子どもの野菜嫌い、3つの理由と可能性
子どもの食事にまつわる親の悩みで多いのが「好き嫌い」、特に「野菜嫌い」です。
ただ、野菜嫌いを、すぐに克服させようとする必要はないと、私は考えています。
栄養の偏りは気になりますが、医者に注意されるほどの健康状態にならない限り、毎日ご機嫌で、ちゃんとウンチが出ていれば、焦りすぎる必要はないと思います。
無理に克服させようとしたり、親がイライラしていると、かえって食事自体が嫌いになってしまうという場合もあります。
カゴメ株式会社の「子どもの野菜の好き嫌いに関するアンケート調査(平成23年8月)」によると、野菜の好き嫌いのある子どもは約60%。
「以前はあったが、今はない」、つまり、野菜嫌いを完全に克服できた子どもは、10~16%と、意外と少ないようです。
まずは、子どもがどうして野菜嫌いになりやすいのか、その理由や可能性を知ることで、イライラを減らしましょう。
参考:カゴメ株式会社「子どもの野菜の好き嫌いに関するアンケート調査」(平成23年8月)
野菜嫌いの理由【その1】本能で危険を察知している
味には「甘味」「旨味」「塩味」「酸味」「苦味」という基本の味があります。人間はそれらの味を、口内や舌にある「味蕾(みらい)」という器官で感じます。この味覚にはそれぞれに役割があると言われています。
- 「甘味」 ・・・ご飯やパンなどの「炭水化物」に含まれるエネルギー源を知らせる
- 「旨味」 ・・・肉や魚に含まれる「タンパク質」を知らせる
- 「塩味」 ・・・塩に含まれる「ミネラル」を知らせる
この3つの味覚は、生きていくために必要な食べ物であることを体に知らせるため、本能的に好まれる味と言われています。
ところが一方で、「酸味」は「腐敗物や未熟なもの」を知らせ、「苦味」は「毒」の存在を知らせる役割があるそうです。
味覚は経験とともに変化すると言われますが、まだ食の経験が浅い子どもは、本能的に「酸味」や「苦味」を危険な味と認識して、受け付けないと言われています。
野菜嫌いの理由【その2】新奇恐怖(ネオフォビア)
人には「新奇恐怖(ネオフォビア)」といって、初めての物・未知の物を怖がったり嫌がったりする傾向が。味はもちろん、見た目や匂いがいつもと違う食べ物を警戒することは、生き残るための本能的な反応です。
子どもの場合、これは成長するごとに減少するようで、無理に克服させようとするのは逆効果だそうです。
野菜嫌いの理由【その3】HSP(Highly Sensitive Person)
アメリカの心理学者エレイン・アーロン氏は、人口のおよそ15パーセントから20パーセントの人は、「HSP(Highly Sensitive Person)」といって、人一倍敏感な感性を持っていると報告しています。
HSPの子どもは、生まれつき、感受性や共感力がとても強かったり、また、「味覚」や「匂い」に敏感、ということもあるそうです。
(いわゆる発達障害や自閉症とも異なるものです)
こういう子どもは、わずかな味の違いや隠し味を当てられることもあり、味覚が繊細で豊かだとも言えます。そんな特性が、好き嫌いの原因となっている可能性もあるかもしれません。
このように、食べ物に対する「感覚」や「感じ方」は、大人と子どもでも違い、子どもによっても個人差が大きいと言えます。
単なるワガママと捉えるのではなく、自分が感じていることと、この子が感じていることは全然違うのかもしれない、と思えると、少し心にゆとりが持てるのではないでしょうか。
【子どもの野菜嫌いの理由】好き嫌いを少なくする7つのポイント
そうは言っても、栄養バランスも気になるし、色々な物が食べられないままなのはかわいそう・・・という気持ちも、親としてはありますよね。
好き嫌いをなるべく少なくしていくための、7つのポイントをご紹介します。
【ポイントその1】無理やり食べさせない
一番大切なことは、無理をさせ過ぎないことです。
上記の通り、子どもの野菜嫌いにはそれなりの理由があり、無理やり食べさせると、もっと「嫌い」になってしまうこともあります。
子どもにとって一番大切なのは「安心感」です。食べられなくても怒られない、安心感のある食卓を心がけるのが、まずは食事を楽しく感じてもらうために必要です。
今すぐ栄養失調になるとか、成長に影響が出るということはめったにありません。長い目で見て、焦らず気長に「ソフトプッシュ」を繰り返していき、自分から「食べてみようかな」という気持ちになるのを待つことを心がけましょう。
【ポイントその2】家族が楽しく食べる様子を見せる
カゴメ株式会社の調査では、母親の好き嫌いが「子どもの頃からある」場合、子どもも好き嫌いがある割合が全体よりも高かったそうです。母親の嗜好が、ある程度子どもの好みにも影響しているといえそうです。
