毛布があたたかさを保てる秘密は、ふんわりと起毛した長い「毛」。毛の部分に空気を抱え込むことができるため、毛布と体の間にあたたかい空気の層ができて、体温を逃さずあたたかく感じるのだそうです。
※上級睡眠健康指導士とは?
一般社団法人日本睡眠教育機構が養成し認定する資格。睡眠に関する正しい睡眠知識を一般の社会人に伝え、日本国民の健康増進に貢献することを目的に、医師や研究者など睡眠の専門家によって設立されています。
加賀さんによると、毛布は寝具の中で最も小回りの利くアイテム。その日の気温や体感に合わせて、ポイント使いができるフレキシブルさが最大の利点だそうです。
「昔は冬になると、布団と毛布はセットのような間柄でした。でも、住まいの気密性が増し、寝具の進化や多様化が著しい現代では、毛布は必ずしも必要な寝具ではなくなっています」(加賀さん)
その日の気温や体感によって、使う日もあれば使わない日もある。コレ!と決まった形を持たずに自由に使うのが、毛布の基本なのだそうです。
毛布を使って、布団の中を 33℃・50%に近づけよう
布団の中の温度・湿度のことを「寝床内気象(しんしょうないきしょう)」といいます。
「寝床内が33℃・50%になるのが、快眠のベストな環境といわれています。冬場は風邪をひかないように、とにかくあたたかくしようとしてしまう人も多いのですが、あたたかくするというよりは33℃・50%に近づけるために、毛布を足したり布団の種類を変えたりして寝具を調節していくことが大切ですね」(加賀さん)
人は寒すぎても、あたたかすぎても眠りにくくなるそう。毛布を上手に使って、快眠環境に近づけたいですね。
【毛布の正しい使い方1】掛布団が羽毛布団なら、毛布は敷く
掛布団が羽毛布団の場合は、毛布は敷くのが正解、と加賀さん。
「羽毛は毛布よりも保温性が高いため、羽毛布団と体の間に毛布を挟んでも、その分だけ暖かくなる(=保温性が上がる)というわけではないのです」(加賀さん)
ところで、眠るときに感じる寒さはどこからくるのでしょう。掛布団の上からくるもの? 敷布団の下からくるもの?
「羽毛の掛布団を使っているなら、掛布団の上からの寒さはあまりないと考えていいでしょう。マットレスが10㎝以下の薄いものだったり、床の上に敷布団を敷いただけで寝ている場合、底冷え、下からくる冷気の方が断然強いです。ですからこの場合は、敷布団の上に毛布を敷いた方があたたかく眠れます」(加賀さん)
【毛布の正しい使い方2】掛布団が吸湿発熱素材の場合も毛布は敷く
近年よく見かける「吸湿発熱素材」の掛布団。汗などの水蒸気を感じて、布団そのものが発熱する新素材です。
「吸湿発熱タイプの掛布団と体の間に毛布を挟んでしまうと、熱を発生させるための水蒸気が毛布に阻まれてしまいます。吸湿発熱素材の良さを生かすなら、毛布は敷いて使いましょう」(加賀さん)
実は加賀さん、吸湿発熱製品には注意喚起もしています。
「人の体温は睡眠前から徐々に下がっていき、睡眠が深まるにつれて最大1.5℃も体温が下がります。これは、脳と体を休息させるため。一晩に200mlの寝汗をかくといわれますが、これは体温を下げるための生理作用です」(加賀さん)
ところが、吸湿発熱素材は水分を感じて発熱します。体は汗をかいて体温を下げようとしているのに、布団が発熱したら、体温を下げようにも下げられなくなってしまいます。その結果、睡眠が浅くなってしまうことも・・・。
「吸湿発熱製品とは上手に付き合わないと、熟睡できなくなることもありますのでご注意を」(加賀さん)
【毛布の正しい使い方3】掛布団が綿布団なら、掛け布団と身体の間に
掛布団が綿布団の場合は、掛布団と体の間に毛布を入れるのが正解。
「綿の掛布団は吸湿性がありますが、毛布より保温性に欠けることもあります。毛布を体に直接掛けたほうが全体的な保温効果は高まるでしょう」(加賀さん)
それでも寒い場合は、体の下にも毛布を敷くのがおすすめ。
毛布を掛け・敷きのダブルで使ってもまだ寒いときは・・・。布団と毛布の組み合わせを変えるほかありません。
「例えば、薄い綿毛布に化繊布団といった組み合わせでは、そもそもの保温性が十分とはいえません。よりあたたかい毛布や掛布団、分厚いマットレスなどに変えることをおすすめします」(加賀さん)
