下処理の前に知っておきたい! おいしい栗の見分け方
子どもから大人まで人気がある秋の味覚、栗。旬の時期には、生の栗を使って料理やお菓子を手作りしてみたいものです。
テーブルトップディレクターで、料理・菓子研究家の小島喜和さんに、おいしい栗の見分け方や、簡単にできて栗の風味が生きる下処理方法を伺いました。
まずは「おいしい栗の見分け方」から。初めて生栗の調理にトライする方、市場に多く出回る最盛期でも、決して安くはない栗だからこそ失敗したくない! という方は必見です。
はじめに、栗の各部位の名称を押さえておきましょう。
小島さんによると、栗を購入する時は、表面の鬼皮をじっくり観察するのがポイントなのだそう。
「わが家には、栗の木があります。その日落ちた栗を見て、すぐに気が付くことは、“艶やかで照りがある”ということです」(小島さん)
つまり、栗を選ぶコツは、鬼皮の艶と照りに注目すること。新鮮な栗の皮は張りがあり、色も濃くきれいです。時間がたつと、鬼皮と渋皮の間に空気が入り、中の実が乾燥してしまうため、指で押すとブカブカしてきます。
また、白いブツブツや、「座」と呼ばれる底の部分に黒っぽい箇所があるものは避けましょう。こうした栗は病虫害を受けている可能性があります。
栗の下処理「虫止め」
栗の中に虫がいるのを見たことはありませんか? 栗の中にいるのは、クリジギゾウムシかクリミガの幼虫です。スーパーなどで販売されている栗は、虫がふ化しないようにあらかじめ燻蒸処理が施されています。そのため、“虫止め”の必要はありません。
しかし、拾ってきた栗や、直販所などで販売されている栗の場合は、実の中に虫の卵が産み付けられていたり、ふ化した幼虫がいることもあるので「虫止め」が必要です。
「虫止め」をする前に、まず栗を選別します。
栗に穴が開いている場合は、すでに虫が栗の実を食べて成長し、出て行ったあとなので残念ながら食べられません。また、皮が黒ずんでいるものや臭いがするものは、かなり傷んでいるので取り除きます。
上記のポイントに注意し、栗を選別したうえで、「虫止め」を行います。
「外から見て虫がいるかどうか分からない場合は、栗を水に半日程度入れた後、日干しにするという方法がありますが、私は沸騰させたお湯に、栗を5分ほどつけて『虫止め』をします。栗をお湯に浸けた時に沈むものと浮くものがありますが、浮くものは虫食いの可能性が高いので、ひとまず鬼皮をむいてみて匂いで確認するとよいでしょう。これで卵も幼虫も同時に処理できます」(小島さん)
栗の下処理「皮むき」
栗の調理で高いハードルとなるのは、厚い鬼皮の下処理。
小島さんによると、生のまま皮をむく方法と、加熱してから皮をむく方法があるので、その後の調理方法によって使い分けるとよいそうです。
生のまま皮をむく
マロングラッセ、栗ご飯など、できる限り無駄なくきれいにむいて、実の形を残して使いたい場合は、生のまま皮をむきましょう。
1.栗の下側のザラザラしている部分(座)を水平に切り落とします。
2.切り落とした部分を下にして、栗を立てます。平らな面を切り落とします。
3.残りの皮を下から上にむき上げます。
お湯にくぐらせてから皮をむく
栗の渋皮煮を作る際など、渋皮を残して鬼皮をきれいにむきたい時は、以下の方法がおすすめです。
1.小さめの鍋で沸かしたお湯に、5個くらい栗を入れ、火を止めてから5分程度浸します。小島さんによると、鬼皮をむく作業は栗が熱い状態で行う必要があるため、一度に入れる栗の数は5個が目安です。
2.鬼皮が熱いうちに1個ずつ、栗の底を包丁で少し削り取り、そこを起点に鬼皮を手でむきます。
小島さんによると、最も楽にキレイにむけるのがこの方法だとか。渋皮も一緒にむく場合も、栗の底を包丁で少し削り取るだけで、あとは手でむけるとのことです。
中まで加熱してから皮をむく
ゆで栗として食べる場合や、モンブラン用のマロンペーストを作ったりする時にはゆでてから皮をむくのもよいでしょう。
中までしっかり火を通す場合は、沸騰したお湯に栗を入れて15分程度が目安です。
