そもそも「本みりん」とは?
「本みりん」の原料は、蒸したもち米、米麹、焼酎もしくはアルコールです。
原料を仕込み、糖化・熟成させると、米麹の酵素の働きによって、もち米のデンプンやタンパク質が分解されます。これにより糖類やアミノ酸、有機酸などがつくられ、「本みりん」特有の風味が出来上がります。
本みりんの調理効果とは?
まろやかで上品な甘みに仕上がる
本みりんはブドウ糖やオリゴ糖などの多種類の糖類で構成されています。そのため、ショ糖でできている砂糖に比べてまろやかな甘みが出ます。
料理に「テリ」と「ツヤ」がでる
本みりんは、食材の表面に「テリ」と「ツヤ」をつけるのに有効な複数の糖類を含んでいます。この糖類が素材の表面に皮膜をつくり、料理にテリとツヤを与え、見た目もおいしそうに仕上げます。
煮くずれを防止する
本みりんの「糖類」と「アルコール」が煮くずれを防いでくれます。糖類とアルコールの効果で、肉や魚などは筋繊維がくずれるのを防ぎ、野菜はでんぷん粒の流出を防ぐと同時に、食材の旨み成分を外に逃がさない効果もあります。
料理に深いコクと旨みが出る
もち米から生まれる「アミノ酸」や「ペプチド」などの旨み成分や糖類などの成分によって、料理に深いコクと旨みを与えてくれます。
味が早くしみ込む
本みりんに含まれるアルコールの効果によって、アミノ酸や糖類などの旨み成分を浸透しやすくし、料理の味付けを早く均一に仕上げます。それは、アルコールの分子が小さいので、素材にしみ込みやすいためです。
食材の臭みを消す
本みりんには、食材の臭みを消す働きもあります。熱が加わると、食材にしみ込んだ本みりんのアルコールが蒸発します。その時に、肉や魚の臭みも一緒に蒸発していくことで、食材の臭みを消してくれます。
「本みりん」と「みりん風調味料」の主な違いとは?
「本みりん」や「みりん風調味料」、店頭では近くに並んでいますが、どう違うのでしょうか?
原材料と製造方法の違い
「本みりん」はもち米・米麹・アルコールを長期間じっくり糖化・熟成して造られるのに対し、「みりん風調味料」はブドウ糖や水あめなどの糖類・米・米麹・うまみ調味料・香料などを短期間で調合して造られます。
アルコール度数の違い
「本みりん」には14%前後のアルコールが含まれています。それに対して「みりん風調味料」はアルコールをほとんど含まず、アルコール度数は1%未満です。
また、「本みりん」には酒税がかかっており、酒類販売免許のある店でしか購入できません。「みりん風調味料」は酒類として扱われないため、価格が「本みりん」より安くなっています。
※アルコール度数が1%を超えると酒類になります。
「本みりん」と「みりん風調味料」はどう使い分ける?
本みりんの使い方
アルコールの効果による味の浸透や素材の臭い消し、煮くずれを防ぎたい料理には「本みりん」を使うのがオススメです。
アルコールを含んでいるため、加熱しない料理に「本みりん」を使う時は、煮切ってアルコールを飛ばしてから使いましょう。
みりん風調味料の使い方
一方で、加熱を必要としないドレッシングや和え物には、アルコールがほとんど含まれていない「みりん風調味料」を使うのがオススメです。また、「みりん風調味料」は糖度が高いのも特徴。本みりんと同様にテリとツヤを付けたいお料理に使えます。
「本みりん」と「みりん風調味料」の保存方法とは?
本みりんの保存方法
「本みりん」には糖類が多く含まれているので、低温で保存すると糖分が結晶化してしまう恐れがあるそうです。アルコールを多く含む本みりんは、直射日光の当たらない冷暗所で常温保存しましょう。
みりん風調味料の保存方法
「みりん風調味料」はアルコールが少なく保存性が良くない為、開封後は冷蔵庫で保存し、早めに使い切るようにしましょう。
「本みりん」と「発酵調味料」の違いとは?
本みりんに類似した調味料として、みりん風調味料の他に料理酒・みりんタイプの「発酵調味料」があります。本みりんと発酵調味料はどのような違いがあるのでしょうか?
本みりんはもち米・米麹・アルコールをじっくり糖化・熟成させて造られるものですが、発酵調味料は、米・米麹を発酵させた後に、糖・食塩・アルコール等を加えた調味料です。そのため、10~14%のアルコールが含まれています。
ところで、なぜ発酵調味料は本みりんと同じようにアルコール分をふくむにもかかわらず、安価に販売されているのでしょうか? 実は、発酵調味料は塩を加えて「不可飲措置」をしているため、酒税の対象にならないのです。
このとおり、発酵調味料には塩分が含まれているので、料理に使うときは塩加減の調整に気をつけてくださいね。
「みりん」の由来と歴史
みりんの由来は諸説あり、日本に古くからある「練酒」や「白酒」などの甘い酒が腐敗するのを防止するために焼酎が加えられ、後にみりんになったという説や、中国から伝わった「蜜淋(ミイリン)」という甘い酒が九州や琉球地方に伝来し、それがみりんになったという説などがあるそうです。
「みりん」は誕生以来、お酒が苦手な人や女性も飲める「甘いお酒」として飲用されていたといわれています。
みりんの甘さは、米のデンプン質を糖に変える「麹」によってつくられますが、当時は麹をつくる技術が発達していなかったため、甘みが少なかったそうです。
甘いお酒として飲まれていたみりんは、江戸時代後期から鰻の蒲焼のたれやそばつゆなどの調味料として使われるようになります。明治時代から昭和初期にかけては、まだ贅沢品で料亭などの日本料理店で使用されることが多かったようです。一般家庭に普及し始めたのは、みりんの大幅減税があった昭和30年代以降からといわれています。
おわりに
「本みりん」と「みりん風調味料」は原材料や作り方に違いがあります。それぞれに特徴があるので、料理に合わせて上手に使い分けることで、いつもの料理がひと味違ったものになるかもしれません。ぜひお試しくださいね。