【毛布の選び方1】素材によって得意分野はさまざま。迷ったら綿毛布を
素材別の毛布の機能
毛布の素材はさまざまありますが、加賀さんのおすすめは綿毛布。
あたたかくなりすぎないため温度調節がしやすく、化繊や羊毛・カシミアの毛布に比べてオールマイティに使えるのがポイントだそうです。
アクリルやポリエステルなどの化繊は、安くてあたたかいのが強みです。
「化繊は熱をたくわえますが、羊毛やカシミアなどの動物性素材のように湿気を吸いません。その結果、あたたかさの初速は速く、触った瞬間のあたたかさは強いのですが、長時間使うと蒸れてしまうのが難点です」(加賀さん)
羊毛やカシミアなどの動物性の素材は、あたたかく吸湿・放湿性にも優れるのが強みです。
「動物性の素材は、保温寝具としての機能はすばらしいのですが、高価で洗濯がしづらいなど、日常使いの点で気になります。綿毛布はオールマイティに使えて、バランスの取れた毛布なんですよ」(加賀さん)
【毛布の選び方2】体の上に掛けるなら薄手、敷くなら厚手を選ぶ
「毛布の厚みは用途によって選びましょう」と、加賀さん。
「毛布を敷く場合は、よれたりずれたりするのを防ぐため、厚手のものを選ぶとよいですね。四隅にずれ防止のゴムが入っているものもいいと思います」(加賀さん)
体の上に毛布を掛けるなら、薄手のものがいいそうです。
「毛布を敷かずに掛ける利点は、温度調節がしやすいこと。あたたかくなりすぎたとき、敷いた毛布だと外すのが大変ですが、掛けた毛布ならサッと布団の外に出すだけで調節できます。その際は、取り扱いやすい薄手のものがいいですね」(加賀さん)
加賀さんのおすすめは、布団に入った瞬間の冷たさを防ぐため最初に毛布を使い、布団の中があたたまったら毛布を外して眠ること。快眠のためのワンポイントテクニックだそうです。
【毛布の選び方3】側生地や布団カバーの素材をチェックする
毛布を選ぶ際は、掛布団の中材だけでなく、中材を包む側生地(がわきじ)や布団カバーの素材とのバランスも大事なのだそうです。
例えば、以下のような組み合わせは要注意。
毛布:化学繊維(アクリル、ポリエステル)の毛布
布団の側生地:70%以上がポリエステル
布団カバー:70%以上がポリエステル
「絶対に守ってほしいのが、吸水性・吸湿性のない素材の寝具に挟まれて眠らないことです。吸水性・吸湿性のない素材に挟まれると、蒸れてあたたかさが過剰になりすぎることもあります。もし羽毛布団の側生地にポリエステルが70%以上使われているのなら、敷き毛布には綿や動物性素材など吸湿性・吸水性のある素材を使うようにしましょう」(加賀さん)
【毛布のお手入れ法】綿・化繊はネットに入れて洗濯機で。
毛布は気軽に洗えるのがいいところ。綿や化繊のものは家庭の洗濯機で洗えるため、シーツ感覚でこまめに洗濯ができます。
「毛布のダニを気にされる方もいますが、そもそも毛布は冬場に使うことが多いため、湿度も気温も低いことから大繁殖のリスクは低めです。また、ダニが住み着いてしまっても、洗濯で50%ほど減らすことができるというデータもあります」(加賀さん)
洗濯をする際は、まず洗濯表示をチェック。洗濯槽の中でからまったりこすれあったりしないよう、畳んで洗濯ネットに入れるのがおすすめです。
生地が衣類よりも分厚いため、洗濯液を生地の内部までしっかりと浸透させることも大事です。洗濯機の「大物洗い」モードなどを利用して、衣類とは分けて洗うとよいようです。
「羊毛やカシミアなどは家庭用の洗濯機で洗うと縮む恐れがあります。クリーニング店でプロに洗ってもらいましょう」(加賀さん)
浴室暖房乾燥機も活用して、大物の毛布を効率よく乾かそう
毛布を洗いたいけど、夜までに乾くかどうか心配・・・という人は、浴室に干すのもオススメです。
日中に人の出入りがない浴室は、大物を干しても邪魔にならず、換気扇もあるため、毛布から蒸散した水分を効率よく室外へ追い出してくれます。さらに浴室暖房乾燥機があれば温風が出て短時間で乾きます。
浴室暖房乾燥機の「乾燥」モードを活用すれば、短時間で効率よく毛布を乾かすことができますね。
おわりに
最近はさまざまな素材の掛布団がありますが、その素材によって毛布は使い分ける必要があります。上でご紹介したように、毛布の正しい使い方をマスターし、快眠環境を整えてくださいね。