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中華鍋ならプロの味に! 本当に美味しい焼きそば・豚の角煮の作り方

ガスコンロとIHクッキングヒーター、どちらを導入するか迷う人もいますね。フードアクティビスト・松浦達也氏によると、料理においてガスの炎を使うメリットは大きいといいます。ガスコンロとIHクッキングヒーターのそれぞれのメリットの紹介とともに、特に、中華鍋×ガスの炎との相性がよい「焼きそば」と「豚の角煮」も実際に作っていただきました。

最終更新日:2024.1.15

目 次

ガスコンロの炎は何がすごい? 料理を科学的観点から分析

自宅のガスコンロを最大限に利用するにはどうするか――。

かつて「チャーハンはフライパンを振って米を空中に浮かせ、その間にガスの炎に直接触れることによりパラッとする」といった説があった。この説については「必ずしもそうではない」となってきているが、料理を科学的観点から分析し、いかに美味しいできあがりを目指すか、を追求する『大人の肉ドリル』『新しい卵ドリル』(マガジンハウス)などの著者であるフードアクティビスト・松浦達也氏に「ガスを最大限利用する料理」について取材をするとともに、2品作っていただいた。

松浦氏は雑誌「dancyu」(プレジデント社)で、100以上のパターンからもっとも美味しい焼きそばの作り方を検証するなどの活動をしている。

そんな松浦氏にこの日は中華鍋を使った「焼きそば」と「豚の角煮」の作り方を教えてもらった。話はガスとIHの違いや、いかに中華鍋が優れた調理器具か、などに及んだ。この日を迎えるにあたり、同氏から言われたのは「27cmの中華鍋を新たに買っておいてね」ということ。ガスを活用するレシピと中華鍋の相性は最高なのだという。

中華鍋にはIHではなくガスコンロ!?

松浦氏と中華鍋

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――松浦さん、大きな中華鍋も持ってきてますけど、なんでもう一つ(27㎝)用意しておく必要があったんですか? あと、なんでガスと中華鍋なんですか?

中華鍋・27cm/30cm

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(中華鍋・27cm/30cm)

松浦:IH対応の底の平らな中華鍋もありますが、あれだと加熱されるのは底の平らな部分だけ。今日紹介する焼きそばのレシピは、より広い面積を加熱したい。それにはガス×底の丸い中華鍋という組み合わせがいいんです。今回用意してもらったのは直径27cmという中華鍋にしてはかなり小さいもの。家庭のガス火力だとこれくらいがちょうどいい。

僕が持ってきた30cmのものは、麻婆豆腐のような汁気たっぷりでかき混ぜる料理にはいいんですが、家庭用のコンロの火に対しては少し大きい。例えば4人分の麻婆豆腐を作るなら30cmでもいいと思いますが、1~2人前なら小さい27cmが最適。なにしろ取り回しがラクで、火のまわりもいい。

「鍋の場合、大は小を兼ねない」ということを覚えておいてください。比較のために、30cmのものを持ってきました。

今回は、厚さ1.6mmの「打ち出し」中華鍋を使います。きちんと使えば一生ものです。大量生産の「プレス型」よりも目の詰まった「打ち出し」は油なじみがいい。素人にこそ使いやすいし、育てる楽しみもあります。ちなみに1.2mmはすぐ温まるのはいいけど、“遊び”が少ない。火力がダイレクトに鍋の中に反映されるので、慣れないうちは、食材を焦がしたりしてしまいがち。まず1.6mmで中華鍋に親しむのをおすすめします。

錆止め加工を焼き切る「空焼き」中の中華鍋

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(錆止め加工を焼き切る「空焼き」中の中華鍋)

ちなみに新しい中華鍋はガスの強火で空焼きをして、錆止め加工を焼き切る必要があります。専門店に行けば錆止め加工されていない、すぐ使い始められる中華鍋もあります。

「焼きそば」がガスの炎で美味しくなるメカニズムとは?

――さて、今日作っていただく「焼きそば」ですが、ガスの炎で美味しく作ることができるのはどうしてですか?

松浦:焼きそばで大切なのは、麺と具を一気にすすったときの美味しさ。加えて麺、肉、キャベツそれぞれが美味しいことも重要です。

焼きそば

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麺のパリッとした焼き目、豚肉の香ばしい焼き目、キャベツのどこか甘み漂う焼き目。「焼きそば」というくらいですから、焼き目が重要なのです。

ただ、この焼き目の加減が難しい。火が弱いと焼き目がつかないまま、水分が飛んでしまう。かといって、強火が過ぎると「焼き目」ではなく「焦げ目」になってしまう。

ガスの炎×中華鍋は、火力を調整したとき、反応速度が早いんです。これがIHだと温度を上げたいときも下げたいときも、対応鍋の底に仕込まれた厚い鋼板に熱が蓄えられるので反応がワンテンポ遅れてしまいがち。

