そもそも【家事シェア】って何? 「分担」との違いは?
「家事の分担」と言うと、面倒なことを押し付けあうような印象になりがちです。
つい、お互いの負担が平等かどうかに目がいってしまったり、自分の大変さを主張し合ってみたり・・・。
また、家事には、料理、洗濯、掃除など名前のついたもの以外にも、脱ぎっぱなしの服を片づけたり、不要なチラシを捨てたりといった「名もなき家事」がたくさんあります。
名前のついた家事を分担するだけでは、「主に家事を担当する人」の負担感はなかなか減らない場合もあります。
それに対して「家事シェア」とは、「家の中の仕事を全て『家族事』として捉えること」です。
家族皆がお互いを思いやって、皆で家事に取り組むことが「家事シェア」と呼ばれています。
【家事シェア】今どき家族の家事の実態は?
では、現代の子育て家族では、誰がどのように家事をしているのでしょうか?
東京ガス都市生活研究所の都市生活ミニレポート「30-40代ファミリーの変化」では、その実態を明らかにしています。
夫の家事参加は増えている!
東京ガスでは、1990年から3年ごとに「生活定点観測調査」を行っています。
この中から、30-40代ファミリーの家事実態の変化をご紹介します。
上のグラフは、「夫は家事をどれくらいしますか」という質問に対して、30-40代ファミリー女性の回答です。料理・片付け・風呂掃除の全ての項目で、約20年前に比べて夫の家事参加が増加しています。風呂掃除では「主に担当」する夫が約15%になっていました。
こうした変化は、共働き化が進んだだけでなく、専業主婦家庭でも同様だということが同調査で分かっています。
男女平等意識の広がりから、家事は性別に関わらず行うもの、と考える人が若い世代を中心に多くなっていることが考えられます。
子どもの家事参加が減っている!?
ところが、調査によると、「子どもの家事参加」については、年々減っていることが明らかになりました。
「お子さまは家事をどれくらいしますか」という質問に対して、食料品の買い物、料理、掃除のすべてで、約20年前に比べて子どもの家事参加が減少しています。
2014年にはいずれの家事も「ほとんどやらない」が約7割になっており、「お手伝い」をほとんどしない子どもが多数を占めるようになっていることが分かります。
上のグラフは、子どもが家事を「ほとんどやらない」割合を、末子が小学生以下の場合と中学生以上の場合で比較したものです。
「小学生以下」では「買い物」以外変化がなく、約6~7割の子が「やらない」となっています。
一方「中学生以上」では、1993年では「ほとんどやらない」子は5割弱だったのに対し、2014年では約7割にまで増えています。
つまり、約20年前は、大きくなるにつれて家事を手伝う子どもが多くなっていたのが、現在は、中学生以上になっても、小学生以下と同程度、またはそれ以下しか家事を手伝う子どもがいなくなったことが分かります。
子どもが家事を手伝わなくなった理由は?
子ども達が家事を手伝わなくなったのは、決して怠けているからではありません。
上の図は、NHK国民生活時間調査から、10代男女の平日の在宅時間を見たものです。男女とも在宅時間が減少していることが分かります。また10代男女が、進学のための塾や部活、アルバイトなどで忙しくなっている様子がうかがえます。
忙しい子どもの状況から、親が子どもの都合を優先し、家事の手伝いをさせない家庭が多くなっていることが考えられます。
それに加えて、家事そのものの負担も、機械化や便利な製品・サービスなどによって軽減していることも考えられます。
ちなみに、小学生以下の買い物、いわゆる「おつかい」が減っている理由としては、地域社会の変化や、商店の大型化、交通量の増加といった道路事情の変化などから、小さな子どもを一人でおつかいに出すのが不安になってきたことが考えられます。
「大人」になっても家事をやらない子ども達
では、学業が終われば家事をやるようになるかといえば、そうでもないようです。
都市生活研究所では、「65歳未満の両親と学業を終えた未婚の子どもが同居している世帯」を「大人ファミリー」と定義し、調査しました。この中で大人ファミリーの家事分担について聞いたところ、子どもが家事をしている割合は非常に低いことが分かりました。
ここでの「子ども」は20代~30代の社会人ですが、両親と同居している限り、家事は主に親が行い、「自室の掃除」を自分でする割合も3割程度であることが分かります。
せっかく夫の家事が増えているのに、その次の世代である子どもの家事が減っているという、少しショッキングな実態が明らかになりました。
こうした状況で育った子どもが結婚し、急に家事を行うのは大変かもしれません。
もちろん今後も、機械化や便利な製品・サービス化などは進むことが予想されますが、家事が完全に0になるのは、まだまだ先のことだと考えられます。子どもが小さいうちから、「家事シェア」を「当たり前」にしていくことが、今の家族生活にとっても、将来の子ども自身の家族生活にとっても大切かもしれません。
【家事シェア】をするための4つのポイント
「家事シェア」をしていくための、4つのポイントをお伝えします。
1.「家事は家族皆でするもの」と考える
家事の多くは、マイナスをゼロに戻す地道な作業です。
料理、洗濯、掃除など名前のついたものを分担するだけでなく、「名もなき家事」も含めて、「家のことは皆でやるもの」という意識がまず必要です。
一つのことも皆で手伝えば早く終わる、自分のことは自分でやる、といった感覚を、家族皆で持つようにしましょう。
2.「情報とルール」を共有する
いざ家事をシェアしたくても、何がどこにあるのか、いつ何をしなくてはいけないのか、家事をする人しか分っていない・・・ということがありますよね。
家事シェアするためには、たとえば、何曜日に何ごみを出すのか、ごみを出したら新しいごみ袋を付けること、替えのごみ袋はどこにあるのか・・・といった情報やルールが、家族全員に共有されていることが大切です。
そのために、情報を分かりやすく貼り出したり、物の置き場所を教えるなど、ルールを守れるようにする工夫が必要です。
3. 家の中の「動線」を見直す
これまでママが一人でやっていた場合、その方法を同じように他の人にやってもらうのは、なかなか難しいものです。家族の動きに合わせて、物の置き場所や家事のやり方も見直すことが大切です。
たとえば、子どもが学校から帰ってきて、玄関に置きっぱなしにした荷物を二階に片付けないといけない・・・という家事が発生しているなら、玄関に近いリビングに子どもの「自分専用ボックス」を作ってそこに置けるようにするなど、「自然に効率よく」家事をシェアするための工夫が必要です。
4.「コミュニケーション」を増やす
家事シェアを「当たり前」に、と述べましたが、当たり前のことでも「ありがとう」と声をかけ合うことで、お互いに気持ちよく過ごせます。
よりよい家事の方法を一人一人が考え、それを家族同士で伝え合うことも大切でしょう。
家事をシェアがきっかけで、家族のコミュニケーションが増えて、家族の絆も強くなるかもしれません。
おわりに
今どき家族の家事の実態と、次世代にこそ伝えたい「家事シェア」についてご紹介しました。
家事は自分事と家族一人ひとりが捉え、家族皆で力を合わせて楽しく取り組んでいけるとよいですね。