寝る前のストレッチが睡眠の質をアップする理由とは
寝る前のストレッチが睡眠の質を高める方法として注目されています。寝る前に運動をすると目が冴えてしまう気もしますが、なぜ快眠に繋がるのでしょうか。リラクゼーションセラピスト養成スクール・リラクカレッジ学院長の舘野さんに詳しくお話を伺いました。
舘野さん「寝る前はなるべくリラックス状態を作りましょう。リラックス状態とは、日中の強い活動状態が鎮められている状態のことをいいます。体を活動的にする交感神経よりも、体を休息に導く副交感神経が優位になるように、ストレッチによって自律神経を整えていく必要があるわけです。
ストレッチをすると、日中の活動で緊張状態になった筋肉などがほぐれていきます。緊張を和らげることで、体中を緊張させている交感神経が鎮まり、副交感神経優位になっていきます」
寝床に入る前にリラックスした状態を作り出すことが大切で、ストレッチは、この「リラックス状態」をつくり出すのにとても有効なんですね。
寝る前のストレッチで睡眠の質をアップする方法とは?
舘野さんに寝る前にやるべき「6つのストレッチ」を教えていただきました。以下6つのストレッチは、それぞれ10分ほどかけてゆっくりと行います。
ポイントは、頑張りすぎないこと。痛みを感じるまで、足がつってしまうまでやるのは、ストレッチを習慣づける妨げになってしまうそうです。
舘野さん「人は気持ちよさを感じられないと、続けられません。習慣にするには、自分が心地よいと感じられるところでとめるのがコツです。気持ちよかったからまた明日もやろう! と思えるよう、頑張りすぎないでくださいね」
【寝る前のストレッチ1】頸(くび)ストレッチ
まずは頸(くび)まわりをほぐすストレッチから。あぐらで座り、頸まわりを前後左右にほぐしていきます。
頸(くび)から背中にかけての後ろ側を伸ばす
息を吸い、後頭部に両手を乗せます。フーッと息を吐きながら、肩甲骨まわりから背中・頸全体が伸びるように、手の重さで頭を下へ落とします。
背中が軽く丸くなるのを意識しましょう。
頸(くび)前面を伸ばす
顎(あご)を両手の親指で持ち上げます、息を吸い、フーッと吐きながら、胸~頸の広い範囲の筋肉を伸ばします。頭の重みで、胸までの筋肉をゆっくりと伸ばすイメージで。
頸(くび)の左右を伸ばす
息を吸いながら頸を右、左に傾け、手の重みで頸の横を伸ばしながら息をフーッと吐きます。
【寝る前のストレッチ2】腕ひっぱりストレッチ
次は、腕まわりのストレッチ。あぐらをかいて座ります。後ろに体重をかけながら座りましょう。ストレッチの効果が高まります。
腕を前にひっぱる
手のひらを自分の顔側に向けて、体の前で手を組みます。腰から背中全体が丸まるように、腕を引っ張ります。ゆったりとした呼吸を忘れずに。
腕を左右にひっぱる
手首を持って左右にひっぱりながら、腰から背中の左右の筋肉が伸びるように体を倒します。ゆったりとした呼吸を忘れずに。
腕を後ろにひっぱる
両手を背中の後ろに回し、手のひらを体側に向けて手を組みます。腕を後ろにひっぱりながら、胸や体の前面が全体に伸びるように、体を後ろへ傾けます。胸をひらいて肺に空気が入るように。ゆったりとした呼吸を忘れずに。
【寝る前のストレッチ3】あぐら足パタパタストレッチ
あぐらのまま膝の上に手を乗せ、膝を押しながらゆっくりと膝を上げ下げします。脚のつけ根=鼠径部(そけいぶ)はリンパなどが集まっている部分なので、鼠径部を伸ばすと流れが整えられます。
【寝る前のストレッチ4】股関節ぶらぶらストレッチ
脚を前に出す「長座」(ちょうざ)で座ります。両手は後ろについて、股関節から脚をぶらぶらと左右に動かします。
左右にぶらぶら
長座のまま、右、左へ脚全体を動かします。脚のつけ根から動かすのを意識して。
内外にぶらぶら
長座のまま、外側、内側へ脚全体を動かします。脚のつけ根から動かすのを意識して。
【寝る前のストレッチ5】足クロスストレッチ
床に仰向けに横たわり、膝を曲げて体の反対側に倒します。左右どちらも、体が気持ちいいと感じるまで行いましょう。腰全体が伸びるように、ゆっくりとした呼吸を忘れずに。頭を膝と反対向きにすると、背中も伸ばされてストレッチ効果がアップします。
