オートミールとは? 大麦や小麦とどう違う?
オートミールとは、穀物の一種であるオーツ麦(えん麦)のもみ殻を取り除き、食べやすく加工した食品です。オーツ麦というと、大麦や小麦と比べてなじみがないかもしれませんが同じイネ科の植物です。
「オーツ麦は、家畜の飼料として利用されてきましたが、現在では加工技術の発展に伴って食用として広く食べられるようになっています。日本では、2021年から2022年にかけて『オートミール米化(R)』によって大ブレイクしました」(これぞうさん)
オートミール米化とは、オートミールを水と一緒に炊き、ご飯の代わりの主食とすること。これぞうさんは、米化したオートミールをおかずに添えるだけでなく、オムライスやチャーハン、お茶漬けなどもオートミールから作ります。
「これまで『まずい』という先入観を持たれがちだったオートミールですが、米化によっておいしく食べられることが話題になり、ブームを後押ししたんです」とこれぞうさん。いつもの食卓でご飯の代わりにオートミールを添えるだけなら、簡単に取り入れられそうですね。
オートミールの栄養価
オートミールが注目されている理由の一つは、その栄養価の高さ。例えば、麦とろご飯などに使用される「押し麦」の原料となる大麦と比べると、ミネラルの一種であるマグネシウムや、貧血の予防に欠かせない鉄分が2倍以上含まれています。
また、オーツ麦は、小麦と違って「グルテン」と呼ばれるたんぱく質を含んでいません。小麦アレルギーやセリアック病の認知が高まる中、オートミールはグルテンフリー食品(※)としても注目を集めているのです。
(※)商品によってはグルテンが含まれることもあるため、「グルテンフリー表示」や「アレルゲン表示」を確認してください。
「最も特徴的なのは、白米の約19倍も含まれているといわれる食物繊維です。食物繊維には、腸内環境を整え、病気を防ぐ効果が期待されます。中でも、食物繊維の一つである『β−グルカン』は、血糖値の上昇や脂肪の吸収を抑えてくれる働きがあるといわれています。さらに、オートミールには、ダイエットには欠かせないビタミンB群、鉄分やカルシウムなどのミネラルも豊富です」(これぞうさん)
また、白米の茶碗一杯分(約150g)のカロリーが234kcalであるのに対して、オートミール一食分(約30g)のカロリーは約105kcalと、白米の半分以下。
「オートミールは食物繊維が豊富で、腹持ちが良いことが特徴です。食後の血糖値の上昇スピードを示す指標である『GI値』も低いので、食後眠くなりにくいというのも人気の理由なのではないでしょうか。僕はお米が大好きでついつい食べ過ぎてしまうのですが、オートミールであれば一食分が約30gと決まっているのでダイエットにもぴったりですよ。実際、僕は約40kg痩せに成功しました」(これぞうさん)
栄養価が高くヘルシーなオートミール。最近ではさまざまなレシピも考案されているようです。オートミールにはどのような種類があり、どんなレシピに展開できるのでしょうか。
オートミールは全部で5種類
これぞうさんによると、ほとんどのオートミールは加熱調理した後で乾燥させてあるので、短時間の調理でOKだそう。手軽に食べられることはオートミールの魅力の一つですね。
ただ中にはスティールカットオーツのように、生の状態で市販されていて30分ほどの加熱が必要なものもあります。加工の状態によって適した料理や加熱時間が異なるので注意が必要とのこと。詳しく伺った内容を、以下にてご紹介していきます。
オートミールの種類(1)ロールドオーツ
オーツ麦のもみ殻を取り除いた「オートグローツ」を蒸して押しつぶし、乾燥させたものが「ロールドオーツ」です。日本のスーパーでも取り扱いが多く、入手しやすいオートミールといえるでしょう。
そのままでも食べられないことはありませんが、硬くて食べにくいため、加熱調理がおすすめです。調理時間が比較的短く済むのが特徴で、5〜10分ほど煮込むと食べられるようになります。また、オートミールを米化して食べるのに最も適しています。
オートミールの種類(2)クイックオーツ
