パサつく鶏むね肉は、土鍋でジューシーに!
価格も手ごろな鶏むね肉は、ぜひ食卓に取り入れたい食材の一つですよね。でも調理すると、どうしてもパサつきがちで・・・とお悩みの方も多いことと思います。そんな時には土鍋を活用してみてはいかがでしょうか? 土鍋を使って鶏むね肉をジューシーにやわらかく調理する方法について、東京ガス都市生活研究所の実験からご紹介します。
実はすごい! 土鍋の保温力!
土鍋というと、冬の鍋物くらいでしか活躍しない・・・と思っている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、土鍋は、一般的なゆきひら鍋などと比べると、保温力が格段に優れているのをご存じでしょうか? 土鍋の保温力を確かめるため、実験を行った結果をご紹介します。
一般的なゆきひら鍋と土鍋の保温力を調べるため、鍋に2Lの水を入れ、沸とうしたら火を消し、水温が70℃に下がるまでの温度と時間を測ってみました(図1)。
ゆきひら鍋よりも土鍋の方が、火を消した後の温度低下にかかる時間が長く、70℃以上を保っている時間は、ゆきひら鍋よりも約17分も長くなりました。ここからも土鍋の方が、保温性が高いことが分かります。
では、この保温力をどう調理に生かしたらよいのか、ポイントをご紹介します。
土鍋の余熱だけで鶏むね肉に火が通る!!
肉がパサパサになってしまう原因の一つは、「火を通しすぎること」です。
上記でもご紹介したように、土鍋は金属製の鍋と比べて、保温力が優れています。そこで、ここではその保温力を活用して調理してみます。
土鍋(白刷毛目深鍋8号)に2Lの水を入れ、沸とうしたら約300gの鶏むね肉を入れてふたをして消火し、そのまま40分ほど放置しました。水温、鶏肉の温度変化を測定し、肉の中心温度が75℃で1分継続相当(※)の、食中毒防止の加熱条件をクリアした時点で、調理を終了しました。ここから、土鍋を使うと、沸とう消火後の余熱だけで鶏肉を加熱できることが温度変化から分かりました。
(※)厚生労働省により、食肉による食中毒防止のための加熱条件として、中心部を「75℃で1分」もしくはそれと同等な加熱を行うことが必要とされています。(厚労省:食肉の加熱条件に関するQ&Aより)
土鍋の余熱だけで、鶏むね肉がジューシーでやわらかく
次に、ゆきひら鍋と電子レンジを使って次のように調理を行い、調理前後での鶏むね肉の重量変化を土鍋調理のものと比較しました。
■ゆきひら鍋:ゆきひら鍋(アルミ製・径24㎝)に水2Lを入れてふたをして点火し、沸とう後、鶏むね肉を入れて加熱を継続し、肉の中心温度が75℃で1分継続した時点で調理終了。
■電子レンジ:鶏むね肉を耐熱皿に載せてラップして加熱し、内部温度が80℃になったら調理終了。
鶏むね肉の重量残存率を見ると、土鍋が他の2種類の加熱方法よりも調理による重量の減少割合が小さくなりました。
土鍋調理の方が、加熱による肉内部の水分や肉汁などの減少した割合が少なく、結果的に重量減少を防げていることが分かります。つまり、土鍋の余熱で調理した方が、ジューシーに仕上がると言えそうです。
では次に、加熱調理後の肉のかたさ・やわらかさも比較してみましょう。
土鍋、ゆきひら鍋、電子レンジ、それぞれで調理した鶏むね肉のかたさを測定したところ、かたい順に、電子レンジ>ゆきひら鍋>土鍋の順となりました。やはり、土鍋が最もやわらかいことが分かります。
おわりに
火を通すとパサパサになりやすい鶏むね肉でも、土鍋の余熱を使うとジューシーでやわらかく調理することができそうです。余熱だけで、肉の調理ができる土鍋の保温パワーはすごいですね!