また、焼いて皮をむくという方法もあります。破裂を防ぐために丸い方に切れ目を入れてから、切れ目のある部分を上にして、できればテフロン加工ではなく、鉄やアルミのフライパンに並べます。ふたをしてかなり弱火で15分ほどコロコロひっくり返しながら焼きます。切れ目が開き、側に焦げ目が付くくらいまで焼くと、皮がむきやすくなります。
栗の皮むきは普通の包丁でも十分可能
小島さんによると、最も楽に、きれいに栗の皮がむけるのは、上に書いた「お湯にくぐらせてからむく」方法とのこと。
また、栗の皮むきには家庭にあるごく普通の包丁を使うのがおすすめだそう。
「剪定ばさみのような形をしている栗専用のむき器は有名ですが、私はむきにくいと感じました。小回りが利かないので、実が小さくなってしまうということもあります。
また、小さなフォークやピーラーを使って皮むきをすると、ケガをする可能性もあるので十分に気を付けてください」(小島さん)
栗の保存方法
小島さんによると、基本的には栗は長期保存に不向きとのことです。
「栗はでんぷん質のため、お芋やカボチャと同じで、でんぷんが糖分に変化するタイミングがあります。木から落ちたその時が完熟の状態で、食べ頃といえるので、早めに食べたほうがよいでしょう」(小島さん)
また、保存中にカビが生えてしまうことや、渋皮がむきにくくなることもあるのだそう。そのため、栗を保存したいなら、渋皮までむく下処理をしてから冷蔵/冷凍保存するのがおすすめです。
保存期間は、チルドなら1週間、冷凍なら1カ月程度が目安です。
また、食べきれない量の場合は、保存性を高めるための加工をしておくこともよいでしょう。「シロップに漬けたり、お砂糖で煮たりしてペースト状にして冷凍するならより安心です」と小島さん。
家族で食べたい栗の魅力
秋の味覚としておなじみの栗ですが、意外に知られていないこともあります。
種類による特徴や小島さんおすすめの品種、豊富な栄養についてまとめました。
日本産だけでもさまざまな種類がある栗
「8月末から収穫できる早生栗、10月に最盛期となる晩成栗まで、栗は楽しめる期間が実は長いのです」と小島さん。
また、種類が豊富で、大きさや味がそれぞれ異なります。
「一般的に販売されている代表的な品種に、むきやすくて大きい『筑波』『丹沢』『銀寄』などがあります。品質の良い銀寄は少し高価ですが、とてもおいしいです」(小島さん)
デパートで品種が書かれて販売されているのは、銀寄が多いそうです。また、最近では「ぽろたん」など渋皮がむきやすい品種も人気があります。
さらに、「スーパーやデパートでは販売されていませんが、山に自生している柴栗(山栗)も産直や道の駅などで見掛けたら、ぜひお試しいただきたいです」と小島さん。とても小さいですが、栗本来の味わいを楽しめ、渋皮煮がおすすめとのことです。
栗は、健康や美容に役立つ栄養が豊富
栗の主要な栄養素はでんぷんで、体内に入るとブドウ糖となり、優れたエネルギー源となります。他には、むくみ防止や高血圧を予防するカリウム、赤血球の生産を助ける葉酸、腸内環境を整える植物繊維、肌の老化を抑えるビタミンCなどが豊富です。
渋皮にも、抗酸化作用のあるポリフェノールが多く含まれているため、新鮮なものをおいしく食べたいですね。
専門家直伝! 栗の簡単でおいしい食べ方
料理にもスイーツにも使えて、秋には欠かせない食材である栗。小島さんに、簡単においしく食べられるレシピを教えてもらいました。
「栗を15分ほどゆでて、半分に切り、中身を取り出して、熱いうちにシナモンと蜂蜜を混ぜて一口サイズに形成します」(小島さん)
このレシピはとても簡単ですが、洋菓子のような風味が楽しめます。おやつやデザートにいかがでしょう。
おわりに
栗は、鮮度が味の決め手。購入したらできる限り早く食べたいものです。そのため、用途に応じた下処理の仕方をあらかじめ知っていれば、調理時間も短縮できるでしょう。
種類が豊富で、味わいもさまざまな栗。「旬のうちにいろいろな品種を試して、お気に入りを見つけるのもよいですよ」と小島さん。
簡単な下処理方法を知って、今年はぜひ、旬の栗を存分に楽しんでください。