物理的に炎が出るガスは、火の強さと鍋内の加熱具合の関係がイメージしやすいから、料理の上達も早くなる。ガスの火の強さや熱の当たる範囲を知っておけば、その感覚はIHにも応用できます。

――今回、なぜ中華鍋を使うのですか? あと、もう一品作っていただく「角煮」も、通常は中華鍋ではあまり作らないですよね。

中華鍋と食材

PIXTA

松浦:深さのある中華鍋は炒める、煮る、揚げる、茹でる、蒸すというすべての調理がひとつでできる万能鍋なんです。角煮は、最初にバラ肉を“揚げ焼き”のようにして肉から香ばしさを引き出し、その油にネギとショウガを入れて香味油を作り、そのまま煮込むこともできます。

焼きそばのような炒めものは、火力の強弱次第で鍋底に当たる直火の面積を変えられる。しかも、中華鍋の形状は勢いよく混ぜてもこぼれにくいし、それこそ鍋をあおる楽しみもある(笑)。インスタントラーメンだって、中華鍋でできてしまう。こんな鍋は他にありません。

――中華鍋とIHはあまり相性がよくないんでしょうか。

IHコンロ

PIXTA

松浦:プロ向けにはIH調理器と底の形がピタリと合った専用中華鍋もありますし、家庭用でも中華鍋に近い家庭用IH機器が出てきてはいるんですが、感覚的にはまだ使いづらい気がします。

IHにもいいところはたくさんあります。まず熱源自体が熱を発しない。高齢者世帯などでは、「IHのほうが安心」と思われる方もいらっしゃるでしょう。

ただ、料理って素材や鍋の内側と対話をすることで、上手になっていくものです。フライパンから煙は出ているか。鍋の内側に気泡がどれくらいついたか、状態を見ながら火力の微調整を行う。IHだとメーカーによってもコイルの設計が違ったりして、調理をする側にとっては感覚の基準を作りにくい。炎という目に見える火力だと体感のベースを作りやすいんです。素材の色や音、香りを体感しながら調理したほうが楽しいですしね。

――それでは、美味しい焼きそばの作り方を教えてください!(以下、松浦さんが実際に料理をしながら解説)

【美味しい焼きそばを作る! 】用意する材料とは?

焼きそばの材料

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松浦:まず材料は、市販の麺、豚バラ肉、キャベツで味の骨格を作ります。揚げ玉を調味料として入れても美味しいです。あとはお好みで紅ショウガや青のり。青のりは「青のり」と書かれたものを選びましょう。「あおさ」よりも味が濃厚です。

・市販の焼きそば用中華麺・・・2人前
・キャベツ・・・中3枚
・豚バラ肉・・・120g
・日本酒かビール・・・大さじ2
・調理油・・・適量※
・(お好みで)揚げ玉・・・適量
・(お好みで)紅ショウガ・・・適量
・(お好みで)青のり・・・適量

※樹脂加工フライパンなら、豚バラから出る脂だけでもできますが、今日は中華鍋なので少し油を補いましょう。熱に強く、酸化しにくい太白胡麻油がおすすめです。

【美味しい焼きそばの作り方1】肉に下味をつける

塩

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松浦:まず、豚肉にほんの少しでいいので塩を振ります。肉に下味をつけると、麺や他の具材とケンカをしなくなります。チャーハンを作る時に、ただの豚肉より、チャーシューやハムを入れることが多いですよね。

焼きそばやチャーハン、パスタなど、炭水化物と一緒に調理する場合、肉に少し下味をつけるだけで全体の味のなじみが良くなります。

そして中華鍋を中火にかけ、煙が上がりかけたら太白胡麻油を入れます。さて、豚肉を焼く際に気をつけたいのは、「表面に焼き目はつけたい。でも火を入れ過ぎたくはない」。一枚のなかに「カリカリ」と「ミディアム」を両方作りたいんです。焼き目の美味しさはほしいけど、肉に火を入れすぎるとジューシーさが失われてしまう。

【美味しい焼きそばの作り方2】麺をゆがいてほぐす

――松浦さん、お湯を沸かしていますね。それは麺を茹でるためのものですか? 電子レンジで温める方法ではダメなのでしょうか?

