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高齢者の一人暮らしで発生しがちな問題とは?

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高齢化が急速に進展する中、一人暮らしの高齢者も急増しています。中には地域や血縁ともゆかりの薄い人も多く、そうした高齢者の孤立や安全性確保が課題となっています。
こうした高齢者を見守るサービスも続々登場していますが、そもそも高齢者の一人暮らしにおいて、どんな問題が発生しているのでしょうか。高齢者の孤立を防ぎ、安全を確認する方法はあるのでしょうか。
立命館大学共通教育推進機構准教授で、社会的孤立問題について研究する小辻寿規先生にお話を伺いました。
最近の高齢者は「頼らない」――地の縁も、家族の縁も“断絶”

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――近年の高齢者に特徴的なことはありますか?
小辻:昔に比べて、「家族に迷惑をかけたくない」と思う高齢者が増えてきています。後を継がせるという考え方も薄くなり、嫁、姑関係が面倒だと思っている人も多い。
ただ、その世代の女性は元々専業主婦の人も多く、今住んでいるところでコミュニティを作ってきていて、そこで友達がいたりします。もともと、家を継いでいった時代には、男性のほうが“地の縁”がありました。でも男性が会社で働くようになると、地元で仲間をつくることをしてこなかった。つまり今の70代くらいの世代からは、女性より男性のほうが地の縁が薄くなりがちです。
――今の世代には地の縁を持たない傾向が増してきたことに加え、「子どもの世話になりたくない」と考える高齢者も増えてきたということですね。では、高齢者の一人暮らしで発生する問題には、どのようなものがあるでしょうか。
小辻:今の時代、他人に頼ることってしないんです。スーパーに行けばなんでも買えるし、都会ならコンビニもある。生活が成り立ってしまうんですね。
とはいえ、本当に動けなくなったときには家族やサービスに頼ることになります。そういう時、定期的に途切れず会っていたりすれば別ですが、そうでなく、お互いに関係が断絶している場合、子どもとの付き合い方がわからなくなっている。
――子どもとの付き合い方がわからなくなってしまっていて、頼りたくても頼れない状態になりかねないという危惧があるんですね。
田舎だと孤立しがちに・・・
小辻:田舎だと生活はまわりにくくなります。車を運転する年齢にも限界があり、お店はどんどん閉店していく。買い物に行く頻度はどうしても少なくなります。「元気なら孤立しない」というわけでもない

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小辻:体調が悪くなると病院や家族に引き取られることになりますが、そうすると、街に残るのは元気な人という構図になってきます。元気なら孤立しない、ということでもないのです。
――体調が悪い高齢者は街から出ていってしまい、残った高齢者は体調面では問題なくても、コミュニケーションをする相手が減ってしまい、結果的に孤立するケースが出てきているんですね。
一人暮らしの高齢者が抱えるリスク「認知症に気づかない」

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――では、一人暮らしの高齢者が生活するなかで「困ること」には、どんなものがあるでしょうか。
小辻:例えば、一人暮らしだと認知症になっているのも気づかないんです。周囲とコミュニケーションをとっていないので、本人も気づかないうちにすすんでいく可能性がある。
ボヤを起こしてしまったりすると、近所にも迷惑をかけることになります。火を消すのを忘れていたとかじゃなくて、認知症の可能性があるかもしれない。一人暮らしだと、そういうことに気づきにくいんです。
一人暮らし高齢者へのケア「常に変化があるんじゃないかと思って接する」

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――一人暮らしの高齢者をケアする方法はあるのでしょうか。
小辻:見守りサービスなどを使ったうえで、やはり実際に家族が顔を合わせるのが大事です。ただ、高齢者の方も都合の悪いことは隠します。自分に変化があっても、心配をかけたくない、生活が維持できなくなる、などという気持ちから素直に話せない人もいる。
「会う」機会を増やすことで、家族側が高齢者の変化に気がつく可能性が高くなります。そして会ったら、一緒にご飯を作るなど、行動を共にすると、ちょっとした変化にも気づきます。実際に会いに行くのが難しければ、電話でもテレビ電話とか、なるべく状態がわかるようなコミュニケーション手段がいいですね。
ただの電気の消し忘れじゃないかもしれない。常に変化があるんじゃないかと思って接するのが大切です。親は子どもの変化に敏感ですが、それと同じ。高齢者も我慢している、無理しているんじゃないかと思って接するに越したことはありません。
高齢者の孤立を防ぐためには「誰かと共通の趣味・話題」を

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――高齢者自身の環境として、孤立を防ぎ、また安全を確認する方法には、どのようなものがあるでしょうか。
小辻:居場所づくりをすることです。高齢者向けの福祉協議会とか福祉サービスなどを利用しても良いですし、ネットだけでも楽しい環境はつくれます。例えば孫と一緒にスマホゲームの対戦をやるとか、誰かと共通で語れるツールがあるといいですよね。
親子で共通の趣味・話題を見つけるといいと思います。野球はどこが勝ったねとか、今度舞台を見に行こうとか。生活意欲を失いかけている高齢者には、趣味を応援してあげる。料理が好きなら、フライパンを買ってあげるとか。液晶タブレットをプレゼントするとか。新しいものに触れてもらうことは生きがいにつながると思います。
自力で清掃できるところに住み替えることも重要

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小辻:安全を確認する方法として、高齢者の変化にすぐ気づける状況があることが大事ですが、どこまでお金をかけるかになってきます。
ただ、ある程度高齢になってくると、「広いところに一人でおいておかない」というのは大事です。一戸建てだと、怪我をするリスクも高まりますし、メンテナンスも大変で、あっという間にゴミ屋敷になってきます。自力で問題なく清掃できるレベルのところに住み替えを考えていくことも重要です。
住み替えなどで家のものを整理するときにも、一緒に行うと、例えばゴミから異変を察知することもできる。「普段と違う」ことに気づきやすくなります。ちなみに、「捨てる」時の表現には気をつけたいもの。高齢者にとっては大事なものかもしれません。「必要とする人がいるかも」「売れるよ」など、なるべく前向きな言葉を投げかけるようにすると良いでしょう。
高齢者の肉体的な変化には、ケアする側が気づいていくしかありません。そういう変化を、理解しようとすることが大切です。高齢者を一人ぼっちにさせないためには、こちらが受け入れていくことが重要なのです。
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この記事の取材先プロフィール
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小辻寿規(こつじひさのり)
大学生時代より社会的孤立問題に興味を持ち研究をはじめる。研究をする中で研究だけでなく、実践者でもありたいと思うようになり、近畿地方を中心に多くのまちづくり活動に関わる。居場所づくりとまちづくりの中間支援団体NPO法人つながるKYOTOプロジェクトを仲間と共に立ち上げ、理事長として様々な居場所の立ち上げや支援、研究を行う。また、大学教員やNPO法人理事長を務める傍ら、草津市教育委員、NPO法人山科醍醐こどものひろば理事、公益財団法人草津市コミュニティ事業団理事等としても活動中。一児の父。
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公開日:2020.10.21
最終更新日:2023.2.9
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