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【専門家に聞く】遠距離介護はいつからどう始める? 準備とコツとは?

最近、介護のスタイルの一つとして遠距離介護が注目されています。介護が必要になった両親が自立して暮らせるよう、離れて暮らしながらサポートする方法です。まだ介護が始まっていない人も、高齢になっていく親のことは心配になるものですよね。親子が遠く離れた状態で介護はできるのか、遠距離介護をうまく実現するコツや便利なサービスについて、介護・福祉ライターの浅井郁子さんにお伺いしました。

遠距離に暮らす両親。「介護の始まり」はいつ?

母親の手を取り支える女性
PIXTA
遠く離れた親の介護。まだ介護が始まっていない人にとっては、介護が「いつ」「どのようにして始まるのか」が分からないことが不安なのではないでしょうか。

介護・福祉ライターであり、民生委員として地域福祉の現場でも活躍する浅井郁子さんに、まずは介護の始まりについて教えていただきました。

介護の始まりは、人それぞれ千差万別

65歳以上の要介護者等の性別にみた介護が必要となった主な原因
uchicoto
厚生労働省「国民生活基礎調査」(2013年)より編集部にて作成
浅井さん「介護の始まりはとても多様です。脳梗塞のような脳血管疾患や、転倒などによる骨折などで、ある日突然”要介護”認定をされることもありますし、関節疾患や認知症などゆるやかに生活機能が低下していくこともあります。いずれの場合も予後や経過は人それぞれ、十人いれば十通りの介護があり、パターン化できないのが特徴です」

親の変化に気付いたときが、遠距離介護の始まり!?

親と電話で会話をする女性のイメージ
PIXTA
一般には「介護保険を使い始めたときが介護の始まり」と考えられがち。ですが、遠距離介護の場合、そうとは言い切れない、と浅井さん。

浅井さん「遠距離介護の始まりは、『親の様子が以前と少し違う』と感じた瞬間だと私は思います。例えば、物忘れが少し多くなってきたとか、疲れが長引くようになったなどですね。帰省の際に、以前と違う親の姿に接したら、介護は始まっていると考えておくといいと思います」

「加齢による自然な変化が、介護の始まり」と聞くと、思っていたより早いスタートに驚く人も多いのではないでしょうか。

浅井さん「まさかそんな!!と思いますよね(苦笑)。でも、親の変化に気付いて、帰省の回数を増やすなどコミュニケーションを深めていくことが、この先の遠距離介護生活を支える土台になります。

急に介護が始まると、衝突することが多くなります。介護で大変なのは、身体的・経済的なことよりも、精神的な部分。家族の変化を受け入れるのには時間がかかり、変化を受け入れられないことがお互いに一番つらいのです。

離れて住んでいるならなおのこと。親の変化を早いうちから察知してコミュニケーションを増やしていくことが、介護の第一歩と考えていただきたいですね」

遠距離介護のメリット・デメリット

要介護者との続柄別主な介護者の構成割合
uchicoto
厚生労働省「国民生活基礎調査」(2019年)より編集部にて作成
2019年国民生活基礎調査によると、遠距離介護をしている方の割合は13.6%。過去の調査と比較しても、遠距離介護の割合は少しずつ増加しています。

「遠距離介護は、同居介護とはまた違った特徴があります。遠距離介護のメリットを生かしながら、デメリットを少しでも軽減する方法を考えたいですね」と、浅井さんは言います。

遠距離介護のメリット

親が趣味を楽しむ様子
PIXTA
●親は住み慣れた地域で安心して暮らせ、人間関係を維持できる
●子は現在の住居環境を変えたり、仕事をやめたりしなくていい
●会う機会が少ないため、お互いに優しく接することができる
●介護のオンとオフ、気持ちの切り替えがしやすい
●介護保険サービスを利用しやすい(訪問介護・特養入居の優先度が上がりやすい)

遠距離介護のデメリット

新幹線のチケット
PIXTA
●お金がかかる(行き来する交通費、連絡を取るための通信費、住宅の改修費、近隣への手みやげ代など)
●容体が急変したときに、すぐに対応できない
●介護が空白になりやすく、見守りに人手が必要
●日ごろ住んでいない地域のため、情報が収集しにくい
●仕事を休むことが多くなりやすい

遠距離介護に備えて、元気なうちに準備したい5つのこと

家族で話し合う様子
PIXTA
遠距離介護で最も肝心なのは、コミュニケーションの取り方です。まずは会話を増やし、いろいろなことを気軽に話せる関係性を築いた上で、親が元気なうちに準備したい5つのことを浅井さんに教えていただきました。

【元気なうちに準備したいこと1】親のかかりつけ医を知っておく

病院のロビー
PIXTA
浅井さん「かかりつけ医を知っておくことは、とても大切なポイントです。親に何かあったとき、最初に連絡が入るのはかかりつけ医からということが多いのです。かかりつけ医を起点に、地域の福祉につながっていきますので、親がよく使っている病院の名前や場所を把握しておきましょう」

