「もりそば」と「ざるそば」の違いは海苔のあるなしだけ?
「海苔がかかっているのがざるそば、海苔がないのがもりそばでしょ? 」と思っている人は多いのでは? それは、半分正解で半分間違いです。
確かに現在では、ほとんどの蕎麦屋さんで、「もりそば」と「ざるそば」は海苔の有無だけで区別されています。しかし、実は他にも違いがあるそうです。
「もりそば」と「ざるそば」の大きな違いは、それぞれのそばの歴史にあります。
【「もりそば」と「ざるそば」の違い】もりそばの歴史
「そば」は、初めから今のように食べられていたわけではありません。
昔は「蕎麦掻き」と言って、そば粉をこねて団子状にしたものを、焼いたり蒸したりして食べていたそうです。
麺のようなかたちになったのは16世紀ごろだといわれており、「そば切り」と呼ばれるようになりました。
やがて、江戸時代に入るとそば切りを提供する蕎麦屋が人気となり、つけ汁につけて食べるという、現在のようなスタイルが広がったと言われています。
そして、せっかちな江戸っ子の中に、つけ汁につけるのを面倒臭がる人がいたため、つゆをそばに直接かける「ぶっかけそば」が生まれました。この「ぶっかけそば」と従来の食べ方を区別するために、つけ汁につけて食べるそばを「もりそば」と呼ぶようになったと言われています。
【「もりそば」と「ざるそば」の違い】ざるそばの歴史
こうして生まれた「もりそば」から、ある出来事をきっかけに「ざるそば」が生れます。
江戸の中期、あるお店が他の蕎麦屋との差別化を図り、竹ざるに盛った「ざるそば」を出すようになったそうです。この「ざるそば」が人気となり、次第に他のお店も真似て「ざるそば」を出すようになったと言われています。
もりそばとざるそばの違い
「ざるそば」が生まれた当時は、もりそばとざるそばの違いは「器にざるを使うかどうか」だったそうです。このふたつが「器」以外に区別されるようになったのは、明治ごろだと言われています。
「ざるそば」は当時高価であった「みりん」をつけ汁に加えたり、そばの実の中心部分を使うなどして、「高級なそば」という位置づけになっていきます。さらに「もりそば」と簡単に区別できるよう、「ざるそば」には海苔をかけて出すようになったと言われています。
現在では一部のお店を除き、「もりそば」も「ざるそば」も全く同じ材料で作られている場合が多いそうです。
じゃあ「せいろそば」って?
「もりそば」と「ざるそば」の他に、「せいろそば」もありますね? この「せいろそば」とはどんなそばなのでしょうか?
江戸時代の初期は、そば切りを蒸籠(せいろ)で蒸したものを、「盛り蒸籠」としてお客さんに出すことがあったようです。それが略され、「せいろそば」と呼ばれるようになったと言われています。
また、江戸時代末期、蕎麦屋がそばの値上げを幕府に要求した際、値上げは却下された代わりに量を減らすことを許され、蒸籠に「すのこ」で上げ底をして量を減らし、後にこれが「盛りせいろ」と呼ばれ、「せいろそば」になったという説もあります。
現在の「せいろそば」は、基本的に「もりそば」や「ざるそば」と同じもので、器の違いのようですね。
地域や年齢による!? もりそばやざるそばの呼び方の違い
現在では、その地域や年齢などによっても異なるようですが、「もりそば」と言う言葉を使う人が減少気味にあるようです。
若年層は、海苔がのっていない場合にも「ざるそば」と言うことが多いのに対して、年配世代は、使い分けをしている比率が高いんだとか。
また、西日本では2つをまとめて「ざるそば」と言う人が過半数なのに対して、北海道・関東・甲信越ではきちんと使い分けするという人が過半数を占めるようです。
参考:NHK放送文化研究所「ざるそば」?「もりそば」?
おわりに
「もりそば」と「ざるそば」の違いは、海苔の有無だけではなく、その成り立ちに秘密があったんですね。これからお蕎麦屋さんに行くときは気にしてみてくださいね。