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【入浴×スポーツ 第3回】ケガや痛みに備える! 関節の痛みを緩和するには?【東京ガス都市生活研究所】

スポーツ後のケガや関節痛などの痛みは辛いですよね。スポーツ後に入浴をすることで疲労や痛みを回復させてくれます。また、スポーツ前に上手く入浴を取り入れるとケガや痛みへの対策ができ、関節の痛みを緩和してくれるのをご存知でしょうか。今回は、ケガと痛みに備える入浴法について、同志社大学の北條達也先生にお聞きしました。

関節の痛みにも!? ケガと痛みの予防や緩和に入浴が良いってホント?

足首に包帯を巻く
PIXTA

スポーツは楽しいものの、ケガや関節痛などの痛みに悩むケースは少なくないのでは?

「入浴×スポーツ」をテーマに、さまざまな専門家にお話を伺い、第1回では疲労回復と血流の関係、第2回はスポーツ後におすすめの入浴法をご紹介しました。第3回となる今回は、スポーツ前に入浴することで、ケガと痛みへの備えが期待できるのではと考え、スポーツ傷害の疫学・予防を専門とする同志社大学の北條達也先生にお聞きしました。

スポーツによる関節や軟骨の痛み、ケアしていますか? すり減るとどうなる?

膝をおさえる
PIXTA
スポーツによる痛みといえば、筋肉や腱などの炎症が代表的ですが、関節や関節のクッションである軟骨について気にしたことはありますか? 筋肉は血液が循環することで、損傷した細胞を再生させますが、軟骨には再生の原料を運ぶ血管がありません。また、軟骨の中にある軟骨細胞には軟骨自体を再生する能力がほとんどないため、今ある軟骨を長持ちさせて維持することが大切です。

また、関節や軟骨は動かすことを目的として作られているので、体重を支えながら身体を動かすという刺激が必要です。例えば筋肉がトレーニングで太く強くなるように、軟骨に適度な運動で負荷をかけると維持に繋がります。

北條先生によると「スポーツをする人の中には、関節の痛みを抱えている人が多くいます。原因はスポーツなどで負荷をかけすぎて起こる関節の炎症や軟骨のすり減りが考えられますが、すり減った軟骨は再生することができません。そのため、だんだん軟骨内の軟骨細胞が減り、細胞が作り出すコラーゲンやヒアルロン酸なども減るため、軟骨の表面がざらついて次第に削れてなくなります。こうなると間に軟骨をはさまずに骨と骨が直接こすれて痛みを感じ、痛み止めなどの対処療法や人工関節置換術などの治療を検討することになります」とのこと。

現在の医学ではまだ軟骨を作り直すことは難しいようですが、少しでも良い状態で維持する方法はないのでしょうか? 北條先生は「軟骨細胞にとっていい環境を作り、適度な刺激を与えると、軟骨細胞が“軟骨を維持するための材料”を作って供給します。その刺激のひとつに身体を動かすことがありますが、温熱の刺激で代謝を上げるのも有効です」と話しています。

冷えやすい軟骨! 温熱によるメンテナンスが必要だった!

足のスケルトン図
PIXTA
指や肩、ひじ、ひざ、足首をスムーズに動かすために、邪魔な物があると動きが制限されてしまうので、関節の上には筋肉がありません。よく「関節を冷やすと良くない」と言いますよね。これは、関節の上に筋肉がない→血流が乏しく保温力が弱い→冷えやすいという意味なのです。筋肉に囲まれていないため冷えやすい関節ですが、逆に入浴などで温めやすい場所であるとも言えます。

軟骨細胞は39~41度で温めると、軟骨細胞は元気になり、軟骨の維持に重要なコラーゲンやプロテオグリカンの分泌が促進されます。また、細胞の温度が上がるとヒートショックプロテイン(HSP70)が出てきます。

ヒートショックプロテインとは、熱などのストレスにさらされると現れるたんぱく質で、細胞を保護したり、傷んだ細胞を修復したりする働きがあります。分子量によっていろいろな種類がありますが、軟骨に発現する代表的なものは分子量が70kDa(キロダルトン)のHSP70です。軟骨の維持には、軟骨細胞の活性化とヒートショックプロテインの両方が重要なポイントになります。

