残り湯洗濯のメリットとは?
お風呂の残り湯、そのまま捨ててしまうのはもったいないと洗濯に活用している方も多いと思います。でも、気になるのが衛生面ではないでしょうか? 住生活ジャーナリストの藤原千秋さんによると「残り湯洗濯は、入浴直後の夜に行うのがおすすめです」とのこと。残り湯洗濯のメリットと上手に残り湯洗濯するための注意点などを伺いました。
節水で年間7,000円の節約効果!
お風呂の残り湯を洗濯で再利用することは節水につながり、経済効果も期待できます。
8kgタイプの縦型全自動洗濯機の場合、通常の洗濯だと水道代が1回24.8円かかるところ、残り湯を利用すると5.9円に。年間で計算すると約7,000円もの節約になります。
参考:東京ガス ウルトラ省エネブック「お風呂の残り湯は温かいうちに洗濯に利用」
お湯は汚れが落ちやすい
残り湯洗濯では、お湯を使って洗うことで汚れ落ちがよくなるというメリットがあります。
「洗濯洗剤には界面活性剤が含まれており、それが汚れを包み込んで落としてくれます。お湯を使うことで、界面活性剤の働きを助ける酵素の働きがより活発になり、洗剤の洗浄効果を高めてくれるのです」(藤原さん)
お湯の温度は高ければ高いほどいいというわけではなく、水温が30度くらいあれば酵素の働きは十分活性化するそうです。
他にもお湯で洗濯するメリットに、洗剤の溶け残りを防ぐ効果もあると藤原さんは言います。
「最近では液体洗剤タイプが多く販売されていますが、粉状やせっけんタイプの洗剤の場合は、水よりお湯の方が溶けやすくなります」(藤原さん)
ただし「血液や排せつ物などのタンパク質の汚れは、熱を加えると固まってしまう性質があります。そういった汚れの場合はお湯ではなく、水で洗ったほうがよいでしょう。とはいえ、40度を越えないぬるま湯くらいなら大丈夫です」(藤原さん)
洗濯前に汚れの種類には注意した方がよさそうです。
気になる衛生面。残り湯は洗濯に使って大丈夫?
メリットのある残り湯での洗濯ですが、衛生面ではどのようなことに気をつければよいのでしょうか。
衛生微生物研究センターのデータによると、残り湯は放置すればするほど菌が増殖するリスクが上がるとのこと。特に夏場の室温が高い状態、また汚れが多い状態で入浴するといった条件がそろうことで、残り湯の細菌数はお湯を張った直後に比べ、数千倍にも増加することがわかっています。
そのため残り湯はその日のうちに再利用することが望ましく、すすぎでは使用しないことが推奨されています。
「洗濯洗剤で細菌は洗い流せるのでは?」「すすぎで水道水を使えば大丈夫なのでは?」と思うかもしれませんが、藤原さんによると、「菌が増殖したお湯で洗うと、洗濯洗剤やすすぎで水道水を使用しても細菌は落としきれず、生乾き臭の原因になります。しかし入浴直後の菌が少ない状態のお湯を使えば問題ありません。ただし『洗い』のみに利用し、すすぎは水道水を使うとよいでしょう」とのこと。
また、残り湯を使って洗濯する場合には、夜に洗濯することを藤原さんはおすすめしています。
参考:衛生微生物研究センター「お風呂の残り湯は使ってもよい?」
残り湯を衛生的に再利用するための6つの注意点
洗濯に残り湯を活用するには、なるべく菌を増やさないようにすることが大切です。残り湯をキレイに保つために心がけたい6つの注意点を紹介します。
1. 体を洗ってから湯船に入る
残り湯をなるべく汚さないよう、湯船に入るときは体をしっかり洗ってから入りましょう。
2. 入浴後は湯船にふたをする
湯船のふたをしておくことで、ホコリなどがお湯に入るのを防ぎます。
3. 湯船にタオルを入れない
タオルには菌がたまりやすいため、湯船に入れるとお湯の菌が増殖してしまいます。タオルは入れないようにしましょう。
4. 湯船のゴミや髪の毛は取り除く
湯あかや髪の毛などのゴミは、ネットで取り除いておきましょう。ゴミが衣類に付着することを防ぎます。
5. 一晩経過した残り湯は使わない
残り湯の菌は時間が経過するほど増殖します。洗濯に使うのは入浴直後にしましょう。
6. 入浴剤は使わない・入れるなら重曹を
入浴剤の種類によっては、残り湯を洗濯に使うと衣類への色移りをすることがあります。また衣地や洗濯槽を傷めてしまう原因にもなりかねないので、残り湯洗濯をする日には入浴剤を使わないようにしましょう。入浴剤を入れたい場合は、残り湯洗濯に対応しているか表記を確認してから使用すると安心です。
藤原さんがおすすめするのは、入浴剤の代わりに重曹を入れることだそう。
「重曹を入れて重曹泉を作ると、温泉のような効果で体によいのでおすすめです。また重曹を使用することでお湯がアルカリ性に傾くので、洗濯に使った時に汚れが落ちやすくなります。重曹は入浴剤のようなデメリットはないので、安心して使うことができます」(藤原さん)
さらに節約! 洗濯だけではない残り湯の活用法と注意点
お風呂の残り湯を洗濯に使用したあと、さらに残ったお湯を有効活用する方法はあるのでしょうか。藤原さんに伺いました。
「おすすめなのは、お風呂掃除に使用することです。掃除の泡を残り湯で流し、最後にシャワーですすぎ洗うとよいでしょう」(藤原さん)
他にも残り湯を掃除などに活用できるかを伺うと、「一晩放置した残り湯は菌が増殖しています。お風呂の椅子やおもちゃなどを漬け置きすることや、靴を洗う際に再利用することは、お湯の菌を付着させてしまうことになるので避けた方がよいでしょう」と藤原さんは言います。
また香りの強い入浴剤やバスソルト(塩分)、重曹などが入っていない残り湯なら、植木の水やり、打ち水、冬の凍結防止用水としても利用できるとのことでした。
おわりに
藤原さんのお話から、残り湯を活用するのは菌が増殖する前が大前提であるということが分かりました。一方で、藤原さんは残り湯洗濯のために衛生面に神経質になりすぎないことも大切と言います。
「本来お風呂は発汗作用やリラックス効果などで心と体を健康にするものです。しかし長湯すればするほどお湯が汚れてしまうのは仕方のないこと。残り湯の衛生面を気にしてお風呂が楽しめなくなるのは本末転倒なので、お風呂時間を楽しみつつ、心や時間に余裕があるときに残り湯を活用してみてくださいね」(藤原さん)