この特性を生かしたレシピを2点ご紹介します。
1つ目に紹介する「サラダチキン&鶏チャーシュー」は、鶏肉特有の臭みもなく、しっとりやわらかい仕上がりが特徴です。また、2つ目の「茹で鶏のハニーマスタードソース&春野菜と卵のスープ」は、1回の調理で2品作れる同時調理です。パンを添えれば、お手軽に1食分のメニューになります。鶏肉のうまみを存分に生かした無駄のないレシピです。ぜひご家庭でお試しください。
サラダチキン&鶏チャーシュー
【材料(4人分)】
■サラダチキンの材料
鶏むね肉・・・1枚(約300g)
[A]
砂糖・・・小さじ1/2
塩・・・小さじ1/2
白ワイン・・・大さじ1
《ニンジンドレッシング》
ニンジン・・・100g
タマネギ・・・20g
リンゴ酢・・・大さじ2
塩・・・小さじ1/4~
ハチミツ・・・小さじ1
サラダ油・・・大さじ3
葉野菜、ラディッシュなど・・・適量
■鶏チャーシューの材料
鶏むね肉・・・1枚(約300g)
[B]
ハチミツ・・・大さじ2
酒・・・大さじ2
醤油・・・大さじ3
長ネギ(青い部分)・・・適量
ショウガ(薄切り)・・・2片
五香粉(好みで)・・・適宜
コショウ(黒)・・・適宜
長ネギ(白い部分)・・・適宜
香菜・・・適宜
水・・・1.5L
【準備】
・ニンジンドレッシングの材料はミキサーにかけます。
・長ネギ(白い部分)は縦半分に切り、芯を除いてせん切りにします。水にさらして水気をきり、白髪ネギにします。
【作り方】
1. サラダチキンを作ります。
鶏むね肉は皮をとって厚手のポリ袋に入れ、Aを順に加えてその都度よくもみ込み、空気を抜きます。
鶏チャーシューを作ります。
鶏むね肉は皮を取って厚手のポリ袋に入れ、Bを順に加えてその都度よくもみ込み、空気を抜きます。それぞれ室温に約30分置きます。
2. 土鍋に布巾を敷き、水を入れてふたをし、強火にかけます。鍋ぶたの穴から蒸気がしっかり上がったら素早く1を入れてふたをし、再び蒸気が上がったら火を止めます。そのまま余熱で60分保温します。
3. 葉野菜類は洗って水気をきり、食べやすい大きさにちぎります。ラディッシュは薄切りにします。
4. サラダチキンは1.5cm角に切り、3と共に盛りつけてニンジンドレッシングをかけます。
5. 鶏チャーシューの煮汁をフライパンに濾し入れ、とろみがつくまで中火で煮詰めます。鶏チャーシューを入れてからめます。
6. 鶏チャーシューは食べやすい厚さに切り、器に盛りつけます。好みでコショウを振り、白髪ネギと香菜を添えます。
【アドバイス】
1. 布巾を敷くことで、ポリ袋が土鍋に直接触れないようにします。
2. 鶏チャーシューの五香粉は、入れなくても美味しく仕上がりますが、加えるとより本格的な風味が楽しめます。
茹で鶏のハニーマスタードソース&春野菜と卵のスープ
【材料4人分】
鶏むね肉・・・2枚(1枚約300g)
[A]
水・・・4カップ
塩・・・小さじ1
《ハニーマスタードソース》
粒マスタード・・・大さじ2
ハチミツ・・・大さじ1
レモン汁・・・小さじ2
塩・・・少々
オリーブ油・・・小さじ2
《スープと付け合わせ》
鶏の茹で汁・・・適量
ジャガイモ・・・2コ
ニンジン・・・1本
キャベツ・・・150g
卵・・・4コ
イタリアンパセリ・・・適量
塩、コショウ、粉チーズ・・・各適宜
【準備】
・鶏むね肉は室温に約30分置きます。
・ハニーマスタードソースの材料を混ぜ合わせます。
【作り方】
1. 鶏むね肉は皮を取ります(皮は捨てずにとっておきます)。ジャガイモは皮をむいて1コを6~8等分にします。ニンジンはピーラーで薄くむきます。キャベツは千切りにします。
2. 土鍋にAを入れ、ジャガイモ、鶏むね肉と皮を入れて強火にかけます。
鍋ぶたの穴から蒸気がしっかり上がったら火を止めます。そのまま余熱で約30分保温します。鶏むね肉とジャガイモを取り出します。
3. 2の茹で汁を沸かしてニンジンの半量をサッとくぐらせ、取り出します。
4. スープを作ります。
3に残りのニンジンとキャベツを入れてひと煮立ちさせ、卵を1コずつ割り入れ、ふたをして火を止め、5分程置きます。器に盛りつけ、好みで塩、コショウ、粉チーズを振ります。
5. 茹で鶏は厚めにスライスし、ジャガイモ、ニンジン、イタリアンパセリと共に器に盛りつけます。
ハニーマスタードソースをかけます。
【アドバイス】
1. 鶏むね肉は火通りをよくするために皮を取りました。取った皮も一緒に加熱することでうま味が出ます。
2. スープの卵は、好みのかたさになるまで置きましょう。5分ほどで半熟になります。
執筆:東京ガス都市生活研究所
レシピ監修:東京ガス 食情報センター