フッ素樹脂加工とは?
「フッ素樹脂加工とは、フライパンに食材をくっつきにくくするコーティングです。高温に耐えることができ、非粘着性と滑り性があるため、料理がしやすいだけでなく、汚れが落ちやすいのでお手入れもしやすくなります」(河村さん)
フッ素樹脂加工には、よく知られているテフロン(TM)をはじめ、いくつかの種類があるそうです。
「一般的なフッ素樹脂加工は、ベースコート、ミドルコート、トップコートの3層で構成されています。しかしフライパンをより長持ちさせるために、ほかの素材を混ぜたり、層の構造を変えたりするといった加工をしているものもあります」(河村さん)
・ハードコート
ベースコートにセラミック粉末など硬い材質を混ぜることで、フライパンの耐久性を高めた加工。摩耗に強く、金属のクッキングツールを使っても傷がつきにくい仕上げ。
・マーブルコート
ハードコートの一種で、斑点状にフッ素樹脂を散らした加工で大理石のようなマーブル模様が特徴。表面に細かな凹凸があり、食材との接地面が少なくなるため、滑り性と耐久性に優れている。
・ダイヤモンドコート
人工ダイヤモンドの微粒子粉末をコーティング塗料材に混ぜているため、耐久性に優れている。強度のあるダイヤモンドを使うことでコーティングの耐久性を高めており、金属ヘラなどのクッキングツールも使用することができる。
フッ素樹脂加工のフライパンは、それぞれの特徴を把握して自分が使いやすいものを選ぶとよさそうですね。
フッ素樹脂加工のフライパン 洗い方の鉄則
テフロン(TM)などフッ素樹脂加工のフライパンを長持ちさせるには、普段の洗い方が大切、と河村さんは言います。使用の都度、しっかり汚れを落とすことで、フッ素樹脂加工が長持ちするのだそうです。
洗う時に必ず守ってほしいことを河村さんに教えてもらいました。
【鉄則1】冷めてから洗う
「フッ素樹脂加工は温度変化に弱いので、調理直後に冷水をかけると加工が傷んでしまいます。そのためフライパン使用後はすぐに洗わず、触れるくらいの温度まで冷めてから洗うことをおすすめします。洗う時は水よりも、お湯を使うとよいでしょう。お湯を使うことで急激な温度変化を避けることができ、汚れも緩みやすくなります」(河村さん)
【鉄則2】優しく洗う
「フッ素樹脂加工は傷つきやすいため、硬いスポンジや研磨剤入りの洗剤で洗うことは避けてください。加工に傷がつくと、そこから劣化してしまいます。洗うときはスポンジの柔らかい面で、優しく洗ってください」(河村さん)
ダイヤモンドコートのように金属ツールが使えるフライパンでも、原則は優しく洗いましょう。
【鉄則3】洗った後は拭き上げる
「フライパンを洗ったあとは、取っ手が上になるよう逆さにして立てて水を切ります。立てておくことで、取っ手の水抜き穴から水が抜けていきます。その後は自然乾燥ではなく、拭き上げるようにしてください。自然乾燥をすると水の蒸発痕である白い斑点ができてしまうことがあります。
フッ素樹脂加工のフライパンは温度変化に弱いので、空焚きで乾燥させるのは絶対にやめましょう。空焚きをすることでフライパンの底が膨らむなど、本体が変形してしまうこともあります」(河村さん)
フッ素樹脂加工のフライパン 洗い方の手順
フッ素樹脂加工のフライパンは具体的にどのような手順で洗えばよいのか、河村さんに教えてもらいました。
ちなみに、フッ素樹脂加工のフライパンを食洗機で洗いたいという方もいると思いますが、河村さんによると、「食洗機も乾燥機も、フライパンの取っ手が着脱でき、本体のみになるタイプであれば使用可能です。取っ手が付いたフライパンを食洗機にかけると、取っ手の中に水が入ってしまいさびることで異臭の原因になります。ふたも食洗機や乾燥機は使用しないほうがよいでしょう」とのことです。
【手順1】使い終わったフライパンの汚れや油を拭き取る
使い終わったフライパンは、まだ温かいうちにキッチンペーパーなどで汚れを拭き取るとよい、と河村さんは言います。
「冷めると汚れが固まってしまうので、フライパンが手で触れるくらいになったら先に汚れを拭き取ったほうがよいですね。柔らかいうちは食材の欠片や焦げを拭き取ってもフライパンの傷にはならないので、最初に取り除いてしまいましょう」(河村さん)
最初に汚れを取り除いておけば、洗う時にもラクになりますね。
【手順2】外側を洗う
河村さんによると、フライパンには外側に加工がされているものとされていないものがあるそうです。
「外側にセラミック加工がされているものは、汚れがつるんと落ちやすくなっています。外側の加工の有無は商品によってまちまちですが、洗い方は同じです。中性洗剤を使い、スポンジの柔らかい面でやさしく洗いましょう」(河村さん)
【手順3】内側(フッ素樹脂加工部分)を洗う