「ロールドオーツ」を細かく砕いたものが「クイックオーツ」です。必要な加熱時間は1〜2分ほどで、すぐに食べられる手軽さがクイックオーツの一番の魅力。オートミール初心者の方にもおすすめの種類といえます。
クイックオーツは粒が細かいので、汁気の多い料理に向いています。温かいスープにそのまま入れると、もちっとした食感となります。雑炊やリゾットのようにして食べるのもおすすめです。
オートミールの種類(3)インスタントオーツ
「ロールドオーツ」を調理して乾燥させたものが「インスタントオーツ」です。一度調理されているのでそのまま食べることができ、加熱する場合も短時間で調理できます。
また、すでに味付けがされているものが多いのもインスタントオーツの特徴。お湯や牛乳をかけてすぐに食べられる手軽さは、オートミールを初めて食べる方にもぴったりといえるでしょう。
ただし、加熱すると食感がほとんどなくなってしまうため、調理に使用する際は工夫が必要です。
オートミールの種類(4)スティールカットオーツ(挽き割りオーツ)
オーツ麦のもみ殻を取り除き、さらに細かく割ったものを「スティールカットオーツ(挽き割りオーツ)」といいます。オートミールの種類の中では最も無加工に近いタイプのため、外皮や胚芽が残ったままとなっており、栄養価が高いことが特徴です。
スティールカットオーツは「生の麦」なので、食べるには30分ほど煮たり炊いたりする必要があります。ただし、長く煮込み過ぎるとドロドロの食感になってしまうので、煮込み時間には注意が必要です。
スコティッシュオーツ
スティールカットオーツをより細かく砕いたのが、スコティッシュオーツです。スティールカットオーツよりは粒が小さいため、より短い時間で調理できます。
参考:cocolepo
オートミールの種類(5)オーツブラン
「オーツブラン」とは、オーツ麦を製粉する過程で出る、オーツ麦の外皮の粉のことを指します。オートミールの中では最も栄養価が高く、特に「β−グルカン」という水溶性の食物繊維や、ミネラルを多く含んでいます。オートブランやえん麦ふすまとも呼ばれます。
オーツブランは粉状で、味や食感も独特なので、そのまま食べるのにはあまり向いていません。お粥にしたり、クッキーなどお菓子の材料にしたりするのがおすすめです。スムージーやヨーグルトに入れる人も多いようです。
オートミールの種類(6)オーツフラワー
オートミールを粉に挽いたものをオーツフラワーといいます。日本ではあまり市販されていませんが、小麦粉の代わりに使うことができるそうです。
【オートミールの使い方1】米の代用品として
オートミールは、お米の代わりとして主食に置き換えることができます。ご紹介した5種類のうち、どのオートミールがお米の代用品として向いているのか、これぞうさんが教えてくれました。
「『オートミール米化(R)』に向いているのは、水分が染み込みやすく短時間で調理ができるクイックオーツです。オートミール初心者にも食べやすくおすすめですよ。クイックオーツの米化はほぐし方にコツがあり、レンジ加熱後、箸と箸を離しながら持ち、混ぜるのではなくささっと軽くほぐせば完成です。混ぜるようにほぐすと、塊になっていき団子化します。
柔らかめな食感が好きな方はクイックオーツ、かための食感が好きな方はロールドオーツを選ぶのが良いと思います。両方の良いところどりなブレンドをするとお好みの硬さで食べることができ、おすすめですよ!」(これぞうさん)
オートミールを米化しておいしく調理するには、ちょっとしたコツもあるそう。
「オートミールは、お米のようにあらかじめといでおく必要はありません。米化させる際は、オートミール30gに対して水50mlが分量の目安。ロールドオーツの場合、数分水に浸してから調理するのがコツです。火にかける際は、水分を飛ばすように弱火でじっくり煮込むことで、みずみずしい仕上がりにできますよ」(これぞうさん)
忙しいときは電子レンジを活用する方法も。その場合、オートミール30gに対して水50mlほどを回しかけ、電子レンジで1分ほど温めるのだそうです。
オートミール米化は食べやすい? ウチコト編集部でやってみた!
