入浴が身体に与える作用と効果
入浴には、「温熱作用」「水圧作用」「浮力作用」の3つの作用があります。
温熱作用
お湯で身体を温めます。手足の血管を開き、血液の流れを促進し、血行が良くなります。水は空気より熱伝導率が高いため、お湯の中に浸かることによって素早く熱を与えることができます。
水圧作用
お湯に浸かっている部分に対して水圧がかかり、身体の表面から内側に圧力がかかり(静水圧)、血液循環に作用します。
お湯に浸かっている部分が圧力を受けるため、半身浴よりも全身浴の方が影響が大きいです。
シャワー浴は、水流の刺激によるマッサージ効果が期待できます。
浮力作用
お湯に浸かっている部分に対して、その体積の水の重さの浮力が身体に働き、体重が軽くなります。
全身浴の場合は、空気中と比べて約10分の1となります。お湯の中では普段身体を支えている下半身への体重負担が減り、関節の痛みが和らいだりもします。
入浴は身体をきれいにするだけでなく、温まったり、心身の疲れをとることを目的として行っている人も多いですね。次に「疲れをとる」のに効果的な入浴法を紹介します。
【疲れをとる入浴法】筋肉疲労に効く「全身浴」
身体の疲労回復効果を確認する実験を行ったところ、40℃10分の全身浴で筋肉疲労の回復が有意に高い結果となりました。
実験は、筋肉疲労を起こす作業の後に、40℃10分の全身浴を行った場合、40℃10分のシャワー浴を行った場合、入浴を行わなかった場合について、筋肉疲労の指標となる筋電図の平均周波数の変化を比較したものです。
その原因として、筋疲労の回復と深部体温の上昇に相関がみられており、全身浴による温熱作用が影響していると考えられます。
【疲れをとる入浴法】肩こりに効く「40℃10分の全身浴」と「半身浴+シャワー浴」
肩こりの緩和について実験を行ったところ、40℃10分の全身浴で、肩こりが緩和する結果がでています。
お湯の温度40℃と38℃で全身浴を10分行い、入浴前後の肩の筋肉のかたさを評価したところ、40℃の方がやわらかくなっています。
また、同じ40℃の全身浴で入浴時間5分と10分の比較を行った結果は、10分浸かった方が筋肉がやわらかくなっています。
近年、体への負担が小さくリラックス効果のある半身浴が着目されているため、半身浴にシャワー浴を組み合わせた入浴方法についても検証してみました。
1時間のタイピング後、40℃10分の全身浴をした場合と、38℃20分の半身浴後+42℃のシャワーを背中から首の付け根にかかるように3分浴びたところ、全身浴と同じくらいの効果が得られることが分かっています。
【疲れをとる入浴法】脳の疲れの解消には「全身浴」
精神疲労(脳の疲れ)も入浴で緩和することが出来ます。
精神疲労の指標であるフリッカー値を使って、精神疲労に対する入浴の効果を検証した結果が上の図で、入浴前に行った疲労タスク(眼や脳の疲れを起こす作業)前後でのフリッカー値の変化量と、入浴後に行った疲労タスク後のフリッカー値の変化量との差を表したものです。
全身浴では入浴しない場合と比べて有意な差が見られており、精神疲労が軽減する結果となっています。
【疲れをとる入浴法】眼精疲労の解消には「42℃のシャワー浴」
パソコン等のOA機器の使用は、知らず知らずのうちに眼精疲労を蓄積してしまっています。そうした眼の疲れを手軽にとることができるのが、シャワー浴です。
眼を疲れさせる眼精疲労タスク後に視力が低下し、その後、シャワーを片目に3分ずつ当てることの効果を確認したところ、42℃のシャワー浴で視力が有意に回復しました。
32℃のシャワー浴では有意な結果は得られなかったので、水流による水圧作用ではなく、お湯の温熱作用によるものと考えられています。
眼に直接温かいシャワーを当てることで、シャワーの温熱効果により眼の疲れを早期に回復させる効果が期待できます。
おわりに
お風呂にはさまざまな疲れを緩和する効果があります。1日の終わりにお風呂に浸かって、忙しい毎日をリセットする時間を作ってみてくださいね。
入浴法やお湯の温度の違いで、身体への効果も異なります。目的に合わせて使い分け、入浴を活用しましょう。