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当て布でのダーニング

イギリスから来た古くて新しい服のお直し、ダーニングを学ぶ~Vol.5 当て布でのダーニング

シミが付いたり穴があいたりした服を修繕し、新たに生き返らせる「ダーニング」という方法が近年注目されています。ダーニングとは「繕う」を意味する英語で、イギリスで古くから行われている衣類を修繕する針仕事のこと。前回に引き続き、テキスタイルデザイナーでダーニングブームの火付け役でもある野口光さんにダーニングの基本テクニックを教えていただきます。5回目の今回は当て布でのダーニングです。

最終更新日:2023.3.31

目 次

前回のおさらい

蜂の巣のような模様のハニカムダーニング

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蜂の巣のような模様のハニカムダーニング。糸次第で、服のデザインに馴染んだ仕上がりになります。

お気に入りの服にシミが付いたり、虫食い穴があいたなんて経験をしたことはありませんか? 気に入ってた服ほど着る頻度も高く、洗濯の回数も増えるので、徐々にほつれてきたり、擦り切れてきたりするもの。そんな、もう着れないと諦めてた服をよみがえらせる「ダーニング」という方法が近年注目されています。ダーニングとは「繕うこと」を意味する英語で、イギリスで古くから行われている衣類を修繕する針仕事のこと。

初回ではダーニングの魅力や基本の道具など、2回目ではバツダーニングとゴマシオダーニング、3回目ではバスケットダーニング、4回目ではハニカムダーニングをテキスタイルデザイナーの野口光さんに教えていただきました。

当て布でのダーニングをしてみよう!

当て布でのダーニング

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引っかけ穴ができてしまったワークパンツは、丸くカットした数種類の布を重ねてステッチしました。

最終回の今回紹介するのは、当て布でのダーニング。補修したい部分よりひと回り大きくカットした布を重ねてステッチでとめるという手軽な方法です。補修したい部分の状態に関わらず、応用が効く便利な手法です。

当て布でのダーニングをする服

当て布でのダーニングをする服

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今回ダーニングするのは、子ども服の中でも一番穴があきやすいズボンの膝部分。すぐ履けなくなるから、手軽に直せたら、もう少しだけでも使えるのに・・・という方も多いのではないでしょうか。

野口さん「子ども服のダーニングの相談で多いのが、ズボンの膝部分の穴あきです。新しいものを買い換えてもすぐにサイズアウトしてしまうので、あるものを簡単に直して着せたいという方が多いようです。当て布でのダーニングはそれにぴったりの手法。当て布に使う布も着れなくなった服を使ってOKなので、本当に手軽。ぜひ試してみて欲しいです」

当て布でのダーニングの仕方1

  • 当て布でのダーニングの仕方1

    uchicoto

  • 当て布でのダーニングの仕方1

    uchicoto

  • 当て布でのダーニングの仕方1

    uchicoto

    当て布として使う布を用意します。布は穴の大きさよりひと回り大きなサイズにカットします。今回はペットボトルのキャップを使って印を付け、カットしました。

    野口さん「使用する布は新たに用意する必要はありません。着古したTシャツなどを使用してOKです。新しい布を使うより、布馴染みがいいのでおすすめです」

    当て布でのダーニングの仕方2

    当て布でのダーニングの仕方2

    uchicoto

    カットした布の端には、ほつれ止め液を塗り、よく乾かしておきます。

    野口さん「布端がほつれやすい布、ほつれが気になる方はほつれ止め液を使ってください。ほつれが気にならなければ、裁ち切り布の風合いをそのまま活かした雰囲気もかわいいです」

    当て布でのダーニングの仕方3

    • 当て布でのダーニングの仕方3

      uchicoto

    • 当て布でのダーニングの仕方3

      uchicoto

      ダーニングする部分には、本など平らで固いものを当てます。服の裏側に本を入れ、穴が本の中心にくるように合わせます。

      当て布でのダーニングの仕方4

      • 当て布でのダーニングの仕方4

        uchicoto

      • 当て布でのダーニングの仕方4

        uchicoto

        穴の上にカットした当て布を重ね、まち針でとめます。

        当て布でのダーニングの仕方5

        当て布でのダーニングの仕方5

        uchicoto

        針にしつけ糸(ない場合は縫い糸でもOK)を通し、当て布がずれないようにしつけ掛けします。

        野口さん「しつけ掛けが面倒な場合は布用の仮止めのりを使っても構いません。当て布がずれなければOKなので、やりやすい方法でとめてください」

        当て布でのダーニングの仕方6

        • 当て布でのダーニングの仕方6

          uchicoto

        • 当て布でのダーニングの仕方6

          uchicoto

          ダーニングに使用する糸を針に通す。糸端は玉結びせず、当て布から3㎝程離れたところに針を刺し、当て布の端から0.2㎝くらいのところに針を出します(★)。糸端はダーニング後に始末するため、10㎝程残して休ませておきます。