早速、これぞうさんに伺った方法でオートミール米化をやってみました。
試したのは、ロールドオーツ、クイックオーツ、スティールカットオーツの3種類。ロールドオーツは鍋炊きと電子レンジの2種類の調理方法を、スティールカットオーツは電子レンジ調理は推奨されていないため、鍋炊き調理のみを試しました。
上の写真では、上段が電子レンジ調理、下段が鍋調理に並べています。
上段の左が(1)ロールドオーツ(電子レンジ)、右が(2)クイックオーツ(電子レンジ)、
下段の左より、(3)ロールドオーツ(鍋)、(4)クイックオーツ(鍋)、(5)スティールカットオーツ(鍋)の順です。
ロールドオーツは厚みがあるので、かんだ時の歯応えが強いのが特徴です。煮込んだ後も粒がしっかり残っていました。鍋炊きではモチモチの食感になり、電子レンジ調理では、さっぱりした味わいになりました。
一方、クイックオーツは、どちらも白っぽくクリーミーな仕上がりに。電子レンジ調理の方が粒感があり、鍋炊きはお粥に近くよりなめらかです。フルーツなどを添えてポリッジにすると、なめらかな食感が際立ちそうです。
スティールカットオーツは、プチプチとした独特の食感があり、玄米のような香ばしさが感じられました。今回の実験ではこれぞうさんのアドバイスを元に、水気が飛んだらすぐに火を止めて粒感を残して仕上げましたが、どろっとした食感が好きな人は長めに煮込むとよいそうです。
ロールドオーツ、クイックオーツ、スティールカットオーツの調理方法
・ロールドオーツ、クイックオーツの調理方法
鍋の場合:オートミール30gに対して水50mlを回し火にかけ、弱火で水分が飛ぶまで煮込む
電子レンジの場合:オートミール30gに対して水50mlを回し、1分ほど加熱
・スティールカットオーツの調理方法
鍋に入れたオートミール30gに対して水80mlを回し火にかけ、弱火で30分ほど火が通るまで加熱する
【オートミールの使い方2】小麦粉の代わりに
オートミールを小麦粉の代わりとして活用することもできます。
「お好み焼きやピザが特におすすめです。粉状のオートミールを使うのもよいですが、それだけのために買うのが面倒だという方もいらっしゃると思います。そういうときは、オートミールに水を多めに入れて電子レンジで温めた後、ぐるぐる混ぜることで粒感が消え、粉物のように使うことができます」(これぞうさん)
ただ、これぞうさんによると、この方法にはオートミールの種類によって向き不向きがあるといいます。
「『ロールドオーツ』などの大粒タイプだと粒感を消すのが難しいので、『クイックオーツ』など小粒のタイプがおすすめです。僕がよく使うのはクイックオーツタイプのオートミールですね」(これぞうさん)
【オートミールの使い方3】シリアルに、グラノーラとして
オートミールは、シリアルとして食べることもできます。シリアル売り場に行くと、オートミール、ミューズリー、グラノーラなど多様な種類があってどう違うのか戸惑うかもしれませんね。違いを見てみましょう。
・オートミール:オーツ麦を脱穀し加工して食べやすくしたもの。
・ミューズリー:上のオートミールにドライフルーツやナッツなどを加えたもの。味付けされているタイプと、されていないタイプがある。
・グラノーラ:上のオートミールにメープルシロップなどで味付けし、オーブンで焼いたもの。
さまざまな料理に活用できるのがオートミール、シリアルとしてそのまま手軽に食べられるのが、ミューズリーやグラノーラということですね。グラノーラはお菓子感覚で食べられるので、初めての人には取り入れやすいかもしれません。なお、オートミールを購入して自分でオリジナルのミューズリーやグラノーラを作ることもできますよ。