北條先生は「ヒートショックプロテイン(HSP70)は温度を上げれば上げるほど増加しますが、軟骨細胞が生存できる温度は限られています。軟骨細胞は41度よりも高くなると逆に元気がなくなり、43~45度になると死滅し始めます。軟骨細胞が元気になってコラーゲンなどをたくさん分泌し、細胞を守るヒートショックプロテイン(HSP70)を出すちょうどいい温度が41度なのです」と話しています。
2回目に45℃15分の温熱負荷をかけた際の細胞生存率
※1)出典(北條 達也ほか,2017)
上のグラフは、培養した軟骨細胞に37度~43度で15分温めた8時間後に、さらに45度15分の強い温熱負荷を加えた後の軟骨細胞の生存率を調べたものです。41度で温熱刺激を行った場合、ヒートショックプロテイン(HSP70)の働きにより、細胞の生存率が最も高くなっていることが分かります。

軟骨を元気にするには入浴が◎

湯船に入る女性
PIXTA
治療ではなく「軟骨の維持」を目的にするのであれば、自宅での入浴がおすすめ。毎日温めることで、軟骨を維持し、変性を遅らせることが期待できます。

熱いお湯に短時間入るよりも、ぬるめのお湯に10~15分入浴するほうが、温熱の効果が得られます。お湯が熱すぎると血圧や心拍数が上がって循環器に負担がかかるので要注意。額にじんわりと汗をかき始めたら、湯船から出るようにしましょう。


入浴による温熱のおすすめの方法

浴室リモコン
PIXTA
(1)自分で心地よいと感じる温水(41度以下)に入浴する。
(2)額にじんわりと汗をかき始めたら、湯船から出る。目安は15分程度。

体重がかかるひざ関節は痛みが出やすいので、入浴が難しいときは、ひざまでの足浴などで温めて軟骨をメンテナンスしましょう。

スポーツ前の入浴はどんな効果がある?

ジョギングする女性
PIXTA
ある実験によると、温熱刺激のあと、72時間は継続してヒートショックプロテイン(HSP70)が出ていることが分かりました。※1)出典(北條 達也ほか,2017)

スポーツ選手の中にはケガへの対策や運動機能・免疫力のアップを目的に、競技前に入浴をしてヒートショックプロテイン(HSP70)を出して、競技に備えるという人もいるようです。

また身体を温めると、軟骨を維持するだけでなく筋肉や腱の伸縮性が良くなり、肉離れなどの対策にもなります。スポーツをする前は、入浴で身体を温めて軟骨と筋肉を保護し、スポーツの後は入浴で血流を良くして、疲労や痛みを回復するために入浴を習慣にしましょう。

おわりに

筋肉のように再生する能力がほとんどない軟骨は、維持することがとても重要です。ヒートショックプロテイン(HSP70)は温度を上げれば上げると増加しますが、軟骨細胞が活性化するのは41度以下です。ヒートショックプロテイン(HSP70)と軟骨細胞の活性化、両方の効果を引き出すためには41度くらいで入浴するのがおすすめなのです。お湯の温度の感じ方は人によって違うので、41度を熱く感じる人は無理する必要はありません。それ以下でも十分効果はあります。スポーツをする人はもちろん、スポーツの習慣がない人も毎日の入浴で軟骨を温め、ウォーキングなどで軟骨に刺激を与えて軟骨を維持しましょう。次はランナーと入浴の関係について、ご紹介します。


※1)出典 同志社大学大学院スポーツ健康科学研究科 北條 達也ほか,日本生体電気・物理刺激研究誌(JJBEPSRS)31:11-20,2017

プロフィール

北條達也(ほうじょうたつや)教授
北條達也(ほうじょうたつや)

同志社大学 スポーツ健康科学部 教授

【略歴】
1988年 京都府立医科大学卒業 整形外科教室入局
1994年 京都赤十字病院 整形外科医員
1997年 明治鍼灸大学鍼灸学部 整形外科講師
1999年 明治鍼灸大学鍼灸学部 整形外科教授
2003年 京都府立洛東病院 整形外科医長
2005年 京都府立医科大学 整形外科講師
2006年 京都府立医科大学附属病院 リハビリテーション部講師(兼任)
2008年 同志社大学スポーツ健康科学部 教授(現職)
2010年 同志社大学大学院スポーツ健康科学研究科 教授(現職)

【研究分野/専門分野】
整形外科学、スポーツ医学、リハビリテーション医学

2020年02月17日

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