【元気なうちに準備したいこと2】親の交友関係を知っておく

親の交友関係のイメージ
PIXTA
浅井さん「何かあったとき、周囲に頼れる人がいるかどうかを知っておきましょう。親戚付き合いや友人、ご近所さんとのお付き合い、参加しているサークルや集まりなど親の人間関係を聞いておくといいですね」

【元気なうちに準備したいこと3】親の経済状況を知っておく

銀行の口座通帳を見るイメージ
PIXTA
浅井さん「お金のことはなかなか切り出しにくいものですが、『銀行口座や預貯金について聞いておけばよかった』と介護が始まってから後悔する人は多いです。介護費用は原則として親のお金を使いますから、年金額や預貯金額はどれくらいか、ざっとでも把握しておきたいですね」

【元気なうちに準備したいこと4】地域の介護サービスの情報収集をする

介護サービスを受ける様子
PIXTA
浅井さん「親御さんがお住まいの地域の地域包括支援センターを調べましょう。おすすめなのは、介護が必要になる前から一報を入れておくこと。親と一緒にセンターを訪問してもいいですし、親を介さず直接電話をして、離れて暮らしていることや自分の連絡先を伝えておくだけでもOKです。介護保険のしおりや各種サービスに関する冊子を送ってもらっておくと、いざ介護となったときに必要な手続きがイメージできます」

【元気なうちに準備したいこと5】親の希望を確認する

浅井さん「介護でつまずいたり、こじれたりする事例を見ていると、『こうするのが一番いいだろう!』と、子が勝手に親の気持ちを判断してしまうことが多いように思います。万が一のとき、親自身はどうしたいと思っているかが、介護の方向性を決めます。元気なうちにこそ聞いておきましょう」

親が要介護に! 遠距離介護では何をする?

介護に関する資料を読む様子
PIXTA
親の日常生活に手助けが必要になると、離れて暮らしている子はどのような形で介護に関わることができるのでしょうか。

浅井さん「介護と聞くと、食事や排せつの介助などをイメージしてしまい、遠距離ではできないと不安になってしまいますよね。遠距離介護でやるべきことは、直接的な介助ではありません。支援してくれる介護者と連携をとって、うまく回る仕組みをつくる『キーマン』になるのだという意識を持ちましょう」

【支援が始まったらやること1】介護保険の申請をする

介護保険について話を聞く様子
PIXTA
介護保険は、介護度によって保険適用できるサービスの範囲が増えていく制度。要介護・要支援認定を受けた人が利用でき、介護保険を使うと、自己負担額が費用の1割(所得に応じて2〜3割になることもある)になります。

浅井さん「介護が必要と判断したら、まずは地域包括支援センター(包括)に相談しましょう。ご本人からの連絡でも、子どもからの連絡でも構いません。包括では介護保険の申請代行もしてくれます。」

【支援が始まったらやること2】ケアマネージャーとつながる

介護サービスは26種類・54サービスあります。これらを組み合わせて最適なケアプランを作成してくれるのが、ケアマネージャー。介護される側・する側両方の伴走者となって、介護全体をコーディネートしてくれる専門家です。

浅井さん「要支援の方のケアマネージャーは、原則、地域包括支援センターが担当します。一方、要介護の方の場合は、各自治体の居宅介護支援事業者に所属するケアマネージャーが担当し、ケアマネージャーは利用者ご自身で選ぶことができます。遠距離介護の場合は、遠距離介護に理解の深い人を選ぶといいですね」

ケアマネージャーを選ぶポイントは、人柄と能力を見ること。話を親身になって聞いてくれるか、親にも子にも公平か、理解しやすい説明をしてくれるか、電話がつながりやすいか、など、遠距離であっても信頼関係を築けそうな人であることが重要です。

【支援が始まったらやること3】住宅リフォームをする

介護リフォームとして手すりを付けたイメージ
PIXTA
親が住み慣れた自宅で安心して暮らせるように、手すりやスロープなどを付けたり、水まわりの改修をするなど、介護リフォームが必要になるケースがあります。

浅井さん「転倒など、寝たきりにつながる高齢者の事故の発生場所は、半数近くが自宅の部屋となっています。要介護認定が下りると、リフォームのための補助金が上限20万円まで支給されます。とはいえ、要介護認定を受ける前でも、家の中の段差や手すりのない廊下が危険と感じ始めたら、リフォーム検討のタイミングといえますね」

親世代よりも子世代のほうが、情報収集や折衝は得意な傾向にあります。リフォーム業者の見積もりを取る、設計士や設備会社と打ち合わせをするなど、離れて暮らしていてもできることはたくさんあります。親の好みやこだわりを尊重しつつ、苦手な部分を子が代行するというスタンスだと、円滑にリフォームが進みます。

【支援が始まったらやること4】自治体・地域・民間のサービスを利用する

パソコンで情報を集めている様子
PIXTA
家事代行や配食サービス、見守りサービスなどは、自治体・地域ボランティア・民間団体がさまざまに提供しています。これらの情報を集め、「こういうのを利用すると便利なんじゃない?」と提案・契約することも、遠距離介護での大切なポイントです。