オートミールをそのままシリアルとして食べる場合に、よりおいしくするコツについてこれぞうさんに伺いました。
「シリアルやグラノーラと同様、豆乳や牛乳、ヨーグルトと一緒に食べるのがおすすめです。さらに、ナッツやドライフルーツを入れ、仕上げにはちみつやココアパウダー、シナモンなどを加えると、幸せな気分になれますよ(笑)」(これぞうさん)
なお、そのまま一晩置けば、よりしっとりした食感が味わえる「オーバーナイツオール」にも。シリアルとして食べる場合のこれぞうさんのお気に入りは、ここでもクイックオーツタイプのオートミールだそう。一つ購入しておけばいろいろな使い方ができ、重宝しそうですね。
オートミールの食感が苦手という人には・・・
オートミールは大袋で売っていることが多いので、本当に続けられるのか心配になりますよね。レシピに活用する際のポイントについても、これぞうさんに伺いました。
「カップスープにオートミールをそのまま入れると『ドロっとした食感になり苦手』という声をよく聞きます。そこでおすすめなのが、オートミールを米化させた上でカップスープやお茶漬けに入れることです。そのオートミールを活用すれば、ふっくら・もっちりとした食感を残したまま食べれますよ」(これぞうさん)
さまざまなレシピにアレンジできるのも、「オートミール米化(R)」の楽しみの一つ。いろいろなレシピを試してお気に入りの味わいを探せるといいですね。
これぞうさん「米料理のアレンジは基本的に何でも合います。オートミールの原料となるオーツ麦は麦の一種なので、パスタのような味付けにしてもおいしいです」
おわりに
グルテンフリー生活にトライしたいという方だけでなく、調理の手間を減らしたいという方にとっても、栄養価が高くさまざまな食べ方ができるオートミールは強い味方ですね。これぞうさんに伺ったお話を参考に、オートミール生活を楽しんでみてください。
出典:文部科学省「食品成分データベース」
オートミールはアレンジ自在! 多様なレシピはこちら
ナッツやドライフルーツで自分好みに! 「グラノーラ」
サクサクの食感とメープルシロップの甘みがおいしいグラノーラです。お気に入りのナッツやドライフルーツで、自分好みの味が作れます。
手軽で栄養満点! 「ポリッジ(オートミールのミルク粥)」
イギリスやアメリカで食べられている温かい朝食。手軽に作れて栄養価も高く、忙しい朝におすすめです。
自然な甘み「オートミールのメープルチーズケーキ」
メープルのコクと自然な甘味がおいしいチーズケーキです。オートミールを使用した土台ともよく合います。
ゴマの香りが香ばしい「オートミールセサミクッキー」
オートミールとゴマの香ばしさがおいしい薄焼きクッキーです。
ザクザク食感が楽しい「オートミールクッキー」
クルミの香ばしさにチョコチップとレーズンの甘味が加った、ザクザクした食感が楽しいクッキーです。
優しい味わい「くるみとカルダモンのオートミールクッキー」
カルダモンが香る優しい味わいの素朴なクッキーです。
おやつやおつまみに! 「オートミールチーズナゲット」
手軽に使えて栄養豊富なオートミールに、クリームチーズとベーコンを合わせたナゲットです。おやつやおつまみとしてもおすすめです。
オートミールはアレンジ自在! 多様なレシピはこちら
低カロリーで栄養価の高いオートミールは、朝食やスイーツにぴったりな食材。自分好みにアレンジできるグラノーラやクッキーなどのスイーツ、おやつやおつまみにもおすすめのナゲットなど、オートミールの活用レシピをご紹介します。管理栄養士など食の専門家によるレシピです。おいしく料理を作れるコツ・作り方をぜひお試しください。