「フライパンは水よりも、お湯で洗うと油性の汚れが落ちやすくなります。スポンジの柔らかい面を使用し、中性洗剤で洗ってください。洗剤に研磨剤が入っていなければ、洗い方は特にこだわらなくて大丈夫です。
ただし、汚れが落ちにくいからといってフライパンを水に浸け置きすることは、取っ手に水が浸入しさびの原因になってしまうので避けましょう」(河村さん)
【手順4】洗い流して拭き上げる
洗い流すときは洗剤が残らないように注意し、洗い終わったらフライパンを立てて水を切ります。
「拭き方に内側・外側からなど特に手順はありません。洗って水を切った後は、自宅にある布巾で拭き上げてください」(河村さん)
フッ素樹脂加工のフライパンを長持ちさせるコツ
フッ素樹脂加工のフライパンは、使い方によっても寿命が変化するそうです。なるべく長く使うためのポイントを河村さんに伺いました。
調理中のコツ
河村さんによると、フッ素樹脂加工のフライパンで調理するときにはいくつか注意すべきことがあるそうです。
空だきに注意
フッ素樹脂加工のフライパンは高温に弱く、空焚きすると耐久温度をあっという間に超えてしまいます。フッ素樹脂加工が劣化してしまう原因になるので、空焚きはやめましょう。
予熱する際は30~40秒程度
フライパンに水を落としたときに水をはじく程度が目安です。
調理中の火加減
中火以下が基本ですが、時々強火にする程度は大丈夫です。ずっと強火で調理することは避けましょう。
調理中の差し水
「調理中の差し水はフライパンを急冷するのでやってはいけませんか?」という質問がよくあるそうですが、差し水は問題ないとのことです。
調理中に使用するキッチンツール
フライパンを傷つけにくい角の丸いツールや木製、耐熱樹脂製のツールを使用するのがおすすめです。
保管時のコツ
フライパンには取っ手を取り外して本体を保存容器として使えるタイプのものもあります。料理を手軽に保存できて便利ですが、注意点もあると河村さんは言います。
「フッ素樹脂加工のフライパンの表面には、たくさんの小さな穴があります。料理を入れたまま保存するとその表面の穴から料理の酸や塩分がしみこみ、加工が劣化する原因となってしまいます。そのため調理した料理をフライパンで保存するのは一晩までを目安にし、それ以上は保存容器に移し替えるようにしましょう」(河村さん)
取っ手がはずせないフライパンの場合も、調理した料理をフライパン内に長くおくことは避けた方がよさそうです。
またサイズの異なるフライパンを重ねて保管すると傷がつくのではと心配になりますが、「重ねること自体は特に傷の原因にはならないので気にしなくて大丈夫です。フライパンは平らに置いて保管するのがよいでしょう」と河村さんは言います。
高価なフッ素樹脂加工のフライパンは長持ちする?
フライパンを購入するとどれくらい長く使えるか気になるところです。高価なフライパンの方が長持ちするのでしょうか?
「同じフライパンでも、使う人によって使用頻度や作るメニュー、火力、どんなクッキングツールを使っているかは異なるため、寿命には差がでてきます。そのためフライパンの寿命は一概には言えません。高価なフライパンだから長持ちするわけではなく、日々の扱い方や洗い方によって長持ちさせることができるので、先ほどご紹介した長持ちさせるコツを、ぜひ参考にしてみてください」(河村さん)
劣化したフッ素樹脂加工を復活させる方法はある?
フッ素樹脂加工が劣化したフライパンを復活させる方法はあるのでしょうか。河村さんに聞いてみました。
オイルクレンジングで沈着した油汚れを取り除く
河村さんによると、劣化したフライパンを完全に復活させることは難しいけれど、オイルクレンジングという方法で使用感の改善が期待できるそうです。
「オイルクレンジングとは、フライパンにサラダ油などの食用油を2~3cm程度の深さまで入れ、180度程度で30分温める方法です。30分たったら火を止めて自然冷却します。その後油を処理し中性洗剤で洗うことで、洗剤では落としきれなかった汚れや焦げ付きを取り除くことができます。オイルクレンジングを行うことでフライパンに料理がこびりつきにくくなるなど、使用感が改善されることがあります」(河村さん)
オイルクレンジングで使用した油は汚れを含んでいるので、再利用せず捨てた方がよいそうです。
おわりに
フッ素樹脂加工のフライパンを長く快適に使うためには、日々の洗い方や扱い方が大切であることがわかりました。お手持ちのフッ素樹脂加工のフライパンが少しでも長持ちするよう、まずは調理用品のプロがすすめる洗い方を意識してみてくださいね。
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