          当て布でのダーニングの仕方7

          • 当て布でのダーニングの仕方7

            uchicoto

          • 当て布でのダーニングの仕方7

            uchicoto

            周りをゴマシオダーニングと同じステッチでとめていきます。★から約0.1㎝横に針を刺し、布を約0.5㎝すくって針を出します。同様にして当て布の周りを刺し進めていきます。

            野口さん「今回は手軽なゴマシオダーニングと同じステッチでとめましたが、他のステッチでとめてもOKです。自分が好きなステッチを使ったり、服のデザインと合わせたステッチでとめたり、自由に楽しんでみてください」

            当て布でのダーニングの仕方8

            • 当て布でのダーニングの仕方8

              uchicoto

            • 当て布でのダーニングの仕方8

              uchicoto

            • 当て布でのダーニングの仕方8

              uchicoto

              当て布の周りをぐるりと刺し終えました。本を外し、針を裏側に出します。刺し始めの糸端も裏側に引き抜きます。

              当て布でのダーニングの仕方9

              • 当て布でのダーニングの仕方9

                uchicoto

              • 当て布でのダーニングの仕方9

                uchicoto

                糸は裏側の針目に4目くらいくぐらせてとめ、残りはカットします。縫い始めの糸端も同様に始末します。表側に返し、当て布でのダーニングが1つできました。

                完成

                当て布でのダーニング完成

                uchicoto

                周りにもいくつか当て布でのダーニングをプラスしました。1つだけだと継ぎ当てのような印象が強くなりますが、いくつか当て布を散らすことで新しいデザインに生まれ変わりました。

                野口さん「当て布でのダーニングは、手軽で簡単。当て布として使う布は、なんでも大丈夫です。着古した服を使ってもいいですし、意外と使わずにとってある、服を買った時についてくる共生地を使うのもおすすめです」

                当て布でのダーニングの仕方は動画でこちらからもご覧いただけます。


                まとめ

                5回にわたって連載でお届けしたダーニングのレッスン。いかがでしたか? 日本にもかけはぎなど繕いの文化はありますが、イギリスの伝統手法から学ぶダーニングは、もっと身近で気軽なものだったのではないでしょうか? 具体的なテクニック、着る人や服のデザインに寄り添うダーニングの在り方を学び、野口さんがおっしゃっていた「ダーニングは、楽しく、気持ちよく、もう少し着るための針仕事」という言葉が、すんなりと心に沁み込むような気がしました。

                野口さんにこれから、ダーニングをどのように広めていきたいかを伺いました。

                野口さん「目標は、ダーニングのテクニックが小学校、中学校の家庭科の教科書に載ること。それくらい一般的に浸透していって欲しいと考えています。家庭科では、巾着袋の作り方やボタンつけは習いますが、実践的で役に立つという意味ではダーニングはかなり必要な技術だと思うんです。ものの寿命を自分で判断できるのって、大人にはかなり重要な生活力のひとつだと思うので、小学校の家庭科の授業で買う裁縫箱の中に、いつかダーニングマッシュルームが常備される日が来るように、地道にワークショップなどを続けていきたいです」

                確かに、ダーニングのようなテクニックを小さい頃から身につけておけば、大人になってから、ものとの向き合い方は違ったものになるかもしれません。

                靴下のダーニング

                uchicoto
                初めての人はまずは靴下から。穴あきやかかとの擦り切れなど、デザインのアクセントになります。

                最後に改めて、ダーニングを楽しむためのポイントを野口さんに聞きました。

                野口さん「ダーニングは手芸のように決まった終わりがあるわけではありません。自分の心地いいところでやめるもよし、納得のいくまでとことん刺すもよし、自分がいいと思ったところが完成、すべて自分で決めていいんです。針目がそろっていなくても気にしなくて大丈夫。むしろそろっていないくらいが素敵です。テレビを見ながら、家族や友達と話しながら、針を持つのは苦手という方でも、日常の中で気楽に楽しんでもらえると嬉しいです」

                おまけ

                野口さんとパッチョ

                uchicoto
                会った瞬間に意気投合した野口さんとパッチョ。パッチョは、野口さんの大切な思い出のマフラーを首に巻いてもらい満足気です。

                東京ガスのキャラクターのパッチョの大ファンだという野口さん。それを聞きつけたパッチョが撮影現場にお邪魔しました!

                • この記事取材先

                  野口光

                  野口光

                  テキスタイルデザイナー。ニットブランド「hikaru noguchi」主宰。武蔵野美術大学を卒業後、イギリスの大学でテキスタイルデザインを学ぶ。日本、イギリス、南アフリカをベースにインテリアをはじめ、ファッション界でニットデザインのコレクションの発表を続ける。ダーニング人気の火付け役として、教室やワークショップなどで大勢の人たちにダーニングを教えている。
                  https://hikarunoguchi.shop
                  Instagram @hikaru_noguchi_design

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                公開日:2023.3.31

                最終更新日:2023.3.31

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