出典:カゴメ株式会社「子どもの野菜の好き嫌いに関するアンケート調査」(平成20年)
自分も嫌いなものを無理に食べるのは大変ですよね。
ただ、家族が楽しそうに、美味しそうに食べていれば、子どもも安心して、自分も食べてみようかなという気持ちになるのではないでしょうか。
「ママも小さいときは苦手だったんだけど、大きくなったら美味しいと思うようになったんだよ。あなたも、いつか美味しく食べられるようになるかもしれないね」という話をしてみてもよいかもしれません。
【ポイントその3】料理する過程や作る過程を見せる
料理している姿を見せてあげたり、一緒に料理を手伝ってもらうと、食べようかなという気持ちになることもあります。
また、もし行ける範囲に畑などがあれば、野菜が育つ様子を見せてあげるのもよいかもしれません。庭やプランターで育ててみるという方法もあります。
野菜が身近にあり、親しみを感じられる環境が、自分から食べてみようという気持ちにつながっていくかもしれませんね。
【ポイントその4】調理方法や盛り付け方を変えてみる
子どもの味覚は日々成長していきます。匂いや見た目で苦手だった子どもも、調理の工夫によって食べられるようになることもあります。
■調理の前に水にさらしたり、下茹でするなど下処理を行い、臭いを軽減させる
(ねぎ・玉ねぎ・にんじん・セロリなど)
■食べやすいスティック状にして、甘い味噌やマヨコーンなどのディップにする
(にんじん・大根・きゅうりなど)
■星やハート形などカワイイ見た目にする
(にんじん・大根など)
また、お気に入りのお皿を一緒に選んだり、盛り付け方を変えることでも気分が変わる場合もあります。
【ポイントその5】すりおろしたり細かく刻んで混ぜる
子どもによっては、野菜だとわかってしまうとダメな場合もあるようです。細かく刻んだりすりおろして、カレーやハンバーグ、蒸しパンやパウンドケーキなど、料理やおやつに混ぜてみましょう。
とはいえ、意地を張って食べなかったり、やっぱり食べられなかったりすることもあります。せっかく作ったのにとがっかりせず、ダメでもともと、もし食べられたらラッキー! という気持ちがよいかもしれません。
どんな料理にしたら美味しくなりそうか、子どもと一緒に考えてみるのも手です。そして、もし食べられたときは、すかさず一緒に喜んだり褒めたりして、子どもの背中を押してあげましょう。
【ポイントその6】野菜ジュースにする
「野菜ジュース」にするという方法もあります。
市販のものでも、ほとんど果物ジュースのような味の野菜ジュースもありますよね。栄養価はさておき、子どもの苦手意識を少なくするという意味で、色々なジュースを試してみるのもよいと思います。
また、新鮮な野菜なら栄養価も高いので、自宅で作るのもオススメです。好きな果物を混ぜたり、ヨーグルトやハチミツを入れるなど、子どもの好きな味に調整してみましょう。
ジュース作りは簡単なので、子どもと一緒に作ってみるのも楽しいかもしれません。
【ポイントその7】環境を変えてみる
家で食べられなくても、保育園や幼稚園では頑張って食べている、ということもあります。先生と連絡を取って、様子を聞いてみましょう。
また、祖父母など他の人と一緒だと食べられる、外食だと食べられる、キャンプや旅行だと食べられる・・・ということもあったりします。
それなら家でも食べなさい、と言いたくなりますが、逆に、「他の環境では食べてるんならいいか」と、肩の力を抜いてみることをおすすめします。他の人の前だと頑張るけど、ママの前だと気を抜いて甘えるのは、健全に育っている証拠なのです。
ママとしてはちょっと困ってしまいますが、家での食事は楽しいことが、気長に好き嫌いを少なくしていくには大切なことだと思います。
また、子ども向けの料理教室やイベントに参加してみるのも、一つの方法かもしれません。
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おわりに
子どもの好き嫌いは、ある程度は仕方ない面もあるかもしれません。味わう経験を積むことで、好き嫌いを減らせることもあります。
ちなみにうちの子は、比較的何でも食べるので助かっていますが、やはり新しいものはなかなか食べません。上の子と下の子でも違いがあって、上の子の好物を下の子が嫌いだったりして、面白いなあと思っています。環境や育て方だけでなく、生まれつきの体質や好みもあるように思います。
子どもと一緒に楽しみながら、美味しく食べられるものを少しずつ増やしてあげられるとよいですね。
(参考:松成容子・明橋大二「子育てハッピーアドバイス 食育の巻」、1万年堂出版、2014/6/23)