焼きそばの麺を茹でる

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松浦:この工程の最大の目的は「麺をほぐす」こと。その意味では、電子レンジで温めるのもOKです。麺を温めるとβ化(劣化)したでんぷんがα化して弾力が出て、ほぐれやすくなります。β化したままの麺は弾力がないので切れやすい上に、炒めると麺に弾力が戻る前に水分が抜けてしまってカサカサになってしまいやすい。茹でてもちもちした状態に戻してから、麺にパリッと焼き目をつければ、麺の弾力と香ばしさの両方が味わえる。しかも「茹でる」ことで、袋入り焼きそばの表面にくっつき防止で塗られている古い油を落とすこともできるんです。

今回は20~30秒程度茹でます。この一手間で、びっくりするほど味が変わりますよ。ソースは市販の焼きそば添付の粉末ソースです。

消費者の味の好みはさまざまです。メーカーは「味が薄い」と言われるのを避けるため、調味を濃い味が好きな購入者に合わせる傾向もあります。僕は、2人前の焼きそばなら「1.5袋」がちょうどいいと考えています。肉に下味もついていますし。

麺に焼き色をつける

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さてここから「焼き」の工程です。まずは鍋を強火にかけて油をひき、ゆがいてほぐれた麺をお好み焼きのように薄く広げます。このとき麺はいじってはいけません。片面にほどよい焼き色がついたら、返して両面に焼き色をつけていったん皿に取ります。中国料理のかた焼きそばまではいかぬまでも、中華鍋に接している部分には焼き目を両面につけましょう。そうすることで、色々な食感が楽しめます。

豚バラ肉を炒める

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次に具材です。豚バラ肉に焼き目をつけて美味しさと香ばしさを引き出します。肉の焼き目は「メイラード反応」という旨さの源。表面に焼き目をつけつつ、ジューシーさを保つため、炒め過ぎは禁物。肉の厚さは3mmくらい。極薄でもなければ焼肉用ほど厚くもない。その肉の片面にだけ焼き目をつける。8割方、火を通して皿に取っておきます。

キャベツを炒める

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続いて残った油でキャベツを焼きます。これもきっちり茶色い焼き目をつけて、8割方火が通ったところで、肉と麺を戻します。

肉と麺を戻して炒める

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火を強火にしてビールか日本酒で粉ソースを溶いたものを入れ、全体に味が回るくらいまで炒め上げたらできあがりです。

あげ玉

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今回は使いませんでしたが、焼きそばを作る際のオプションとして「揚げ玉」はいいですね。

味と香りとコクが加えられ、濃厚な味わいを気軽に出せるとても便利なアイテムです。「後乗せ」ばかりでなく、ソースを加える前に具として加えると全体に深みが出ます。

【ガスコンロ✕中華鍋でプロの味】美味しい豚の角煮の作り方

豚の角煮

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豚の角煮の材料

・豚バラかたまり肉・・・1kg
・生姜・・・薄切り2~3枚
・長ネギ・・・2切れほど
・太白胡麻油・・・大さじ2
・昆布・・・10cm四方

【調味液】
・水・・・500ml
・日本酒・・・500ml
・醤油・・・60ml
・砂糖・・・60g

豚の角煮の作り方

松浦:松浦:続いては豚バラ肉の角煮です。中華鍋を中火にかけて太白胡麻油を入れ、生姜とネギの緑の部分を入れて油に生姜とネギの香りをつけます。

豚バラ肉に焼き目をつける

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そこに半分の長さに切った豚バラのブロックを皮目を下にして入れます。揚げ焼くように皮目に焼き目がついたら返して、裏面も焼きます。

両面に焼き目をつける

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好みもありますが、焼き目の香ばしさを加えた方が深いコクが生まれ、美味しく感じられます。

煮込む

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肉の両面に焼き目がついたら、煮込みを開始します。炒めたネギと生姜も入れたまま、調味液と昆布を追加して、鍋肌の焼き目をこそげ落とします。

そしてこれから2時間、弱火で、沸騰し、煮立てないように煮ていきます。減ったら随時水分を足していきます。のんびり半身浴をしている感じで、適宜ひっくり返し、気長に水を足しながら作れば、絶品の角煮ができます!

ひとつの鍋で、炒める、焼く、揚げる、煮込むはお手の物。万能の調理器具とも言われる中華鍋の実力は直火によって存分に引き出されるのです。

おわりに

今回松浦さんに作っていただいた焼きそばは、紅ショウガと青のりをかけた上で、各自オプションとして揚げ玉をかけました。キャベツ、肉などの具材の旨味がそれぞれ引き立ち、麺もパリッと固い部分とやモチっとやわらかい部分があってメリハリが利いています。具材それぞれを味わっても、全部一緒に口に入れても別の美味しさを感じられます。

松浦さん曰く「いろいろ試しましたが、結局具材としては、キャベツ+豚バラがベストだと思います。モヤシは炒めた後、時間を置くと水分が出やすく、食感が変わりやすいんです」とのことです。

角煮にしても、脂身部分はプルップルで、赤身部分はほぐれるような柔らかさ。そのままビールのおつまみにするも良し、ラーメンの具にするも良し、でした。

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公開日:2019.1.30

最終更新日:2024.1.15

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