浅井さん「子世代の情報収集力を存分に生かせる場面ですね。パソコンが苦手な親御さんには、スマホやタブレットを導入するお手伝いをしておくと、今後お互いの情報交換のためにもいいですよ」

遠距離介護の場合、親の安否確認ができることで、心配の種はぐっと減らせます。困ったときにすぐに駆け付けてくれる地域の助け合いサービスや、民間の見守りサービスが役立ちます。

遠距離介護をストレスなく続けるコツ

ストレスのない遠距離介護の様子
PIXTA
遠距離介護は、仕事・育児と介護を両立している人が大多数です。時間的・経済的・身体的な制約はたくさんありますが、「工夫とチームの力で乗り越えられます!」と、浅井さんは力強く言います。

【遠距離介護のコツ1】介護割引を使って交通費負担を減らす

飛行機での移動には時間もお金もかかることを表すイメージ
PIXTA
遠距離介護の悩みで多く聞かれるのが、帰省にお金がかかること。飛行機での移動がメインの人は、航空会社の介護割引を活用して、負担を軽減しましょう(要事前登録)。各社おおむね、正規運賃の4割引ほどになるようです。

浅井さん「LCC(格安航空会社)や航空券の割引プランを活用するのも一つの手ですね。会社によっては、介護割引より割安になるものもあります」

JRは年齢による割引制度や往復割引が活用できます。レンタカーを使う場合は、福祉優待割引が適用できるかどうか確認を。

【遠距離介護のコツ2】帰省した際にはたくさんの人に会う

親が地元のコミュニティで趣味を楽しむ様子
PIXTA
親がその地で築いてきたコミュニティーは、介護が始まってからも親自身を助けてくれます。万一の際には駆け付けてもらえるよう、ご近所の方々にはこまめに挨拶をして、信頼関係の構築を。ケアマネージャーをはじめ、ヘルパーやリハビリのトレーナーなどへも、なるべく機会をつくってコミュニケーションを取っておきましょう。

浅井さん「親自身は地域と接点があっても、子の方にまったく地縁がない、ということはよくあります。介護はチームで行うもの。そして、地域社会で支え合いながら行うものですから、チームのメンバーであるご近所さんや専門家への感謝と気遣いは忘れずに。困ったことが起きたときに快く応じてもらえるかどうかは、帰省の際の心遣い一つです」

【遠距離介護のコツ3】見守りサービスで安否確認

東京ガスの「くらし見守りサービス(自宅・家族の見守り)」イメージ
TOKYO GAS
遠距離介護の場合、親の安否確認ができることで、心配の種はぐっと減らせます。

東京ガスの「くらし見守りサービス(自宅・家族の見守り)」は、親の自宅にセンサーを設置することで、玄関ドアのカギしめや、窓の開け閉め、冷蔵庫の開け閉めなどを感知して、安否をご家族にお知らせします。
「ライフリズムナビ+HOME」使用イメージ
TOKYO GAS
その他、「ちゃんといつもの時間に起きているか」「暑い日や寒い日にエアコンを使っているか」など毎日健康的に過ごしているかどうかを見守りたい場合は、睡眠状態や就床・離床状態、部屋の温度・湿度等をチェックできる「ライフリズムナビ+HOME」というサービスもあります。
「ライフリズムナビ+HOME」使用イメージ
TOKYO GAS
ベッドに設置されたマット型のセンサーで睡眠状態を計測するほか、室内の温湿度センサーで温度・湿度を計測。データは専用アプリを通じて家族のスマホでリアルタイムにチェックできます。

離れていても「元気でいてくれていること」が分かるだけで、安心できますね。

おわりに

遠距離介護のポイントは、コミュニケーションを密に取ること。とはいえ、頻繁に行き来がある家庭でなければ、急に親子で話をしようとしても、ぎくしゃくして難しいものですよね。そんなときに「便利なサービスを見つけたよ」と声をかけてみてください。親子で一緒に考えることが、現在の親の生活のことを理解するきっかけになるかもしれません。

プロフィール紹介

浅井郁子さん
Ikuko Asai
監修:浅井郁子さん(介護・福祉系ライター、ケアダイアリー主宰)

CM音楽制作会社でキャリアを重ね、98年インタビュー集書籍『離婚のススメ』(ベネッセコーポレーション発行)を発表後、フリー・ライターへ。雑誌、書籍、webサイト等に執筆する。08年実父の介護に専念するため離職。介護生活中に「介護をする人のための手帳」の企画を開始。11年父を看取る。翌12年『介護する人のための介護手帳 ケアダイアリー』を発表し、介護・福祉関連を中心にした執筆活動を再開。2020年新訂版『ケアダイアリー 介護する人のための手帳』を発売。2021年から、介護について語り合う場所「ケアダイアリーオンラインフォーラム」を開始。
ホームヘルパー2級課程修了。高齢者住まいアドバイザー 。東京都民生委員・児童委員として地域でも活躍する。

2021年08月04日

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