【寝る前のストレッチ6】全身背伸び
最後にグーッと、バンザイをして両手両足を伸ばします。思いっきりグーッと伸ばしましょう。つま先を伸ばすとふくらはぎがつりそうになる人は、つま先は上に向けたままでOK。
リラックス効果を上げる「寝る前ストレッチの3つのコツ」
「ストレッチ」は「伸ばす」という意味を持つ言葉。文字通り、体の各部位を伸ばしていくわけですが、リラックス効果を上げるには伸ばし方にもコツがある、と舘野さんは言います。
コツ1. ゆったりとした呼吸で行う
「ストレッチで最も重要なのは呼吸」と、舘野さん。
腹式呼吸など特別なことをしなくても、ゆったりと深い呼吸をしながらストレッチをすると副交感神経が優位になりやすいのだとか。
舘野さん「1, 2, 3で吸って、1, 2, 3, 4, 5で吐くというイメージですね。息は吸うよりも吐くほうを長めに、吐くほうにより意識を持って行うことで、ゆっくりと深い呼吸が自然にできるようになります」
コツ2. 大きな動作で筋肉をまとめてほぐす
リラックス効果を高めるには「大筋群」(大きな筋肉のまとまり)を大きくゆっくり動かすのがコツ。
舘野さん「前腕など一つ一つの小さな筋肉を局所的に狙っていくと、ケアにかける全体時間が長くなってしまいます。また局所的なストレッチは伸び感が強く出やすいことで、筋肉が緊張状態に陥りがちです。速い動きや、反動をつけて可動域を広げるような動きも体を覚醒させてしまいます。大きな筋肉を、大きな動作でゆっくりと動かすのを心掛けましょう」
コツ3. お風呂で体を温めてから行う
ストレッチを行うときは、体を冷やさないのが鉄則。室温22℃~24℃前後、湿度50~60%前後の快適な部屋で、できれば体が温まっているお風呂上がりに行うのが理想だそう。
舘野さん「筋肉も"肉”ですから、スーパーのお肉と同じように、冷えると硬くなるのです。硬くなると、ストレッチしたときに痛みが出やすくなります。痛みの刺激はリラックスを妨げますので、部屋や体を温めた状態で行いましょう。床が冷たいときは、ヨガマットなどを敷くといいですよ。布団やベッドの上でもいいですが、ある程度の硬さがあるほうが、体の動きが安定してストレッチしやすいと思います」
「寝る前ストレッチ」が逆効果に!? やってはいけないNG2つ
NG1. 痛みを感じるほど頑張ってしまう
ストレッチの際「あいたたた!」と声が出るほど、無理をして伸ばすのは避けましょう。
舘野さん「痛みは脳や体を覚醒させます。痛みの刺激から体を守ろうと、筋肉は防御モードに。寝る前のストレッチは柔軟性を高めるものではなく、あくまで筋肉の緊張をほぐすものですから、痛みを感じるような動作はNGです」
NG2. アップテンポの曲をかけたり、スマホを見ながらやってしまう
明るいところやアップテンポの曲は、覚醒につながります。眠気を呼ぶホルモンをうまく働かせるためにも、照明やBGMにこだわってみましょう。
舘野さん「現代人は夜も煌々とした明かりの中で過ごしますよね。スマホやゲーム機の強い光が目に入ると、覚醒が長くなって睡眠の質が悪くなってしまいます。ストレッチをする際は、部屋の明かりを暖色系の色温度が低いものへ。ゆったりとしたリズムの音楽で、耳からの刺激もなるべく少なくしましょう」
さらに睡眠の質アップ! リラックス入浴法とは?
体をしっかりと温めておくと、ストレッチの効果はさらに高まります。ウチコトではさまざまな入浴法をご紹介しています。リラックスのための入浴法は、ストレッチ前に特に効果的。
お風呂の力を借りて、リラックス効果を高め、心地よい眠りを手に入れましょう!
おわりに
ストレッチを続けるコツは頑張らないこと、という言葉が印象的でした。「とにかく痛みを感じるほど伸ばすのはNG! 効果を上げようと頑張りすぎると、ストレッチの意味がなくなります」という舘野さんの言葉に励まされながら、まずは1週間、続けてみたいですね。
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